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政策提言

2002/12/13

公認会計士法の改正における諸課題について(中間論点整理)
〜コーポレートガバナンス・会計監査・資本市場の強化〜

平成14年12月13日
金融調査会・企業会計に関する小委員会・法務部会・商法小委員会

今、わが国において、投資家保護の強化を通じて資本市場の機能を高め、
「日本型資本主義」の質の向上を図っていくことは喫緊の課題である。

エンロンやワールドコムなどの事件に端を発する会計不信に対して、米国では「企業会計改革法」(Sarbanes-Oxley Act)が成立し、その着実な具体化が図られているほか、英国、カナダ、フランス、EU、豪州、そして、中国などでも、会計や監査をはじめとする資本市場の機能の向上について、抜本的な取組が始まっている。

そうした中で、例えば、EUにおける2005年の国際会計基準(IAS)義務づけなど、会計基準の国際的な収れん(convergence) に向けた急速な動きが見られている。

わが国において、「米国も理想ではなかった」として現状のままに資本市場を放置するようなことがあれば、21世紀のわが国経済にとっての明日はない、との危機感を持つべきである。

このような観点から、当両小委員会としては、去る8月7日にとりまとめた「企業会計制度等の改革に関する検討項目」(別紙)に基づき、わが国において、投資家保護と資本市場の健全な発展が一層図られるよう、コーポレートガバンスの強化、証券市場の監督体制等の整備、監査法人・公認会計士の独立性と責任の強化、ディスクロージャーの強化をはじめとする諸課題について、集中的に討議を行った。

その結果、当両小委員会としては、わが国における資本市場のインフラとしてのディスクロージャーと監査についての一層の制度整備を図り、企業におけるコーポレートガバナンスの強化と監査人による厳正な監査を通じて会計情報の適正な開示を促し、資本市場における監視・監督の強化を通じて公正な競争を保証することが必要不可欠であるとの点で認識の一致を見た。

このような認識の下、現時点においては、当両小委員会として、特に下記に掲げる方策が重要であるとの結論に達した。
当両小委員会は、今後とも、本件に関して引き続き検討を深め、制度整備に一層努めていく方針である。政府においては、現在、次期通常国会に公認会計士法の改正法案を提出する方向で検討が行われており、今後の法案化や関連制度の具体化に当たっては、中小監査人の事業活動の実情などにも配慮しつつ、今後の新たな論点を含め、下記の諸点を適切に反映するよう要請する。


  • コーポレートガバナンス強化のため、証券取引法、商法等の法制度を見直すことにより、財務諸表の正確性に関する宣言等を通じた代表取締役・代表執行役などの責任の明確化並びに強化を図る。併せて、内部告発者の保護法制を導入するとともに、MD&A(Management's Discussion and Analysis, 経営者による討議・分析) や内部統制等コーポレートガバナンスに係る情報の適切な開示等のディスクロージャーの充実・強化を図ること。

  • 投資教育、ディスクロージャーや市場取引のルールの設定、ルール遵守の審査・監視・摘発等を一体的かつ総合的に担う十分な体制の整備を行うため、機能面における対応として、例えば「日本版SEC」を創設すること。
    併せて、発行体企業に対しても実効的な監督体制を構築すること。

  • 投資家保護など公認会計士の使命と責任を法律上明記すること。

  • 投資家保護を通じて資本市場の土台を担う監査の使命と目的を明確に法律上位置づけるとともに、監査法人と公認会計士について、行政や企業からの独立性の強化、透明性の向上、責任の強化を図ること。

  • 非監査証明業務の監査証明業務との同時提供は、監査業務の独立性の観点から原則禁止すること。

  • 関与社員による継続的監査については、5年程度ごとの交代を法定すること。また、監査法人自身の継続的監査の制限についても検討すべき。仮に同一監査法人が監査人を交代させながら継続して監査するとしても、前関与社員の被監査企業への接触を原則禁止するなど、同一監査法人内での関与社員の独立性のルールを設定すること。

  • 関与社員の被監査企業幹部への就任については、クーリングオフ期間を法定すること。

  • 適切な監査を担保し、その品質を向上させるために、これまで日本公認会計士協会が行ってきた「品質管理レビュー」等の「自主規制」のあり方を見直すとともに、公認会計士審査会の機能を抜本的に改組することによって、公的な監視のもとで監査を厳格にチェックする体制を構築すること。

  • 有限責任組合(リミテッド・パートナーシップ)制度の早期導入を図るなど、組織形態として構成員の有限責任を制度化するよう監査法人制度を見直すこと。
    併せて、監査法人において個々の監査案件に従事している公認会計士の責任の所在の一層の明確化と、従事していない社員の無限責任の制度的限定を図ること。

  • 会計基準や監査に関する諸制度に関して、国際会計基準の選択適用容認の可能性を含め、国際的なハーモナイズを早急かつ積極的に推進する体制を構築すること。

  • 実務経験の重視、国際化・多様化に対応した人材の確保の観点から、公認会計士試験制度を見直し、資格者の規模の増大とともに、定期的研修の法定義務化等を通じ公認会計士の資質の向上を図ること。