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現代ビジネス-2013年6月1日掲載記事

家事は所得を生み出すための「必要経費」である! 女性が生き生きと継続して働ける環境を整備するために「家事支援税制」の創設を!(現代ビジネス)

 日本は、世界に類を見ないスピードで少子・高齢化、人口減少社会を迎えている。人口減少が招くものは、労働力人口の減少という経済問題ばかりではない。次代を担う世代の数が相対的に減っていくということは、わが国の知力や安全保障を危うくし、医療・年金・介護・福祉等の社会保障の仕組みの持続性を低下させ、ひいては国力そのものを減衰させていく可能性をも意味しているということだ。

 そのための対策として考えられる施策として、まず最も重要なことは、自ら働こうとしないニートやフリーター等の現役の若者が進んで働くようにすることだろう。加えて重要なのは、高齢者、女性、そして外国人材の労働参加。中でも最も社会全体のパワーアップにつながるのが女性の着実な労働力化であり、社会で活躍する女性を増やすことこそが、現在日本の緊急課題だ。

 急速な少子高齢化が進展する中、将来にわたり安心して暮らせる活力ある社会を実現するためには、女性が活躍できる全員参加型社会を目指し、女性就業率・就業者数を上昇させる必要がある。女性が生き生きと継続して働ける環境を整備することは、社会のバランスある発展のためにも、そして何よりも女性の幸せのためにも、極めて重要なことであるはずだ。

 ところが、わが国の女性労働の現状をみると、「M字カーブ」問題の解消が遅々として進まない。これは、女性の年齢階層別の労働力率をグラフに表した際に、30代前半が極端に低くなり、M字のようなカーブになることを言う。日本では、出産を機に30歳前後で仕事を辞めてしまう女性が多いので30代の労働力率が低くなり、種々手を打ってきたはずなのに、「M」の字の窪みになったままなのだ。世界でもあまり見られない、日本独特な社会現象だ。

 子供には大人の存在が必要だ。特に新生児の段階では、親や家族がしっかり子育てに当たらねば、心身ともに健全な子供は育たない。そうなると、母親になった女性は1〜2年は育児に専念したい、と思うのが自然だろう。両親など他に頼れる家族がいない場合は、その期間が更に延びる可能性もある。そして2人目、3人目の出産となれば、以降のキャリアを諦めなければならなくなることが多い。日本の悲しい現実だ。

自民党日本経済再生本部の提言

 私が本部長代行としてこのほど取りまとめた自民党日本経済再生本部の「中間提言」では、「M字カーブ」問題を解消し、女性が生き生きと継続して働ける国とするために、様々な具体策を盛り込んだ。

 その最たるものが、「家事支援税制」の創設だ。自民党内の女性議員はもちろん、民間人向けの講演などで、女性のみならず男性も、大きくうなずきながら聞いて下さる方が結構多い。今回の中間提言の目玉の1つだ。

【「家事支援税制」等の支援策の検討】
先進国で広く採用されている、低所得の共稼ぎ世帯などにおけるベビーシッターやハウスキーパー、高齢者ケア支援者等、家事支援のための家庭内労働者に対する支出に係る税額控除等の制度を参考にしつつ、女性のみならず、広く働く世帯における就労を支援する制度整備を、既存の制度との整理を踏まえつつ、財源を含め検討する。


 具体的な記述は上記のとおりだ。これまで自民党の税制調査会などでは、家事を国が支援するということについて、真正面から検討したことはない。今回のこの記載により、党内の議論に火がつくことを願っている。

 そもそも、家事労働に対する財政支援は、諸外国では当たり前のように行われていることだ。

 アメリカでは、就労している1人親世帯や夫婦共働き世帯に対し、子供1人の場合は最大3,000ドル(約30万円)、子供2人以上の場合は最大6,000ドル(約60万円)まで、ベビーシッターやハウスキーパー、保育士、託児所等の費用の20%〜35%が税額控除される。イギリスでも、子供1人で最大175ポンド(約2.5万円)、子供2人以上で最大300ポンド(約4.5万円)まで、その7割が給付される。

 ドイツの場合も、子供1人につき最大4,000ユーロ(約52万円)まで、その3分の2が所得控除。フランスは、子がいない場合でも最大1万2,000ユーロ(約155万円)までその半額が税額控除され、子供1人で最大1万3,500ユーロ(約175万円)、子供2人以上で最大15,000ユーロ(約195万円)と上限が増えていく仕組みになっている。

 これらの国はいずれも少子高齢化の道を歩みつつあるが、その原因は、女性や働く世帯に対する支援が欠けている結果だと認識し、具体的な財政支援を行なっている。それに対して日本では、声高に問題を叫ぶものの具体的な支援となると急にトーンが下がってしまう、というのが現状だ。

家事は必要経費か?

 問題の底流には、「家事」の軽視、言わば蔑視にも近い低評価があるのではないか。外で働く労働に対し、家庭内労働はずっと重要度が低いとする男性社会の視点が、日本社会に根強く存在するため、政府が支援するに値しないもの、とされてきたのではないか。わが国の根深い夫婦観、男女観の反映だろう。

 このような男社会の家事観を、最も露骨に示しているのが、平成12年(2000年)7月の政府税制調査会の答申「わが国税制の現状と課題」だ。その第2章の一節「個人所得課税」の中の「所得の算出」という項を見ると、日本で「家事」が税制上どのように位置付けられているかがよく分かる。そこにはこう書かれている。

 所得の金額は収入金額そのものではなく、収入金額から、販売商品の売上原価や販売管理費など、収入を得るために要した経費を控除したものです。この際、個人は所得を稼得する主体であるとともに、稼得した所得により消費する(所得を処分する)主体でもあることに留意しなければなりません。

 すなわち、個人の支出の中には、所得を得るための「必要経費」と、所得の消費に当たる「家事費・家事関連費」があります。したがって「所得」を適正に捉えるためには、家事費・家事関連費を所得の金額の計算上、必要経費のように控除することは適当ではありません。


 その後段の「所得控除のあり方」にはこのような記載もある

 例えば、住宅ローン利子所得控除など特定の支出に係る控除を設けることは、個人所得課税の課税ベースである各個人が稼得した所得から、所得の処分として各個人の選択により行う家計支出を除くものであり、稼得した所得の大きさに応じて負担を求める個人所得課税の根幹を損ないかねません。

 要するに、(1)家事は所得を生み出すための必要経費ではなく、単に所得を消費する、国家にとっての消耗に過ぎない、(2)家事は「各個人の選択」により、華美になったり質素になったりするため、個人の趣味嗜好の範疇である、という2つの哲学を、ここで明らかにしているのだ。

女性を苦しめる政府による「家事蔑視」

 家事は個々人の勤労価値、所得を生み出すものではなく、単なる消耗、場合によっては浪費に過ぎないのであれば、「子供を病院に送るための遅刻」や、「両親の介護のための早退」などは、そのような社会から見ればもっての他の行為なのだろう。

 家事のために職場を蔑ろにする可能性の高い女性は労働市場から退場してほしい、若しくは従属的なポジションに留まってほしい、というのが冷淡な男性社会の見方だ。これを変革するには、個々人のワークライフバランスの根幹をなす「家事」をいかに評価するかがカギとなる。

 日本ではベビーシッターやハウスキープのためのメイドなどの文化が、特に戦後乏しくなったため、家事は「嫁」が行えば良い、とされ、わざわざそれに対価を払って外注する慣行が廃れている。

 ベビーシッターやメイドを雇うことで、女性が外に勤めに出ることが可能になるのであれば、それらの費用が所得を生み出すための「必要経費」であることは明々白々だ。しかし、日本は「家事」の評価を真正面から行なわず、専らそれを女性にだけ押し付け、まともに議論すらしてこなかった。

 家事に対して国は一切支援をしないばかりか「所得の消耗」と見なし、一方で女性は家に籠らず働いてはどうか、と推奨したものの、超過負担に苦しむ女性が増え、それを見て結婚を躊躇する女性も増えたのではないか。まさに悪循環だ。

 自分の住み家がしっかりして、人はようやく働くことができる。働く世帯にとって「家事」は、厳然たる「所得を得るための必要経費」であり、諸外国もそれを当然のように認めて税制を通じて財政支援をしているのだ。日本でも、今までのような「家事蔑視」の文化を改め、所得向上、少子化対策、女性の社会進出等々の幅広い効果があることを認め、家事の定義を社会全体として見直し、それを支援する抜本的な思考の転換、パラダイムシフトが必要だと思う。

「女性と共に歩む自民党」を

 その具体策の1つが、冒頭紹介した「家事支援税制」の創設だ。フランスの例に倣い、家事、育児、介護等の支援を行う家庭内労働者を雇用した場合、支払い報酬の50%を上限付きで所得税から税額控除するなど、方策の可能性は多岐にわたる。

 自民党は先の衆院選公約で、「社会のあらゆる分野で2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上とする」ことを掲げている。しかし、わが国の上場会社における女性役員の割合は、現段階では1%程度にとどまっているという。

 EUでは、域内の上場企業に対して、社外取締役に占める女性の割合を2020年までに最低40%に引き上げることを義務付ける指令を出すなど、世界は動き出しつつある。日本だけ世界の潮流に逆らうことなど許されない。今こそ改めて、「女性と共に歩む自民党」、を前面に打ち出すため、この問題に真正面から取り組むべき時だ。

 是非とも多くの女性の皆様の生の声を、党本部にお寄せいただきたい。


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35989

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