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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2012/05/03(木) NO.714号 

心の復興を目指して(5月3日)

 5月1日は南三陸町の岬の先端にあるホテルに泊まった。ホテルは満杯でボランティアや建設関係らしき宿泊者も結構いる。2階まで津波でやられたそうだが、眼下の海からは優に4階分くらいの高さがあり、そこここの高い木の枝には、まだ漁網のようなものが引っ掛かったままで津波の威力を物語っている。

 翌朝、大津波で壊滅した町の中心部をほぼ一年ぶりに回ってみる。新館5階だけ無事だった公立志津川病院、大津波が到来するまで遠藤未希さんが防災無線で町民に避難を呼びかけ続けた防災対策庁舎など、当時の惨状が刻まれた現場を訪れる。瓦礫は取り除かれたものの、復旧はまだまだ始まっておらず、時が止まったままのような町に、訪れる人が花を手向け、手を合わせる。
 
 1時間ほど南下し、JR石巻駅前にある国際NGO、JENの現地事務所を訪れる。昨年4月にもお世話になったNGOだ。丁度10人近くのスタッフがいて、活気を感じる。最近の活動を、プログラム・オフィサーの西村さん、広報・渉外リーダーの小暮さんからお聞きする。

 昨年4月に石巻を訪れたときは、JENは救援物資の配布や炊き出しなど、緊急支援を行っていたが、今の活動の重点は「コミュニティー再構築」に移っているそうだ。市内にある全131仮設住宅群のうち23群で「仮設避難者」支援活動しているほか、余り注目されてはいないが、仮設避難者と同様に苦労されている、在宅の津波被災者も対象に活動しているという。

 スタッフは昨年より随分増え、総勢約30名、うち常勤が20名、本部から来ているスタッフは3人だけで、あとは皆ローカルスタッフ。殆どが被災者で、シングルマザーが多いそうだ。住民自らが復興支援に乗り出している。

 市内仮設住宅の大半では、お年寄り等弱者を優先的に入居させ、その他の人は抽選にしたため、コミュニティも人間関係も分断され、バラバラに人が振り分けられたそうだ。結果、多くの仮設住民が「引きこもり状態」となり、人間関係を築けないで困っている、と言う。JENの場合、そうした人たちを対象に、スタッフが一軒一軒案内パンフを持って訪問し、集会所での企画イベントなどに誘うそうだ。人間関係構築のきっかけ作りだ。先日二人の孤独死が発見された事が全国報道されたが、それがJENが支援対象としていた仮設住宅郡内だったそうで、「大きなショックを受け、これまで以上に心のケアに力を入れている」とのこと。

 「政府や役所はハード面での復興には力を入れるが、さらに大事なのは『心の復興』。私達はその実現をゴールに活動している」と聞き、改めて被災者支援のあり方、復興支援における政府とNPO等民間支援者とのパートナーシップ、連携の重要性を教えられた。
 
 現地スタッフの案内で、昨年も訪ねた門脇中屋敷地区にあるJENの活動拠点を訪ねる。ここは工場地帯裏手、海岸から1キロくらい入った地域で、津波で一階天井くらいまで水没し、1000世帯、3000人の住民のうち、約250人が犠牲となった地区だ。今、250世帯ほどが家に戻り、生活復興に努めておられる。

 去年4月、JENが炊き出しや理髪サービスなどを行っていた場所は、地元企業の阿部社長さんが提供してくれていた会社の敷地と事務所だった。現在は社長さんの好意でそこが地域の交流拠点「なかやしきっさ」に進化して、JENのスタッフが一名常駐している。丁度明日予定されている地域ミニコンサートで振る舞うサラダ、お汁粉などの仕込みをしているところで、地域の女性陣の笑顔が明るかった。

 阿部さんご夫婦に導かれて裏手に回ると、昨年訪ねた時は瓦礫だらけだった裏の畑に、菜の花が一面に咲いている。「なのはなプロジェクト」という手作りの看板も見える。阿部社長さん曰く、「瓦礫を除けて、しっかり耕して、畝を作って菜の花を植えたところは、一面菜の花畑になって良かった。でも、耕さずに直まきした畑には、殆ど菜の花が育っていない。やはり、津波の塩でダメなんだろう。まだまだ手間がかかる」、とのこと。

 地域の人々の心をつなぎ、アクションを起こす阿部さんのような良いリーダーを得て、地域は一歩ずつながら、着実に新しく変わりつつある動きを感じる。そして、あくまでも地域主体の姿勢を守り、地域の人々と連携協働して、行政にできないきめ細かい支援を行っているNGOの姿勢に共感する。人気の少ない町にも、中には修復に向けて大工さんの順番待ち、と言う家もあり、震災以前の生活に徐々に戻りつつある、という事だが、物理的にも、心の上でも本格復興には、まだ時間がかかりそうだ。菜の花に希望を託して頑張っている人々の明日を祈るばかりだ。

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