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毎日新聞(夕刊)-2002年2月4日

改めて問われる日本外交とNGO

塩崎恭久衆院議員に聞く


アフガニスタン復興支援国際会議への参加を一部NGO(非政府組織)が外務省に拒否された問題は、日本の外交とNGOの関係やあり方を改めて問うものだった。互いにどんな役割を果たすべきなのか。自民党の国際的NGOに関する小委員長でNGOとのパイプ役を務める塩崎恭久衆院議員に聞いた。


彼らは外務省の敵ではない得意分野をうまく生かせ

<昨年12月、アフガニスタンへ行かれました>
◆国連機でアフガン北部のマザリシャリフに入りました。正直言って、危険ではと心配しました。別の議員のところには外務省から「危ないからやめてほしい」と言ってきていました。しかし米国との交戦が激しかった地域で、多くのNGOが支援を行っています。同じ目線で現場を見たいと思い、覚悟を決めて行きました。
ジャパン・プラットフォームとピースウィンズ・ジャパンの代表を務める大西健丞さんのアレンジで、北部同盟のウズベク人勢力を率いるドスタム将軍と会いました。私たちの目的は、日本がアフガンをサポートしたいと思っていること、現地にいる日本のNGOを支援してほしいと伝えることでした。将軍は自分たちがどれだけ苦労してきたかを話し、「平和を愛する日本にぜひ協力してほしい」と言いました。日本のNGOがやっている難民キャンプの活動をぜひサポートしてほしいと頼むと「治安を含めてちゃんとしたい」と約束してくれました。
そのキャンプはマザリシャリフからさらに5時間かかる所にあり、ピースウィンズのスタッフの日本人が1人いて、現地の人と同じ物を食べ共に生活していました。大変なことだと感心しましたね。

<帰国して、小泉純一郎首相に報告したそうですが>
◆「1月のアフガン復興支援国際会議のホスト役をやるには、きちっとした現地の情報を持っていることが大切です」と申し上げました。アフガンは多民族国家で、それぞれにリーダーがいます。彼らが本当に何を求めているかを知っていた方がいいと、地図を見ながら説明しました。アフガンの日本大使館は閉鎖され、外務省は手足となる情報源がありませんでした。NGOの情報もちゃんと集めればいい会議になりますと言うと、小泉首相も「そうだな」と言っていました。ですから今回、一部のNGOがアフガン復興支援国際会議への参加を拒否されたのは驚きでした。

<塩崎さんは自民党の国際的NGOに関する小委員会の委員長ですね。始めたきっかけは?>
◆外交部会長をやらせていただいた時、NGOの人たちと話しているうちに、あらためてNGOの役割が大事だと感じました。政治に何を期待しているのかを聞き、自民党の窓口になればと小委員会を発足させました。
国交がない国や途絶えてしまった所での支援活動は政府はできません。そういう場合は、NGOが前面に出て行ってやるというのが、世界の常識になっています。
例えばイラク。日本は大使館を閉鎖して誰もいません。そこで活動しているのはNGOだけです。ピースウィンズはイラク北部に入り、クルド人難民の支援を行っています。技術者のスタッフもいて、難民のための住居や上水道を造っています。キャンプの責任者は25歳の日本人女性です。キャンプを一歩出れば銃弾が飛んでくる危険な地域ですから、市場で武器を買い40人ほどのガードを雇っています。命懸けでやっているのです。
米国は同じように国交を遮断していますが、政府関係者がひそかに現地に入って情報収集していると聞きました。米国務省は現地のクルド人リーダーに加え、NGOから情報を得ている。NGOとつながりがあるからこそ現地に入れるのです。
米国のNGOは国務省や援助庁を出たり入ったりする人が多い。交流のある米国のケネス・キノネスさんは北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)にたいへん詳しい方ですが、元国務省の人で、今はNGOで活動しています。日本も外務省の民間援助支援室長などに、NGOの人を入れたらいいと思いますね。
実際に現場を分かっている人が外交を作るのが一番いい。外務省の役人が突然、こうした地域に派遣されてもNGOをどうサポートすればいいか戸惑うでしょう。NGOは外務省の敵ではないのです。NGOの得意分野をうまく生かし、日本の外交の厚みを増すということもとても大事だと思います。
昨年、私は北朝鮮に行きました。北朝鮮には欧米のNGOが入っていますが、日本人には就労ビザを出してくれないため短期間で出国しなくてはいけません。NGOや国際機関の日本人スタッフをもっと入れてほしいと政府の役人に頼みました。議員の立場としてそうしたサポートができると思います。

<今回、外務省はアフガン復興支援国際会議へのNGOの参加を拒否しました。この混乱をどう思いますか>
◆アフガン復興にNGOの活用が不可欠であることはみな承知しているはずです。しかも大西さんはNGOの関係者の中でも、政府や自民党とも必要に応じ連携していこうと柔軟に考えている人です。結局、真実が明らかにされる前に3人が職を辞し、後味の悪い結果になりました。本質論として、真実を語っていない人が責任を取るべきだったと思います。
私が一番恐れているのは、今回の一件で、NGOに対して誤解が生まれ、外務省の人たちが変な敵対心を持ってしまうことです。せっかく外務省やNGOが、経団連とも協力しジャパン・プラットフォームを作って、うまくやってきたのに、それをトーンダウンさせてはならないのです。

現地に入って情報を取れ
<外務省のアフガニスタンの臨時代理大使は先月、発令されましたが、まだ赴任していないようですが>
◆2月半ばにパキスタンのイスラマバードに入ると聞きました。しかも当分そこにいて、カブールに移るのは3月末だと聞いて驚いています。のんびりしています。カブールは治安が悪いからとの理由ですが、マスコミやNGOは大勢入っている。米国は昨年12月にカブールの大使館を再開し、駐在を始めています。現地に責任ある人間を置かないで、本当の復興支援ができるとは思えません。
私たちが昨年12月に行った時、イスラマバードの在パキスタン日本大使館でアフガン暫定政権の閣僚名簿をもらいましたが、閣僚の出身派閥が間違っていました。私たちがドスタム将軍らに聞いたところでは、ローマグループに区分けされているサマル副議長も彼らの仲間とのことでした。外務省はどこで情報を得ているのか分かりませんが、実際に現地に入らなければ確かな情報は手に入らないのです。

<今後の課題は?>
◆NGOへの資金援助の絶対額が少ないこともそうですが、お金が支給されるまで時間がかかり過ぎるのも問題です。ヨーロッパなどは進んでいて、結構タイムリーに使っています。特に緊急援助は早さが大事ですから。例えば、東ティモール支援の初期段階では日本のNGOが日本政府からよりも米国や国連などから支援を得ていたようです。米国や英国に人脈ができていたことも背景となっているようです。
昨年12月のNGO東京会議で、緒方貞子さんと同席しました。緒方さんの姿を見て、現場を知っているということがNGOへの理解でもあり、難民たちへの理解につながると感じました。国際支援には、政府がやるべきこともあれば、政府ではできないこともあります。そのことを分かっていかなくてはいけないと思います。
外務省の中にもNGOを支えようという意識を持っている人は増えています。今回の一件が大きなつまずきにならないように、より互いの理解を深めて、NGOの活動が活発化していくよう、外務省も政治家も考えていかなければならないと思っています。