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2011/12/02(金) NO.688号 

国民の安全のために最も有効な仕組みとは

 今週月曜の28日、福島第1原子力発電所で事故当初から陣頭指揮に当たってきた吉田昌郎所長が、病気療養のため入院したことが明らかにされた。3.11以後、原発事故のまさに中枢である現場で、陣頭指揮を執り、被害を抑えてきた彼の功績は大きい。一日も早い快復を心から祈りたい。

 しかし、それに関連して一昨日報道されたニュースが、とても強く印象に残った。事故発生直後、1号機は地震と津波で冷却機能を喪失し、原子炉を冷やす真水がなくなり、代わりに海水注入を始めた。だが首相官邸に派遣した東電関係者から「首相の判断がないと海水注入は実施できない雰囲気だ」との報告を受け、現場の吉田所長に中断が指示されたという。

 すると吉田所長は「これから首相の命令で注水停止を命令するが、言うことを聞くな」という内容の前置きをし、注水停止を命令。作業員も命令に従わずに海水注入を続けたという。結果、原子炉の溶融や破壊は最小限に抑えられた。

 しかし吉田所長は、言わば違法行為をしなければ国の、ひいては国民の安全を確保できなかった。何故原災法は、こと原子炉の冷却という個別事案に至ってまで、専門家や現場近くの判断ではなく、原子力工学の素人でもある政治家の判断を優先させているのだろうか。

 同じことが、政府が起案している「原子力安全庁」構想にも言える。もともと民主党は野党時代、原子力安全規制機関の行政委員会方式(いわゆる三条委員会方式)を提唱し、原子力の規制には独立性が必要だと主張してきた。しかし、「既存の行政委員会方式は、責任の所在や意思決定プロセスが不明確で、危機管理の際には政治家が決断をしなければならないため大臣庁とした」などと担当の細野大臣も主張し、原子力安全庁は環境省の一外局にされる予定だ。

 原子力のような国民の安全に直結する施策の規制は、極力政治から独立した機関が担わなければならない。それは事故調査もさることながら、原子力にとどまらない、会計基準やコンプライアンス等の分野に関しても、同様に言えるだろう。

 「政治主導だから民主的に選ばれた政治家が全てを決める」という永田町のある種のエゴが、特に緊急対応などにおいて、本当に国民の安全と保護のために有効かどうか。改めて考え直すべき時ではないか。

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