トップ > やすひさの独り言

やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

  • メールマガジン登録・解除
  • 全タイトル一覧
  • バックナンバー
2004/08/23(月) NO.361号 

「愛媛の日本一」に感服

 朝7時、松山の自宅を出発し、八幡浜の港に向かう。同港と大分・臼杵を結ぶルートのフェリー会社を最近引き受けた、私の長年の友人である、四国開発フェリー(オレンジフェリー)の瀬野専務と待ち合わせ、南予における「愛媛の日本一」企業3社を見学に行くためだ。何と、ゼミ合宿参加の学生さんと共に阿蘇・青年の家に向かうため一足先に自宅を出た妻に、期せずして港で追いつく。

 まずは西宇和郡保内町の和・洋菓子製造卸の「(株)あわしま堂」を訪問。木綱会長、木綱社長が出迎えて下さり、社長自ら工場内を見せて下さる。創業昭和2年、会社設立昭和43年の会社で、現在売り上げ約100億円強で、菓子製造卸としては売り上げ25億円程度の業界第2位を大きく引き離し、ダントツ日本一。

 約1200種類のお菓子を一日平均100万個製造。今の季節が最も少なく、一日約70万個で、多い時には柏餅だけでも一日300万個製造するという。それも、一日8時間操業のみで、なおかつ、市場としては、数年前に進出した京都工場のある近畿以西の西日本だけでだ。しかも、今日受けた注文品は翌日の夕方までには先方に届く体制だ。

 工場を含め、社員の皆さんはどこに行っても皆礼儀正しく、必ず挨拶をしてくれる。部署毎に「年間達成目標」を漫画付きで大きく掲げ、職場の整理整頓状況などを含め、他の部署の人による一人一人の評価も、廊下の壁に張り出されている。社長さんによれば、できるだけ全てをオープンにしているそうだ。支店・営業所を含め毎日来る200通の日報は、社員全員が見られるようにしてあり、どこからでも誰でもやりとりに参加できるそうだ。「気軽に皆で仕事の話をしよう!」というのがモットーで、そのためにも情報はできるだけオープンに、という訳だ。

 工場設備も絶えず機械メーカーと一緒になって改善・改良を重ねており、さらなる合理化・省力化を進める方針。

 次にお邪魔したのは、バイオ技術を駆使して魚肉・畜肉から天然原料を活かしたエキス調味料や機能性食品素材製造を行う「仙味エキス(株)」。会社設立は昭和51年、今は2代目で、私とほぼ同年代の筬島社長だ。二代に亘り、九州大学農学博士。取得済み特許も30数件もあるかなりの研究開発型企業で、国や大学との産・官・学共同研究を多く行っている。特にイワシから抽出した「ペプチド」には自信を持っておられ、血圧降下作用ゆえに厚生労働省から「特定保健用食品」の許可を得て、各種商品に活用している。また、製造機械は、殆どが機械メーカーと粘り強く開発したオリジナル設備。動かすスタッフも皆真剣に仕事に取り組み、また皆さん礼儀正しい。もちろん「HACCP」認定工場だ。中小企業庁も企業紹介TV番組で既に取り上げている。

 何と言っても商品の基本は、各種食品製造に使われる天然調味料。納品先との話し合いでオリジナルな味を出し、約300種類ほどあるそうだ。全国の皆さん、知らないうちに愛媛の仙味エキスの味付けの食品を食べておられるのですよ!

 今日の最後の訪問先は、ホテル・旅館に備え付けられている歯ブラシ・歯みがき分野で日本一の「(株)アイテック」の大洲市内4工場の一つ。仙味エキスの筬島社長と同い年の久保社長が案内してくれる。同社は、一日に松山市民より若干多い48万本もの歯ブラシを生産、他の製品売り上げと会わせ、年間売り上げ約22億円。国内シェアは約6割、高級品市場では約8割の高シェアだ。今日訪問した工場は、歯ブラシ製造と歯ブラシ・歯みがきセット袋詰めが中心だが、他に各種化粧品、アメニティグッズ、食品加工、印刷物などを製造販売しておられる。ここもまた、社員の皆さんが礼儀正しく、気持ちが良い。

 物作り哲学の3本柱は、リサイクル、内製主義、自動化。特に驚いたのは、徹底したリサイクルで、プラスティックは殆どが工場内でリサイクル使用されている。また、かつてはポリプロピレンを材料に歯みがきチューブを作っていたが、これがラミネートに材料転換をしたため、ポリプロピレンのチューブ製造ラインが空き、今はその設備を活用してお弁当などに入っている魚の形をしたお醤油入れを製造、今ではたった二人で年間一億円の売り上げがある、という。驚いた。また、派生して印刷技術も習得し、今朝お邪魔したあわしま堂のお菓子のラベルも印刷しているそうだ。

 機械設備は殆どが日本製ながら、歯ブラシの植え込みをする機械と、プラスティック成型用金型の一部はどうしてもドイツ製でないと品質的に満足できない、という。日本はまだまだ技術を磨かないといけないようだ。

 また、これだけ同社の市場シェアが高いと、日本中のホテル、旅館の経営姿勢が裏からよく分かる、という。お客様の事を本当に真剣に考えているかどうか、自らの企業ブランドを中長期的に考えているかどうか、すぐ分かるそうだ。表面的なコスト計算のみで安易に中国製、ベトナム製の歯ブラシに走る企業は、将来が心配だ、との指摘だった。

 今日は、たまたま南予にある「日本一企業」3社を訪問させてもらったが、愛媛にはまだまだ素晴らしい企業がある。今後勉強のためにそれぞれを訪問させてもらうつもりだ。しかし、今日の経験でよく分かった事は、「日本一」になるためには、時代の変化と競争に負けないよう、それぞれ大変な努力を日々、粘り強く行い、絶えずより良きものを、社員挙げて求め続けている、という事。「全員野球」での努力なくして結果なし、だ。