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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2004/10/23(土) NO.371号 

日本の金融・経済改革、まだまだ道半ば

 8時半から、日米金融シンポジウムが始まる。午前中は「金融資本市場における日本の競争力」、「金融市場における米国の競争力」の二つのセッションが行われ、二人ずつのプリゼンテーションの後、小グループディスカッション形式で参加者が小グループに分かれて議論を深める。

 日本の金融はビッグバンなどを経て、それなりに改善されつつあるものの、改革、競争力ともに道半ば、というのが結論か。また、郵政改革の行方を心配する声が多かった。私からは、郵貯・簡保の350兆円の資産を、どのようにリスクマネーに変え、日本の将来の成長に貢献するようにする、との視点こそが郵政改革において最も重要だが、今行われている議論には、この視点こそが希薄だ思う、と指摘した。米国に関しては、「アメリカン・スタンダードがグローバル・スタンダード」とする傾向について、米国モデルがいつも正しいとは限らず、日本の金融機関は日本のやり方で経営を改革していくべき、との声も結構聞かれた。ただし、日本の金融機関が米国系金融機関に比べ収益力など、まだまだ競争力に欠けていることには変わりはない。

 財務次官補だったダム氏が、「監査の実態は、その国の評価そのもの」との指摘がある。私から、日本も今回の西武鉄道事件に象徴されるように、法的制度などの枠組みが一見整っていても、実態的には資本主義の基本が守られず、監査役監査、公認会計士監査のいずれも十分機能していないなど、経済の質そのものが問われていることに触れておいた。西武鉄道を特異な例、と片づけるのは簡単だが、ことの本質は、今回発覚したような明らかな法令違反を長年にわたって見過ごしてきた監査役監査、会計監査、東京証券取引所であり、さらには証券取引等監視委員会、金融庁なのだ。経営哲学、という点では、似たり寄ったりのことも底流にある可能性も否定できない。日本経済が名実ともに「健全な資本主義」になるには、まだまだ課題が沢山ある、との考えを私は示した。

 昼食スピーチは、このシンポジウムの最初から何度か参加してきた、若きティム・ガイトナーニューヨーク連銀総裁。その後、「日米金融市場にとって中国の意味すること」とのセッションがあり、「失敗を含め、日本の通った道を中国が通る可能性が高く、中国が不安定性の元とならないようにしないといけない」などの指摘があった。

 その後、夕刻まで、船に乗って「ポーツマス講和条約歴史ツアー」に出る。防寒着を忘れ、寒かった!かつてハーバードにいた時のことを思い出せば当然のことながら、東京の暑さに頭が十分回らなかった。地元弁護士さんが好意で同乗し、その歴史解説を聞きながら、ポーツマスの湾内をツアー。実際の交渉と講和条約の署名が行われた海軍の建物は湾の向かい側に見えるが、正確にはポーツマスではなくメイン州に位置しているそうだ。正確には、条約締結100周年は来年で、記念行事も予定されているという。日露戦争が日本にもたらした歴史的意義を、その後の韓国、満州などの行方なども含め、改めて振り返る良い機会にすべきではないだろうか。

 ディナースピーチは、東京支店もありボストンに本店がある、ステートストリート銀行のCEO、ローグ氏。丁度野球のワールド・シリーズ第一戦が同時刻にボストンで行われているとあって、まず全員にレッドソックスの帽子を配り、自らその帽子をかぶって登場の上、スピーチ。日本人に欠けている遊び心だ。講演途中で私は自室に戻り、南海放送の生ラジオ「レッツゴー・永田町」に出演。レッドソックスが劇的なツーランホームランでカーディナルズを何とか引き離し、第一戦を飾る。試合終了は深夜で、日本では考えられない時間。約90年ぶりの優勝に向け、ボストンっ子達は興奮しっぱなしのようだ。

 明日は早朝6時にホテルを出てボストン、ワシントン経由で、25日(月)の午後には成田に着く予定。夜、大事な会があるほか、26日午後には、法務委員会で南野大臣の所信的挨拶に対する質疑が行われる。中味を伴う本格的な論戦の開始になれば、と願う。火曜日の朝には自民党で、会計小委・商法小委合同会議で、懸案の「公認会計士・監査審査会」の国会同意人事問題、並びに「西武鉄道」問題を再び取り上げる。審査会の同意人事は、午後の本会議にかかるので、公認会計士協会会長に関する利益相反の可能性を排除するための審査会の内部ルール案を示してもらい、小委員会のメンバーの理解を得なければならない。

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