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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2003/05/11(日) NO.323号 

経済危機克服には「正しい政治決断」しかありえない

 テレビの政治番組で、経済政策が取り上げられていた。いずれも竹中大臣が出演されていた。相変わらず説明は巧みだが、その言葉はいささか空虚にしか聞こえない。10月に「竹中プラン」をぶち上げたまでは良かった。が、その後はペースダウンと妥協、そしてメガバンクの資本調達や大型債権放棄など重要問題での関与回避が甚だしい。もっと頑張って欲しかった。

 銀行貸出による間接金融が日本経済のエンジンであるだけに、日本経済を救うには、実は金融庁の政策変更が不可欠だった。つまり、金融担当大臣こそが日本経済の危機を救えた、と言っても過言ではないし、やり方次第で日本の資本主義経済の質の向上や、企業や経済の競争力強化に決定的影響を与え得た。しかし実態は、株価下落に代表されるデフレ現象に振り回され、スピードこそ体力喪失回避に必要なのに、逆に政策対応のスローダウンの連続だ。

 日本経済再生に必要な処方箋は、98年の金融国会で石原伸晃代議士や枝野幸男代議士とともに唱えた政策が5年近く経った今も全くそのまま有効で、その哲学は「竹中プラン」にも引き継がれている。実行あるのみではなかったのか?昨年秋に盛り上がった、国内外からの日本経済再生への期待に応えねばならなかったはずだ。今や「株価対策」などという表層的、対症療法的、問題先送り的な政策メニューが、「行き止まりの引込み線」に入り込んだ格好の与党だけではなく、同じような内容の政策が経済財政諮問会議や、こともあろうに関係閣僚会議でまで議論、決定されるという。将来の国民負担、などという重要問題はどこかに飛んでしまっている。わが国は政策的にいわば「マインドコントロール状態」に入っているのだろうか?

 加えてここに来て、生保の予定利率引下げ問題が現実味を持って取り上げられている。生保の逆ザヤ問題が深刻であることはその通りだ。が、現段階の金融庁の案を見る限り、これではなんらの根本解決にはならないし、そもそも機能するかも疑わしい。最も大事なことは、日本の生保業界がどのような産業に発展していくのか、という将来ビジョンだ。しかし現在の案は、「ともあれ生保を破綻させるよりましだ」との発想で哲学が欠けている上、国民の基本的な財産権に不利益変更を、十分な法的手当てなしに行おうとするものだ。少なくとも、破たん前に予定利率を引き下げられる法制度を持った国は世界になく、初めての事をやろうとしている訳だからこそ、一般保険契約者保護のため、一層慎重な理論武装が不可欠のはずだ。

 その意味おいて、原案では免許を付与している行政の無責任さは決定的だ。保険業法第一条には、保険契約者保護こそ最大の目的であることが規定されており、その責任は、免許付与者にあることは明らか。もし今の案を政治がそのまま受け入れるなら、立法府も無責任、ということになる。

 生保会社経営者、免許付与者、基金や劣後ローンを拠出している銀行などに比べ、圧倒的に「情報弱者」である一般の保険契約者の権利に不利益変更を強いるなら、クリアしなければならない問題が沢山ある。先週の8日(木)に初めて金融庁案が自民党の金融調査会・財務金融部会・保険小委員会に出された。私からは、クリアしなければならない点をまとめてペーパーを配布したので、ご参考までに以下、ご紹介しておく。


 〜予定利率の引き下げについて〜

平成15年5月8日
衆議院議員 塩崎恭久

1.免許業種における顧客の権利の不利益変更の強制は、法の精神に従って、まず行政命令で行うのが筋であり、私的自治による不利益変更は認められないのではないか。

2.破綻の蓋然性の条件や、当局への事前届出は、保険業法第一条(保険契約者の保護)と矛盾するのではないか。

3.総代会は、契約者が直接参加できる意思決定プロセスとはいえず、私的自治による手続きとはいえないのではないか。

4.1割の反対で否決するのは、破綻の場合と同様であり、おかしいのではないか。

5.株主総会の場合、反対株主は株式買取請求権により保護されているが、異議申立者には、解約という選択肢しか与えられないとすれば、原契約の債務不履行(デフォルト)に該当するのではないか。このとき、異議申立者に対して原契約を継続したときの得べかりし利益を賠償する必要があるのではないか。

6.契約者が不利益変更の是非を判断する基礎となる、財務のディスクロージャー(例えば、処分可能資産などの情報)が十分に行われないのではないか。

7.私的自治の仕組みである以上、責任準備金のカットも自由に行えるのではないか。同様に、予定利率の下限を設ける必要はないのではないか。

8.「業者負担」を強要されるセーフティネットの枠組みは、銀行の預金保険とは本質的に異なる、典型的な護送船団方式であり、今後は、さらなる「業者負担」を避けるべきではないか。

以上

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