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2018/12/14(金) NO.817号 【最新の独り言】

結愛ちゃんの気持ちに応えよ

 本年3月の「結愛ちゃん事件」は、国民の心を揺さぶった。これに対し政府は7月20日に関係閣僚会議において「緊急総合対策」を取りまとめ、10月には「死亡事例検証報告」を公表、その中の「国への提言」において、同様の事件の再発阻止に向け、可及的速やかなる体制整備を強く促されている。

 しかし、同様な児童虐待死事件は、全国で後を絶たない。

 厚生労働省は漸く本年8月より、社会保障審議会の社会的養育専門委員会「市町村・都道府県における子ども家庭相談支援体制の強化等に向けたワーキンググループ」を遅ればせながら立ち上げ、児童相談所改革や市町村等における子ども家庭支援の体制の強化方法、人材育成策などについて議論を始めた。
 
 しかし、実は、私は平成28年の児童福祉法改正直後に児童相談所改革などを議論するワーキンググループを既に立ち上げていた。しかし、私の昨年8月の大臣退任後、そのWGは一時保護の見直しを2回程度行った以外は休眠状態に置かれ、挙句の果てに今年の3月末を持って廃止されてしまった。以来、厚労省においては、28年改正法に検討が明定されていた児童相談所改革等に関して手つかず状態のままだったのだ。要は、結愛ちゃんこそがその事態を動かし、厚労省の重たい腰を上げさせたのだ。

 ここは、政治の責任において、繰り返される児童虐待死を断固阻止する決意を持って、従来路線の延長ではない、抜本的な対応策を政府が取るよう強く求める。仮に政府にその意思がないのであるならば、私達は、立法府の責任において、党派を超えた議員立法を持ってでも臨む覚悟を固めている。

 可及的速やかなる抜本的体制整備が必要であり、その中身は多岐にわたるが、中でも決して欠いてはならない柱は、以下の3点だ。

 まず第一には、「法改正による中核市、特別区への児童相談所の必置化」だ。

 平成28年改正児福法は、5年以内に全ての中核市・特別区に児童相談所を設置できるよう、政府は支援する、と規定している。これを受け、東京都の23ある特別区のうち22の区は児相設置意思を表明済みだ。
 
 しかし、54ある中核市にあっては、設置済みの2市を除き、新規児相設置方針を明確にしたのは、明石市と奈良市の2市のみ。他の2市が「設置の方向で検討中」とするが、残り48市は検討中ないしは検討すらしていない状態。中には、我が松山市のように「愛媛県と良好な連携体制が構築されており、深刻な事態に至る前に迅速かつ適切に対応できているため、現時点で設置する必要はない」と、事の深刻さを全く認識しないまま居直る有様だ。

 児童虐待の実態がここまで深刻化していることを踏まえれば、この際、法律によって中核市・特別区への児童相談所を必置化し、子どもの命を救う「網の目」をより細かくすることは、国としての現実的な責任ある決断だと思う。平成28年改正時も、私は必置化を唱えたが、事務方が強く抵抗した経緯がある。
 
 しかし、既に法律によって都道府県や政令市には児童相談所を必置にしているし、中核市には保健所を必置にしている。それと同様に、児童相談所を法律によって中核市に必置とすることは、国権の最高機関たる国会が決断し、立法すれば、自治の精神に反することになるはずもない。

 平成28年改正の附則では、5年間のうちに全ての中核市への児相設置を展望した書き振りになっており、その5年が経っていない、と言うことを理由に必置化に消極的になる霞が関的な考え方も、子ども虐待の実態における予想以上の子どもを取り巻く環境の深刻度の深まり、悪化ペースの加速等への認識の欠如を示すだけだ。また、7月の「緊急総合対策」において政府が明らかにした、児童福祉司2000人程度増員に当たり、既存の児童相談所における児童福祉司の増員に止まらず、既存児相の職員の過剰労働を解消し、より質の高い児童福祉を、よりきめ細かく、より広範に実現するためにも、中核市に児相を必置化することが、行政執行能力的にも現実的な選択肢だと思う。こうした考えを踏まえても、児相設置を中核市に強制することは自治に反する、と主張するならば、他のいかなる方法によれば、子どもの命をより確実に守る事ができる、との有効な代替案を明示することが必要であり、それなしのまま反対だけを唱えるのは極めて無責任だ。

 第二には、「法改正による常駐弁護士・医師の児童相談所への必置化」だ。

 今回の結愛ちゃん事件を受けた、国、香川県、東京都による3つの検証結果に共通する、救う事の出来た命を失った原因は、香川、東京の所管児童相談所における判断ミス。そして、その原因が、児童相談所の専門性の欠如にあったことは明らかだ。

 姿の見えない本人の安全確認をルール通りに行う、とのデューステップを取らなかったことの原因は、真の意味で子どもの権利を守るために必要な行動をとらず、子どもの命を守る事への配慮よりも、将来的に支援をする可能性のある親への配慮が優先されてしまった、との判断ミスだ。

 法律家が一緒にソーシャルワークを行い、事態の深刻度を児童相談所として的確に判断をしていれば、今回のような親が子どもへの面会を拒否するとの事態にあっても、児童相談所に付与されている現行の法的権限を駆使して、子どもの安否確認を行う事こそが児相としての最優先の行動、との的確な判断していたはずだ。

 また、主治医からの親子分離を行うべき、との繰り返された強いアドバイスにも拘らず子どもを家庭に無防備のまま戻し、このような最悪の結果をもたらした原因の一つには、児相における医学に関する専門性の欠如があった。虐待医学などの専門的な医学的見地からは明らかだったリスクを児相側がアセスできず、漫然と子供を家庭に帰し、最悪の事態を招いたのは、児童虐待医学、児童精神医学等の専門的知見を深く理解し、そうした科学的知見に基づく判断をしなかったのが原因だ。

 従って、今後は、法律改正によって、原則全ての児童相談所に、日常的にソーシャルワークを児童福祉司などとともに協働して実施可能な「常駐弁護士」、「常駐医師」を、雇用形態に拘わらず必置化すべきだ。そして、児相設置自治体に、各々少なくとも1人は「常勤」とすべきだ。当然、予算上、報酬面で必要な手立てを取らなければならない。

 そして、第三番目には、「『子ども家庭福祉士(仮称)』の国家資格化」だ。

 「結愛ちゃん事件」から明らかになったことは、子どもの命を守り切るためには、単に児童相談所に止まらず、市区町村、児童福祉施設、そして広くは社会全体が総がかりで専門性を持って子どもの命を守らなければならない事だ。

 これまでの「児童福祉司」は、地方自治体による「任用資格」だったため、人手不足を補うためもあって、任用要件上、必ずしも専門性のない人材も児童福祉司となる事が可能である、との無責任な対応を国としても取ってきてしまった。

 とりわけ、今回の事件から明らかなように、真の問題解決に向けては、単に虐待を受けている子どもに関して的確な判断をするための専門性に止まらず、虐待をする親の抱える問題点の正確な把握とそれへの適切な対応策に関する専門性も必要だ。そのため、虐待を含む児童福祉の分野であっては、相当高度なソーシャルワーク上の専門性が必須となってきている事は明らかだ。

 加えて、今回の事件を見ても、判断ミスや不十分な対応をしているのは、単に児童相談所だけでなく、市町村も同様であり、仮に無事に家庭から引き離し、一時的にせよ施設等に入所するならば、施設においてもそうした子どもと接するスタッフも、高度な専門性を持っていなければ、被虐待児やその家庭への適切な対処は不可能なのだ。

 そうなれば、都道府県庁や政令市の市役所等に、児童福祉と関係のない分野での就業を期待して就職した職員を、児童相談所にルーティン人事によって配転させ、研修を強制しても、極めて不効率のはずだ。また、専門資格がない人材であれば、せっかく児童福祉問題に明るくなりかけても、早晩他の部署に再び配転され、折角培ってきた何年間かの経験と知識は、活かされなくなってしまう筋合いだ。

 私は、丁度「精神保健福祉士」が、「社会福祉士」の活動分野の中でも精神保健福祉に特化した資格者として存在しているように、児童福祉関連のソーシャルワークに特化した「子ども家庭福祉士」のような国家資格を早急に創設すべき、と強く思う。

 その事により、元々児童福祉や児童虐待問題に強い関心があり、自らの意思で勉強し、国家資格を取得する、という高いモラールを持った人材を広く日本中から募り、児童相談所でも、市区町村の子ども担当部署でも、児童福祉施設などにおいても活躍して頂く事が最も効率的に、高度な専門性を持った、士気の高い人材を児童虐待現場に投入し、子どもの命とその家庭を救う事が可能になると確信する。

 また、このような児童福祉に特化した資格を持った専門人材となれば、人事権者も児童福祉以外の部署に安易には配転しにくくなるはずであり、結果として、専門性の蓄積が進み、子ども家庭福祉の向上に大きく貢献可能となる。
 
 いずれにしても、来年の通常国会において、しっかりとした法改正を行って子どもの命と温かい家庭を守る万全の体制を構築する事こそ、尊い命を失った結愛ちゃんへの私たちの「答え」のはずだ。

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