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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2010/06/15(火) NO.598号 

逃げの一手の菅内閣(6月15日)

 先週の金曜日の菅新総理による所信表明演説を受けて代表質問が昨日始まった。しかし、菅政権は逃げの一手だ。答弁ぶりも、官僚が書いたことがありありの原稿を、何を言っているのか分からないほど早口で読み上げた。説明責任を果たさず、国民に背を向けていることが明らかになった。

 本来、新しい総理が選ばれたときは、その所信表明を受けて、代表質問を衆参合わせて3日、そして予算委員会をテレビ入り2日を含めて、衆参3日ずつ、6日間、合計9日間の審議を通じ、新首相の考えを国民の前でただすのが、これまでの慣例だった。ところが、菅政権は、代表質問を衆参1日ずつ、予算委員会も衆参1日ずつ、合計たった4日しかやらないとの提案をしてきた。さらに、昨日の午前中、一方的にその約束も破り、予算委員会すら開かず、代表質問を昨日、今日のみとし、当初予定通り明日、国会を閉じる、という乱暴な挙に出てきた。ご祝儀相場で支持率が高いうちに参院選をやってしまおう、というのだ。まさに、「逃げるな、菅!」だ。

 所信の内容は、たださねばならないこと満載。たとえば成長戦略の部分だ。これまで委員会等で繰り返し議論し、批判されてきたにもかかわらず、12月末にいかにも「やっつけ」で出してきた「新成長戦略」の内容とほとんど変わっていない。60年代、70年代に公共事業が経済成長の原動力だった「第一の道」、また、過去10年間は行き過ぎた市場原理主義の「第二の道」で、これからは需要、雇用創出の「第三の道」だ、という。

しかし、そもそも60年代、70年代の成長の原動力は個人消費と民間設備投資だった。また先般公表された経済産業省の「産業構造ビジョン2010」では、このところの企業経営では、欧米と比べ、株主や市場の圧力などがむしろ少なく、低収益体質のまま産業再編が進んでこなかった事実を指摘している。つまり菅総理の考え方は実質的に否定されている。菅総理は、歴史的事実や現状についての多くの認識がそもそも間違っているのだ。

 さらに、財務大臣になって初めて財政再建の重要さを悟り、「増税による経済成長」などと意味不明なことをいい出していた。そして今回の所信では、突然財政健全化のための超党派による「財政健全化検討会議」を提案してきた。これまで自民党や自公政権側から、社会保障に関する与野党協議を繰り返し呼びかけ、谷垣総裁も、2月に「社会保障円卓会議」を提案したが、いずれも断ってきた経緯があるにもかかわらずである。ここに来て「増税に関してだけは与野党でやりましょう」という訳だ。

 自ら昨年の総選挙までのマニフェストで、子ども手当、農業戸別所得補償等々、恒久財源なきバラマキ政策を国民に約束していた。ところが、政権を取るやいなや、にっちもさっちもいかなくなって、今度はバラマキ政策を棚に上げて「増税だけは一緒にやりましょう」という。とんでもない。まずは、自らの財政基盤を脅かす効果なきバラマキ政策を断念、謝罪した上で、年金、医療など社会保障政策についての与野党協議を始めるべきで、そうして初めて財政再建の議論もできる、というものだ。スウェーデンでは、14年間もかけて現行の年金制度に関して与野党で練り上げた実績がある。

 いずれにしても、菅内閣は逃げまくりで、民主主義の基本を外している。昨日、議長役を交代した衛藤衆議院副議長が、「国権の最高機関」としての国会の憲法上の位置づけを引きながら、「副議長として、自戒と自責の念を持って、一言発言する」とした上で、「国会の誇りと国会議員としての矜恃を堅持して、国民の信頼と負託に応えうる、厳正な国会運営を強く要請致します」と、異例の警告を発した。正論だ。この国と国民をリードする立場の総理が、その考えを明確にせず、また国民に見える形で議論を重ね、国民に考えるチャンスを与えないことは、許されない。民主主義の重大な危機だ。

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