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2020/10/26(月) NO.842号 

世界で進むコロナ検証・改革に貢献すべき

今日から臨時国会。菅内閣が始まって初めての国会だ。

23日(金)の午後、武見敬三参議院議員が委員長を務める「国際保健戦略特別委員会」が開催され、(1)G7およびWHOにおいて、今次新型コロナウィルス感染症パンデミックにおけるWHO等国際機関並びに各国政府の対応ぶりの検証と今後に向けての改革提案に関する検討状況報告、および、(2)ASEANからの要請に基づき日本政府が行おうとしている「ASEAN感染症センター(仮称)」設置について、の二つの議題について議論が行われた。

新型コロナ感染症感染拡大に関し、既に当時私が本部長を務めていた自民党行革推進本部が6月末に、「大規模感染症流行時の国家ガバナンス改革 提言(注1)(「大規模感染症流行時の国家ガバナンス改革 提言」)(注2)(「資料」)を行ない、明治以来約120年間続いてきた「地方任せの感染防護」の体制から「有事には国が責任を持ち、コマンドシステムが明確な感染防護」の体制とし、「地域医療と公衆衛生との有機的一体化」、「国による感染症データの一元管理・開示」などを感染症法、特措法等の早期改正を通じて実現することを提案した。

岸田政調会長(当時)は私達からの提案を受け、政調としてこの自民党行革推進本部提案を受け止め、「感染症対策ガバナンス小委員会」を田村コロナ本部長の下で武見委員長によって立ち上げ、9月初に、行革本部提案を基本に肉付けした提言を取りまとめ、自民党政務調査会としての今次感染症危機の検証および改革提案とした(注3)(「新型コロナウイルス関連肺炎対策本部感染症対策ガバナンス小委員会」)。


こうした動きに対し、官邸や厚労省は「検証はコロナ収束後」としていたが、実は世界では、既に本年5月のWHO総会において、COVIT-19への国際対応から得られる教訓を評価する、検証のためのパネルを立ち上げることを決議、実際9月には、「パンデミックへの備えと対応に関する独立パネル(IPPR)」が、リベリア前大統領でノーベル平和賞受賞者のエレン・サーリーフ氏とニュージーランド元首相でUNDP前総裁のヘレン・クラーク氏を共同議長として11人のメンバーで発足している。大臣、国際機関トップ経験者クラスによって構成され、アジアからは中国とインドが参加しているが、残念ながら日本からは誰もいない。本年11月開催予定のWHO年次総会継続会で中間報告、来年5月の年次総会で最終報告が行われる予定だ。

一方、G7でも、8月頃まで、議長国米国のイニシアティブにより、G7保健大臣レベルで何度となく検証と改革提言への道が模索され、わが国からも厚労大臣が常時参加していたが、WHO離脱を決めている米国主導の動きに対し、ドイツ、フランスが反発し、議論が空中分解したようだ。

このように、国際的には、今次パンデミックに対する国際対応と各国それぞれの対応を着実に検証し、再発防止のための改革提言が行われようとしている。各国とも自国の対応ぶりの検証を行うのは、大前提のはずだ。

この間日本では、今月8日、「新型コロナ対応・民間臨時調査会」(小林喜光委員長)から、詳細な調査・検証報告書が発表され、世の関心を集めている。

わが国政府はこれまで、「検証はコロナ収束後」としてきたが、それでは世界の動きについていけないし、それを見越してか、今回のWHOの検証・改革提言の場(IPPR)に日本はメンバーを送り込めなかった。自民党内にも、「今は目の前の火事の火を消すことが先で、制度改正はその先の話だ」との意見もあるが、そもそも、火を消すはずのホースの水圧が低過ぎたり、ホースが穴だらけでは、火消しもできない。

今後、WHOの改革提言に日本の考えを入れるべきだが、そのためは、単に事務局に日本人を送り込む程度では不十分で、まずは政府として、我々が既に提示している検証と改革提言を参考にしてもらいながら、自らの検証と改革提言をまとめないと、世界貢献に迫力はない。

ASEANからの要請で日本政府が財政支援して設置予定の「ASEAN感染症センター(仮称)」にしても、日本自身が検証と反省を踏まえた感染症防護の組織改編を自ら行わない限り、説得力に欠く。私たち自民党提案では、情報収集と公開において主導権を握り、治療薬・治療法・ワクチン開発をリードすべきだった国立感染症研究所がその使命を果たし得なかったことを踏まえ、隣接する国際医療研究センターとの統合によって、世界で初めて臨床機能を備え、人材的にも世界クラスの人材が集まり易い独立行政法人化する新たな組織への改編を提案している。

菅新内閣が、世界の動きと連動し、世界の改革への歩みでも大きく貢献できるよう、あらゆる改革に邁進してもらいたい。

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