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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2011/01/21(金) NO.634号 

外交分野でも厚みを増す韓国(1月21日)

 今週の月曜日、火曜日は、韓国・ソウルで、日本の世界平和研究所など日米韓のシンクタンクが共催する「第5回北東アジア3か国対話」に参加した。参加者は、日米韓の政府関係者、議員、学者、シンクタンク関係者など40〜50名の政官民混成チーム。日本からの議員参加は、これまでは民主党の長島代議士などが何度か参加していたようだが、今回は私だけ。他に日本からは、谷内元外務次官をはじめ、現職外務、防衛省官僚、北岡伸一東大教授、新進気鋭の政治学者などだ。会議は全て英語。

 北朝鮮問題、中国問題、新たな核管理問題などについて1日半、非公開で議論。その後、安全保障に止まらず、日米韓3か国協力全般について公開討論を行い、私も米国防総省デレック・ミッチェル筆頭次官補代理、韓国議会のチュン・オクイム議員、北岡東大教授と共にパネリストとして参加する。ここ一年余り、韓国哨戒艦「チョンアン(天安)」撃沈事件、ヨンピョン島砲撃事件、北朝鮮の新たなウラン濃縮計画の公表など緊迫化が続いているだけに、真剣な討議が行われる。韓国の研究者の一人は、すぐに「日韓同盟」実現は無理でも「バーチャル同盟関係」の構築が大事だ、と主張していたことが印象的だった。まだまだ韓国国内の一般的対日感情は厳しく、竹島の写真の大きな屋外広告がソウル市内にあるのを見てもそれが理解できる。

 最近は、韓国経済の元気さから学べ、と韓国の経済・産業政策がよく引き合いに出されるが、外交分野でも元気だ。今回の会議は外交通商部の内部組織である「外交保安研究院」の会議室で行われたが、次々と意見表明する同研究院所属の研究者の厚みに驚く。皆英語が堪能でしっかりした考えを述べる。さらに驚いたのは、日本の外務省と関係の深い外交政策シンクタンクの「国際問題研究所」は、独立行政法人であるという理由で「仕分け」の対象となり、一時は存続すら危うくなり、今や小さくなって必死に生き残ろうとしているのに対し、韓国の「外交保安研究院」は、今ある2つの建物に加え、新たに外交官養成施設をもう一棟建てるという。韓国は外交政策や外交の担い手作りの知的活動でも元気だ。

 会議終了後、旧知のソウル国立大学パク・チョルヒ副教授とともに、ナム・キョンピル韓国議会外交通商統一委員長と意見交換。韓国国会議員サッカー連盟の会長も務められるナム氏、外交面でもかなり活躍の様子だ。

 翻って日本では昨日、菅総理が都内のホテルで外交にテーマを絞って演説を行った。国会が来週月曜日に開会するというのに、異例のタイミングだ。鳩山前首相も一昨年、国会開会寸前の国連総会でCO2の25%削減を、国民に対してではなく、国際約束した。民主党政権は、国会が国民の代表が集まるところであることを忘れていないか。おまけに演説内容は「日米同盟が日本外交の基軸」と、新味なし。鳩山政権の負の遺産である普天間問題についても、今や自公政権時に決めた辺野古への移設を早期に実現し、危険性の除去を行うしかあるまい。しかし、最早容易ではない。

 また「日米同盟の深化」と言うが、日本が自衛に対する一層重い責任を負う覚悟と行動がなければ、日米同盟の深化はあり得ず、言葉だけが踊ってしまう。集団的自衛権の行使に向けた憲法上の再整理や武器輸出三原則の見直しを行わねば、「深化」の実体は伴わず、むなしいお題目に過ぎない。まさに先日の日米韓の会議で私が強く主張したことだ。

 まずは、自国は自分でできるだけ守る。そして、同盟国との連携のための条件整備を一刻も早く行ない、真の「日米同盟の深化」を果たすことで、日本と東アジアの平和と安定を実現しなければならない。