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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2009/10/22(木) NO.555号 

時代は前に進めよ(10月22日)

 一昨日の朝、台湾・台北の総統府にて我々6人の超党派議員が馬英九総統と約一時間、意見交換を行う。馬総統の操る英語は、私がこれまで会った非英語圏の指導者の中で最も巧みで流暢。主張も極めて確かで論理も明快だ。

 馬政権が「三不政策」(戦争しない、独立しない、統一しない)の下で、前政権下で続いた中国との間の緊張関係を、「三通政策」(通商、通航、通便)の確実な実行により改善し、両岸関係をウィン・ウィン関係にしようとする、その決意の固さと計画性、そして実行力を強く感じる。今や台湾・中国間の定期便は週270便と、台湾・日本間の週213便よりもはるかに多くなってしまった。もちろん、馬政権は対中関係を改善すると同時に、対日本、対米国との関係の一層の緊密化も同時に推進する事も忘れていない。時代が確実に前に進みつつあることを実感する懇談だった。

 それに引き替え日本では、同じ日の丁度同じ時間帯に、郵政民営化の基本的哲学を転換する、まさに時代の時計の針を戻すような「郵政改革の基本方針」との閣議決定が鳩山内閣によって行われていた。昨日の朝刊各紙は、ほぼ一致して郵政民営化路線の逆行を批判。「民営化の本旨を忘れるな」(朝日)、「民営化路線を逆行させるな」(読売)、「これは郵政改革の撤回ではないか」(日経)、「民営化路線の逆行は残念」(産経)、といった具合だ。4年前の郵政選挙で示された民営化への民意は一体どこに行ったのか。

 この閣議決定を受け、日本郵政の西川善文社長は辞任表明した。根本哲学が180度変わってしまってはついて行けない、ということだろう。 そこに持ってきて、今日、その西川社長の後任に、元大蔵事務次官の斉藤次郎氏が就任するという。驚いた。「脱官僚」、「官僚依存政治からの脱却」を標榜し、昨年には財務省出身者、というだけで日銀総裁に就任させなかった民主党の政権が取る行動だろうか。

 適材適所の人事、というが、私が官房長官の時に持ち上がった元大蔵事務次官の東証・自主規制機関のトップへの就任問題の時にも、霞が関がしきりに適材適所、能力本意人事、と強弁していたことを思い出す。そもそも斉藤氏はこれまで東京金融取引所社長へ「天下り」して来ており、さらに「わたり」により日本郵政社長に就任する。また、日本郵政は「委員会等設置会社」であり、役員の選任は「指名委員会」で行われるはずだが、この委員会の議決を経て斉藤氏が選任された、ということは確認できておらず、コンプラインアンス上も疑義が残る。

 斉藤氏の社長就任で、代表執行役員3人は全て「過去官僚」となった。これにより、半ば公的な「財政投融資機関」が新たにでき、日本の経済社会の活性化はさらに遅れるのだな、と直感、暗澹たる気持ちになった。時代は前に進めなければならない。