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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2021/04/05(月) NO.861号 

科学とスピードで、変異株に勝つ。

まん延防止等重点措置が、今日から大阪府、兵庫県、宮城県の特定自治体で開始される。この間、首都圏を含めた全国における感染の再拡大の勢いは、止まる気配がない。報道を通じてみる限り、政府幹部、知事とも危機感を強めているが、危機突破に不可欠かつ十分な科学とスピードを有しているか、以下の通り、さらなる努力が必要ではないか。

今、誰しもが一様に指摘するリスクは、「変異株」だ。しかし、あたかも変異株は一種類しかないかの発言が目立つなど、随所で科学的でないことが気になる。昨日も、閣僚や知事の発言では、まるで「変異株の感染力の強さ、感染速度の速さ」だけが脅威であるかのようだった。これからワクチン接種を加速しようという時に、ワクチン効果の低下や再感染の可能性増大をもたらす種類の変異株への警戒も極めて少ない。

感染力の強い英国型や南ア型、ブラジル型に共通の、N501Yとの変異に加え、南ア型、ブラジル型にもあるE484Kという変異が、「中和抗体の機能低下」による再感染リスクや、ワクチンの予防効果の低下リスクをもたらす可能性が国際的に懸念されている。現在、厚労省は上記3種類の変異株感染確認数を公表しているが、「E484K単独変異株」に関して厚労省は、欄外の脚注で触れるだけだが、国内事例の累計数は、上記3種類の合計の678例よりはるかに多い1,161例(3月31日時点)もあることは注目に値する。

これに対し、米国CDCは、「E484K」変異株を既に全米では監視の対象("variant-of- interest")としてカテゴライズし、警戒を怠らない。

そもそも、N501Yは変異株PCR法で探し出すことが可能だが、E484Kを探し出す変異株PCR法は地衛研等では運用されていないようだ。しかも、変異株PCR(N501Y)で変異株陽性となった場合にのみゲノム解析し、そもそもE484K単独株はゲノム解析の対象になっていない。現在の日本における感染研中心の正規のサーベイランス・システムにおいてE484Kウィルスを発見するには、感染研と一部の地衛研に集中されているゲノム解析のプロトコルと体制を抜本的に見直さないと分からないのが実態だ。ところが、先の緊急事態宣言解除の際、ゲノム解析の数値目標値は設定されず、変異株PCRの実施率をPCR陽性者対比で40%とする、という目標だけが設定されるにとどまってしまった。加えて、E484Kを発見する変異株PCR法は、世界ではかねてより製品化されている上に、国産メーカーもここに来て発売を開始している。なぜ実用化され流通しているものをスピーディに導入しないのかについても理解に苦しむ。

一方、変異株の地域性は、臨床上、極めて有益な情報だが、感染研がそれを示そうとはしないのは理解に苦しむ。報道によれば、1〜2月中の沖縄県の陽性者88人のうち22人が変異株、そのうち21人が「E484K感染」だったり、都内の東京医科歯科大、昭和大の病院入院感染者でもそれなりの数のE484K変異株が見つかっており、現段階では地理的偏在の下、確実に新規感染者は増加傾向。この間、大阪など関西圏はN501Y系、首都圏はE484K、などの「地域性」が指摘されている。

ということはE484Kウィルスから国民を守るためには、再感染リスクやワクチン効果低下リスクを踏まえ、どの地域にこの変異株が多いかを知り、臨床的にもそれを踏まえて上記リスク管理を感染者ごとに行われなければならないが、まず第一に、現在の行政検査だけの扱いなら、患者に臨床医療で適切な管理はできない。大学等の病院ネットワークを通じたゲノム解析を私達の提言(注)通り格段に増やし、解析結果を臨床医療へ還元すべきだ。

加えて、ゲノム解析結果は国際的なウィルスゲノム解析結果公開サイトであるGISAID上では、厚労省・感染研の方針で、採取地を「JAPAN」としてしか登録していないため国内における分布がわからない。どの地域にどの変異株が流行しているのか正確に拡散状況を把握できるようにすれば、国内外の研究者が分析できるようになり、実態解明が加速する。

この問題については、ひと月ほど前に自民党内で変異株問題の提言策定過程で、厚労省側に都道府県別統計をGISAIDに登録・公開すべきと強く要請した。厚労省は検討する、と言いながら、4月に入っても相変わらずGISAID上では採取場所は「JAPAN」としか表示されず、分析に耐えられない。都道府県別の情報の開示によって個人の特定が懸念される例外的なケースではブロック単位で日本国内の地域の感染の実態や多寡を示せばよく、少なくとも3大都市圏などは、都道府県別にGISAIDに情報をアップロードすべきだ。

官民合同のゲノム解析チームによるゲノム解析体制の構築と公衆衛生によるサーベイランスと地域臨床医療との有機的一体化を早急に実現することで、世界に後れを取ることのない科学を実践し、2週間に一度変異を起こす、というコロナウィルスの変化のスピードに負けない迅速性をもって対応し、変異株問題でも先端を行く覚悟が必要だ。

(注)「新型コロナウィルスに係る変異株のモニタリング体制に関する緊急提言」

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