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2004/10/14(木) NO.368号 

公認会計士・監査審査会設置の原点に戻れ

 先週6日、私が委員長を務める自民党企業会計小委員会を開催し、公認会計士・監査審査会の国会同意人事について議論、小委員会の総意を受けて金融庁が対応することになっていたが、結局、小委員会での意見がそのまま実現することは困難な情勢となった旨、自民党国会対策委員会筋から連絡が入った。

 「公認会計士・監査審査会」は、従来からの「公認会計士審査会」に、日本公認会計士協会が個別企業に対する会計監査を自発的に点検する「品質管理レビュー」を同協会から独立した立場にある政府の機関として「モニタリング(監視)」する権限を追加したものである。米国では、エンロン、ワールドコム事件の教訓から、新たにPCAOBという公的組織を作り、民間の自主的相互監視(ピア・レビュー)の頭越しに、個別監査を直接公的にチェックする厳しい仕組みを作ることにより、会計不正の再発防止を図った。日本でも、昨年の公認会計士法の全面改正の際、民間の自主規制は尊重した上で、公的なチェック制度を導入したのである。

 「身内」による監視では、監査の公正性と信頼性の確保には限界がある。だから独立した立場の政府の機関である公認会計士・監査審査会が「モニタリング」を担うのである。ところが、今回の同意人事提案では、日本公認会計士協会の会長が審査会の委員に「当て職」的に指名される、ということが判明した。私の小委員会では、これでは、いわば被告が裁判官席に座るようなもので、利益相反ではないか、との意見が大勢となり、少なくとも協会の現役執行部ははずすべき、との意向を金融庁に示した。

 その小委員会の席上、「会長が委員になることは、内容を説明するのに都合が良い、『日本的な独立性』です」という、およそ世界には通用しない弁解が、日本公認会計士協会側から示された。これでは、公認会計士法の全面改正を行った立法哲学の本質を忘れ去っていないか、と考えさせられる。監査のプロたる公認会計士の資格を持った人材がPCAOBにいるように、「独立した立場」の公認会計士がこの審査会に入るべきなのだ。わが国には12,000 人も公認会計士がいて、適材がいない訳がないし、仮に監査などの本業を一時期離れてでも従事するに値する、名誉ある責務のはずである。

 国会における与党の議論の結果、同意人事の候補は、協会の新会長のまま今臨時国会にかかることとなった。ただ、参議院自民党では、かなり長時間、真剣な議論をして下さったようで、条件付き賛成、となったと聞く。その条件とは、@人物本位で選考すること、A問題が発生する時には審査からはずす、といった審査会の内部ルールを明確に定めること、の二つのようだ。筋論だ。

 となれば、仮に、現職公認会計士協会の会長が委員となる場合、利益相反を排するには、明確な規則によって、「日本公認会計士協会による『品質管理レビュー』の『モニタリング』を行う際には、『品質管理レビューの責任者である協会会長』はモニタリングに関する作業から全てはずす」とするほかなかろう。「李下に冠を正さず」である。早速、同審査会の金子晃会長にはその意向を伝え、来週開催するであろう会計小委員会で同審査会での内部ルールに関する検討結果を報告頂くこととなった。

 考えてみれば、先の通常国会で同審査会の同意人事承認があり、前日本公認会計士協会会長の奥山氏が含まれていたにも拘わらず私も賛成している。この点、私も誹りを100%免れない。しかし、過ちを早期に見つけ、かつその過ちを速やかに是正できるかどうかは、まさに民主主義の熟度の問題だ。小委員会におけるこうした議論が形式的過ぎる、との意見もあるが、民主主義は正に「構え」、「かたち」、「姿勢」が大事である。それらを整えた上で、魂をどう入れていくかが、政治に問われている。

 折しも、西武鉄道による有価証券報告書の訂正問題が発覚した。まさに、ここでも公認会計士の監査や、日本公認会計士協会の品質管理レビューと審査会の「モニタリング」への信頼性の問題が問われている。さらに、コーポレートガバナンス、資本市場の質、監督の有効性など、逃げてはならない多くの問題をはらんでいる。来週の企業会計小委員会は、商法小委員会と合同で開催した方が良さそうだ。

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