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現代ビジネス-2013年5月17日掲載記事

「これまでの延長線上ではない」次元の違う政策を総動員した自民党・日本経済再生本部 「中間提言」とりまとめ(現代ビジネス)

 去る5月10日夕刻、自民党本部で記者会見を開き、高市早苗・政調会長とともに自民党・日本経済再生本部(本部長・高市氏)の「中間提言」を公表した。のべ27回にわたり各界有識者からのヒアリングと議論を重ね、党内や政府との調整を経てまとめたものだ。本部長代行として、改めて関係各位のご協力、ご助言に深くお礼申し上げたい。

 今回の政策提言に至る過程においては、再生本部での議論に留まらず、「マクロ金融財政経済政策」、「地域経済再生」、「規制改革」、「労働力・生産性向上」、「金融資本市場・企業統治改革」、「教育改革」、「戦略産業」、「研究開発」の8つのテーマに関する作業グループを設置。当選1〜2回の若手議員を中心に、本部とは別に鋭意議論をしてもらい、それぞれから提言の提出を受けた。

 さらに、安倍総理からの指示でもあった地域経済再生への提言に関しては、自民党の各都道府県連の政調会長を本部長とする「地域経済再生本部」をそれぞれ立ち上げてもらい、各都道府県別の経済再生策を策定、それらを中間提言に入れ込んだ。これまでの自民党ではあまり見られないスタイルだった。

 加えて、自民党として初めての斬新な試みとして、深尾京司・一橋大学経済研究所長ら外部の学者数名に参加して頂き、各グループの報告書作成のサポートや、提言本文の作成に関わって頂いた。

これまでの自民党的な手法から脱皮

 こうしてとりまとめられたのが、50ページに及ぶ「中間提言」だ。量、質、進め方の全てが、これまでの自民党的な手法とは次元の違うものになったのではないかと自負している。

 全体に通ずる理念は、今年1月の総理の所信表明演説で示された通り、これまでとは次元の異なる政策をフル導入しながら、政府は民間企業や働く人々の知恵と情熱を尊重して、不必要な介入を極力控え、助っ人役や行司役に徹し、民間主導で自律的に成長する経済を志向しようというものだ。

 とりわけ力点を置いたのは、「失われた20年」を招き日本経済再生を阻んできた障壁や根本原因を除去することだった。何故ここまで長期にわたって経済が低迷し、デフレに苦しむことになったのか。何故米国のマイクロソフト、アップル、グーグル、Facebookのような、元気に急成長するベンチャー企業が出てこないのか。

「中間提言」では、同じ所信表明演説にもあった通り、「これまでの延長線上」の対応でない、次元の違う政策の総動員を目指し、以下の5つの柱を建てた。

1.地方再生なくして日本再生なし
2.「アジアNo1の起業大国」へ
3.新陳代謝加速、オープンで雇用創出
4.未来の「ヒト」、「ビジネス」で付加価値創出
5.女性が生き生きとして働ける国へ


 まずは何を差し置いても、日本経済再生のためには、各地方の強みを生かすことによる、日本の総力を挙げた成長加速が欠かせない。その想いから、やはり第一の柱は「地方経済再生」となった。地域経済再生の方策として、各地域の強み・ニーズに対応した成長政策、観光産業や地方サービス業の振興、農業再生、産業の国内回帰などを提案した。

 また、地域の強みや変化に対応した成長政策の実現には、それぞれの地域のニーズやアイデアを中央政府の政策に迅速に生かす仕組みを作っていく必要がある。このような問題意識から、都道府県連支部連合会ごとに立ち上げた「地域経済再生本部」の意見を集約。これに基づいて、高齢化対応や地域経済活性化のための都市計画や交通機関の整備、地域医療の強みの発揮、観光振興のための基礎資源整備、地域のニーズを土地政策に迅速に反映させるための権限移譲等を打ち出した。

「アジアNo1の起業大国」へ

 世界に通じるベンチャー企業の創出・育成は、日本経済再生の本丸であり、最重要課題である。有望なベンチャー企業の成長は、雇用を創出し、社会のイノベーションを促し、若者に希望を与え、地域活性化の主役を担うなど、日本の経済・社会を成長へ導く最も強力なエンジンとなる。そうした問題意識から、第二の柱は「ベンチャー」とした。

 わが国でも、1990年代以降、様々なベンチャー支援策が採られてきたものの、各省バラバラの単発施策、中小企業政策とベンチャー政策の混在、官・民の曖昧な役割分担などの課題もあり、思うような成果を上げられてこなかった。

 しかし、今まさに世界クラスの包括的なベンチャー支援政策推進の好機が到来している。従前に比べて、クラウドコンピューティングの発達により起業に必要なインフラコストは劇的に減少したほか、ソーシャルネットワークを通じた低コストでのマーケティング、モバイルマーケットなどを通じた世界市場への容易なアクセスなども手伝い、起業環境は劇的に改善している。

 日本には世界に冠たる技術、優秀な人材、潤沢な資本など本来ベンチャーが活躍できる豊かな土壌がある。才能と野心溢れる起業家が思い切って新しいチャンスに挑戦できるよう、今こそ、国全体としてベンチャー創造を後押しする明確なビジョンを打ち出すべき時だ。

 アジアNo.1の起業大国を目指し、米国のシリコンバレー等諸外国の成功事例に習い、政府総がかりの政策パッケージを策定する。今回、初めて概念として打ち出す、ベンチャーを育むヒト・知識・カネを有機的に循環・再生産させる「ベンチャー生態系(エコシステム)」の整備など、包括的な支援策を早急かつ強力に進める。

「ベンチャー生態系」の局面ごとのきめ細かな、切れ目なきトータル支援策を政府全体として強力に整備、推進し、アジア?1の起業大国を目指すため、官邸に「ベンチャー創造会議(仮称)」を設置することも、今回の提言では打ち出した。

新陳代謝加速、オープンで雇用創出

 日本経済再生にとって最も根源的な課題は何か。それは企業・産業の新陳代謝の停滞、すなわち企業や産業が新しいアイデアや商品を掲げ、次々と新規参入する一方で健全な退出もある、といった経済活動が活発に営まれていないことである。また、企業・産業の再編が活発に行われ、投資と所得・雇用機会が創造され、収益力も高まる、といったことが容易に起きる国に、改めて脱皮できるかどうかが問われている。

 他の先進国の半分程度しかない廃業率、起業率に表れているのは、動きの少ないわが国経済の実態と、その背景にある「失敗と再チャレンジ」を許容しない根深い社会構造、国民心理を反映しているとも言える。その原因を的確にえぐり出し、それを本中間提言、とりわけ以下に挙げるような政策対応によって解決することで、初めて真の自律的な日本経済再生が可能になるのではないか、という問題意識から、第3の柱は「新陳代謝とオープンで雇用創出」とした。

 規律ある規制改革を断行し、既存企業の新分野への進出や新たな起業を呼び起こすとともに、民間市場の新陳代謝を阻害し、市場の競争条件を歪める結果をもたらしてきた幾重にもわたる私企業に対する公的支援を排除し、歪んだ「業者行政」から公正競争を確保する「競争政策」に重点を移すことを目指す。

 また、日本の企業の新陳代謝の低迷の背景には、金融機関の与信姿勢がある。今後、日本経済の本格再生を図るためには、金融機関は易きに流れることなく、企業再生に一段と力点を移すことが肝要である。そのための金融改革も打ち出している。

 更には、日本の低ROE経営の元凶として、取締役、株主、融資元金融機関のあり方の問題がある。本来であれば、経営者が低収益率のままの経営を継続した場合、まずは株主代表たる取締役が企業再建や産業再編などの厳しい指摘をし、企業経営の刷新と新陳代謝を起こさなければならない。具体的には、独立社外取締役の導入等を打ち出すことにより、そうした刷新と新陳代謝が自律的に改善されるコーポレートガバナンス(企業統治)の強化を目指す。

 ぬるま湯的な経営のもう一つの原因が、株式持ち合い、融資に加え株式保有を通じた銀行資本による支配だ。ドイツ等の成功事例を見習い、株式持ち合い解消を促進し、引き締まった経営により、経済活動の活発化を図る。

 そして、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)等の公的・準公的資金について、ガバナンスの強化、人員体制、報酬体系や水準の柔軟化、適切なリスク管理体制の構築、運用ポートフォリオの柔軟化、運用ポートフォリオ全体のリスク軽減につながるような分散投資の推進拡大を、政府の責任において速やかに実行に移すことも要請している。

未来のビジネスを創るのは「ヒト」

 日本は、世界に類を見ないスピードで人口減少社会を迎えている。人口減少が招くものは、労働力人口の減少という経済問題ばかりではない。次代を担う世代の数が相対的に減っていくということは、わが国の知力や安全保障を危うくし、医療・年金・介護・福祉等の社会保障の仕組みの持続性を低下させ、ひいては国力そのものを減衰させていく可能性を含んでいる。

 現役世代の育成はもとより、女性、高齢者の着実かつ更なる労働参加を進め、双方向での留学促進や、高度専門能力を有する外国人労働者の受け入れ増大などにより、海外の知見と活力をわが国に取り入れることが重要である。その観点から、第4の柱に「教育・研究開発」、第5の柱に「女性」を掲げた。

 特に、高等教育機関である大学には、人材の育成及び研究開発を介して、わが国の発展と社会への貢献が大いに求められている。グローバル人材の育成が社会的に要請されて久しいが、日本の大学運営は、国内外で求められる人材の育成や研究成果の活用について十分に対応できておらず、国際標準の大学運営方法とも大きく異なったままである。広く経済社会や市場が求める大学の人材育成機能、研究開発機能を大きく飛躍させるため、大学の運営に関するガバナンス改革を断行する。

 具体的には、理事会が任命する学長が教授会に遠慮せず、大胆な大学運営方針、教育方針、研究方針への転換を図ることで、大学そのものがひとつの産業としての魅力や競争力を付け、国内外から優秀な教授陣、研究者、学生を引き付けることを可能とし、世界の舞台で活躍できる優秀な人材を、大学、大学院から輩出できるようにする、などの大学改革を掲げた。

 第5の柱、「女性」に関する政策で最大の目玉は、ベービーシッターやハウスキーパー等への支出が、就労継続等の上で必要な支出である場合もあることを踏まえた、働く女性に向けた「家事支援税制」の創設だ。家事支援のための家庭内労働者に対する支出に係る税額控除等の制度を参考にしつつ、女性のみならず、広く働く世帯における就労を支援する制度を整備する。

政府への期待

 以上、今回の中間提言を改めて振り返るに、要は、何が新陳代謝を滞らせてきたか、そして、それをどのように除去するか、が焦点となった。大胆な規制改革、企業・経済再生型金融へのシフト、「業者行政」から「競争政策」への転換、コーポレートガバナンスの強化、株式持ち合い解消、GPIFなど公的・準公的資金の運用の見直し等々、まさに「これまでの延長線上」ではない政策だ。

 あとは、政府がしっかりとこの「中間提言」をふまえ、アベノミクス・三本の矢の最も大事な三番目「成長戦略」を軌道に乗せ、新陳代謝を妨げてきた障害を取り除きながら、日本を再生させることを期待したい。私も与党の立場から、引き続きその実現に全力を捧げる覚悟だ。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35816