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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2009/06/24(水) NO.533号 

景気は引き続き厳しい(6月24日)

 先週17日、政府は月例経済報告を通じ、事実上の「景気底入れ宣言」に踏み切った、と世の中に受け取られているが、私はマクロ的にみても、また松山で歩いて得る経済の現場の感覚からも、その判断にはいささか違和感を覚える。

 国内は深い水面下での若干の数値上の改善傾向はあるものの、稼働率も低く、設備投資も未だ下向き傾向。雇用も、雇用調整助成金で何とか凌いでいるに過ぎず、不況が長引けば正規雇用に早晩手を付けざるを得ない失業予備軍を抱えた企業は、地元を歩いていても結構ある。先日も空港近くのある工場を訪ねると、平日だというのに工場には誰もおらず電灯も点っていない。一人残っていた社長さん曰く「雇用調整助成金を利用して、今日も社員は全員職業訓練に出かけている。受注が回復しない状態の中でいつまで持ちこたえられるか、体力勝負だ」と将来不安を隠さなかった。

 一方海外では、米国で若干明るい兆しも見られる。しかし、そもそも物作りを軽視し、国家的借金漬けで消費等を拡大してきたという米国経済の構造問題が今次大不況の根本原因であるからには、金融機関の健全性回復や新たなビジネスモデルへの転換を含め、そう簡単に調整から脱して力強さを取り戻すことはできようはずもない。また、中国が好調さを取り戻しつつあるといっても、一国の元気で世界全体を引っ張るには中国といえどもまだまだ力不足だ。

 従って、景気の先行きに楽観は全く許されないし、地方を含め、本当に元気な日本を回復するには、大型経済対策などが必要である。しかし、あくまでもそれらは、私が
中央公論5月号に緊急提言
( http://www.y-shiozaki.or.jp/contribution/other/090410.html )として書いたように単なるバラマキ的なものであってはならず、日本の新しい国家ビジョン、すなわち、これからの日本は何で食べていくべきなのか、についての未来像に基づいたものでなければならない。輸出依存体質から脱するための産業構造大転換を成し遂げるための「未来投資的」なものでなければならない。今次補正予算の効果は少しずつ出始めてはおり、今後に期待して良いと思うが、引き続き日本の将来を見据えたトータルプランに基づく適切な経済政策を打ち続けていくことが必要だ。