2021/01/22(金) NO.852号
「広く、薄く」から「選択と集中」へ
医療崩壊が現下の最大課題としてクロースアップされている。特に、入院先調整待ちで自宅待機の間に亡くなられる方が後を絶たず、国会の代表質問でも厳しく指摘されている。
原因ははっきりしている。まずは、入院先の病床が、「選択と集中」がないがゆえに、病床は十分といえる状況下での「コロナ病床不足」に陥っているのだ。従って、保健所や救急隊、医療関係者による入院調整はパンク状態。
一昨日のテレビ番組で、改めて厚労大臣、知事に大学病院やその他公的病院に対し重症コロナ患者等の受け入れを要請・指示する権限を感染症法上明確に定め、コロナ患者受け入れにおける「選択と集中」を図ることしか、問題解決の突破口がないことを改めて訴えた。病棟の切り分けが可能な大規模病院が重症患者を受け入れ、結果として公的病院等大規模病院に「重症患者」を集中させ、「中等症患者」は公的病院、民間病院双方で受け持ち、「軽症者」、「無症状患者」は民間病院と宿泊施設が中心となるべきだ、と申し上げた。その振り分けを行う法的根拠、政策ツールとなる法律が不可欠なのだ。
その大前提は、病院全体として、その「対応能力に応じた役割と責任」を担い、「選択と集中」を行うことが原則だ。すなわち、重症状態を脱して軽快しつつある患者は、公的病院等からより軽装備の病院に、できるだけ早期に移動して頂き、限られた医療資源の有効活用を図らないと、全体が回らない。また、厚労省の退院基準を満たすようになった患者は、帰宅し家族と過ごして頂くことやコロナフリーの民間病院に移ってのリハビリなどに移行して頂くのが望ましい。
宿泊療養や自宅療養で入院先調整を待機している多くの方、また、病状軽快者、退院基準を満たす者などで、入院が必要な方を臨時に受け入れる仮設の専用病院・病床を新たに緊急に整備することや国立病院等での受入れを進めることも必要だ。
同時に、コロナ以外の一般医療の停滞も許されない。コロナ医療・病院とコロナフリー医療・病院を明確に分け、「選択と集中」の中で、医療人材は、有事の間は病院間を、時に患者とともに弾力的に移動することも受け入れて頂き、各医療圏のコロナ期前の医療の質と量の全体は守り切らねばならない。
そうやって、人材を含めた医療対応能力に応じた感染症危機における「有事の役割分担」と「有事の連携」に迅速、円滑に移行できることが、最も適切な感染症有事の地域医療体制だと思う。
ところが、1月19日付で行われた全国医学部長病院長会議による記者会見で配布された資料を見て、驚いた。【「新型コロナウィルス感染症患者の受け入れ状況調査結果」と「新型コロナウィルス感染症患者に係る後方施設状況調査結果」】
この組織は、全国の82大学の医学部長と附属病院長などで構成されている。それらの附属病院への1月6日午前0時現在の緊急調査結果だが、「中等症・軽症病床」における「無症状患者」の占める比率が、全国(1216床)の何と27%にも上り、緊急事態宣言下の4都県の21病院(494床)の33%にも上ることに、驚きを禁じ得なかった。
このことを私から紹介した一昨日のTV番組では、コロナ感染から治った方がそのまま病院におられるのではないか、ということになった。しかし、診療報酬も優遇される高度医療提供病院である「特定機能病院」は、全国で87病院しかなく、その中の82病院を占める「大学病院」が、そもそも「中等症・軽症用」コロナ病床を全国で1216床、4都県で494床も用意すること自体、限られた資源配分として非効率ではないかと強く思った。さらに、何とその2〜3割は、症状のない患者によって占められている、という。医療資源の余りの非効率な利用が行われていることが明らかになった。
また、82病院のうち、回答のあった67病院中記載のあった65病院での集計結果によれば、上記のような、軽快、ないし厚労省の退院基準に合致するところまで治った患者を他のもう少し緩い医療環境の病院へ移動をサポートするはずの「後方施設の整備状況」を見ると、「整えられている」と回答した先は、たった25%、16病院。その結果、軽快ないし退院できるのにそのまま高度医療機関である大学病院に残ってしまい、結果としてベッドが空かず、重症患者の受け入れが進まない、医療資源の有効活用ができないことになっていることが容易に見て取れる。こうした調整こそ、都道府県内全体を見渡せる知事、場合によっては厚労大臣の仕事であろう。しかし、今の知事・厚労大臣に、大学病院に要請・指示をする権限はなく、だからこそ法改正でその調整パワーを付与しなければならないのだ。
さらに、同調査から「重症患者」の受け入れ状況を大学病院平均で見てみると、全国では3.8人、4都県では5.8人と、ハーバード大学医学部の附属病院的存在のマサチューセッツ総合病院の昨年春時点での121人、とは比べ物にならないほど少ない。
因みに、東大病院のICUの数をみると、成人一般用だけで42床あり、その他の用途の病床も含めれば84床あると聞く。それに対し、1月第一週段階では、重症患者受け入れは、10人未満だったと聞く。
検査の徹底により、無症状患者を見つけ出して感染拡大を阻止しつつ、「対応能力に応じた役割と責任の分担」に基づく「選択と集中」、そして「連携」を医療体制において本格的に実現し、コロナに打ち勝つしかない。
原因ははっきりしている。まずは、入院先の病床が、「選択と集中」がないがゆえに、病床は十分といえる状況下での「コロナ病床不足」に陥っているのだ。従って、保健所や救急隊、医療関係者による入院調整はパンク状態。
一昨日のテレビ番組で、改めて厚労大臣、知事に大学病院やその他公的病院に対し重症コロナ患者等の受け入れを要請・指示する権限を感染症法上明確に定め、コロナ患者受け入れにおける「選択と集中」を図ることしか、問題解決の突破口がないことを改めて訴えた。病棟の切り分けが可能な大規模病院が重症患者を受け入れ、結果として公的病院等大規模病院に「重症患者」を集中させ、「中等症患者」は公的病院、民間病院双方で受け持ち、「軽症者」、「無症状患者」は民間病院と宿泊施設が中心となるべきだ、と申し上げた。その振り分けを行う法的根拠、政策ツールとなる法律が不可欠なのだ。
その大前提は、病院全体として、その「対応能力に応じた役割と責任」を担い、「選択と集中」を行うことが原則だ。すなわち、重症状態を脱して軽快しつつある患者は、公的病院等からより軽装備の病院に、できるだけ早期に移動して頂き、限られた医療資源の有効活用を図らないと、全体が回らない。また、厚労省の退院基準を満たすようになった患者は、帰宅し家族と過ごして頂くことやコロナフリーの民間病院に移ってのリハビリなどに移行して頂くのが望ましい。
宿泊療養や自宅療養で入院先調整を待機している多くの方、また、病状軽快者、退院基準を満たす者などで、入院が必要な方を臨時に受け入れる仮設の専用病院・病床を新たに緊急に整備することや国立病院等での受入れを進めることも必要だ。
同時に、コロナ以外の一般医療の停滞も許されない。コロナ医療・病院とコロナフリー医療・病院を明確に分け、「選択と集中」の中で、医療人材は、有事の間は病院間を、時に患者とともに弾力的に移動することも受け入れて頂き、各医療圏のコロナ期前の医療の質と量の全体は守り切らねばならない。
そうやって、人材を含めた医療対応能力に応じた感染症危機における「有事の役割分担」と「有事の連携」に迅速、円滑に移行できることが、最も適切な感染症有事の地域医療体制だと思う。
ところが、1月19日付で行われた全国医学部長病院長会議による記者会見で配布された資料を見て、驚いた。【「新型コロナウィルス感染症患者の受け入れ状況調査結果」と「新型コロナウィルス感染症患者に係る後方施設状況調査結果」】
この組織は、全国の82大学の医学部長と附属病院長などで構成されている。それらの附属病院への1月6日午前0時現在の緊急調査結果だが、「中等症・軽症病床」における「無症状患者」の占める比率が、全国(1216床)の何と27%にも上り、緊急事態宣言下の4都県の21病院(494床)の33%にも上ることに、驚きを禁じ得なかった。
このことを私から紹介した一昨日のTV番組では、コロナ感染から治った方がそのまま病院におられるのではないか、ということになった。しかし、診療報酬も優遇される高度医療提供病院である「特定機能病院」は、全国で87病院しかなく、その中の82病院を占める「大学病院」が、そもそも「中等症・軽症用」コロナ病床を全国で1216床、4都県で494床も用意すること自体、限られた資源配分として非効率ではないかと強く思った。さらに、何とその2〜3割は、症状のない患者によって占められている、という。医療資源の余りの非効率な利用が行われていることが明らかになった。
また、82病院のうち、回答のあった67病院中記載のあった65病院での集計結果によれば、上記のような、軽快、ないし厚労省の退院基準に合致するところまで治った患者を他のもう少し緩い医療環境の病院へ移動をサポートするはずの「後方施設の整備状況」を見ると、「整えられている」と回答した先は、たった25%、16病院。その結果、軽快ないし退院できるのにそのまま高度医療機関である大学病院に残ってしまい、結果としてベッドが空かず、重症患者の受け入れが進まない、医療資源の有効活用ができないことになっていることが容易に見て取れる。こうした調整こそ、都道府県内全体を見渡せる知事、場合によっては厚労大臣の仕事であろう。しかし、今の知事・厚労大臣に、大学病院に要請・指示をする権限はなく、だからこそ法改正でその調整パワーを付与しなければならないのだ。
さらに、同調査から「重症患者」の受け入れ状況を大学病院平均で見てみると、全国では3.8人、4都県では5.8人と、ハーバード大学医学部の附属病院的存在のマサチューセッツ総合病院の昨年春時点での121人、とは比べ物にならないほど少ない。
因みに、東大病院のICUの数をみると、成人一般用だけで42床あり、その他の用途の病床も含めれば84床あると聞く。それに対し、1月第一週段階では、重症患者受け入れは、10人未満だったと聞く。
検査の徹底により、無症状患者を見つけ出して感染拡大を阻止しつつ、「対応能力に応じた役割と責任の分担」に基づく「選択と集中」、そして「連携」を医療体制において本格的に実現し、コロナに打ち勝つしかない。
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