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愛媛新聞-2003年11月11日掲載記事

【 愛媛国会 】衆院選終え4選良語る

9日投開票の衆院選で、愛媛新聞社は10日、県内4小選挙区の新戦良4人が出席した座談会「愛媛国会」を本社で開いた。
各氏は

(1) 選挙戦を振り返って
(2) 結果を踏まえ、新体制の評価と今後の政局
(3) 今後の政治課題
(4) 本県関係を含め、特に取り組みたい政策は

―の4点について見解を示した。


〜選挙戦をふりかえって〜

有権者の不安を痛感 塩崎氏
不満の受け皿民主に 山本氏

―今回の総選挙はマニュフェスト(政権公約)選挙と呼ばれた。初めて本格的な政策が論議され、二大政党の実現をかけた戦いだったと思う。選挙戦を振り返って率直な感想は。
塩崎
政治の質として、一段階ステップアップした選挙だった。みんなが日本の政治の姿を変えなければならないとの思いが結集し、やっと公約が実行すべき本当の約束事となった。その意味で国民にも非常にプラスになったと思う。マニュフェスト選挙は民主の編み出した手法のように誤解されがちだが、そうではない。昨年三月に、自民の国家政策本部がマニュフェスト選挙を盛り込んだ提言を出した経緯がある。今回の選挙には、構造改革の成果が十分でなく、厳しい経済情勢や年金問題など、かなりきついだろうとの予想で臨んだ。有権者の共通認識として感じたのは、不満と将来不安のやり場を探しているということ。それに対し、自民は十分スピードのある変化をもたらす事ができるかが問われ、民主は自民のアンチテーゼとして浮上した。愛媛の小選挙区はすべて自民が勝った。少なくとも改革はやってもらわなくては困るという明確なメッセージを受け止めている。
村上
まず物理的に感じたのは、選挙区の広さ。三十一市町村があり、一日三時間睡眠で一周するのに八日間かかった。体力気力ともきつい選挙だった。マニュフェストで気になるのは、期間がどうしても三、四年に限定されること。もう一つは知事や市長など予算や人事権のある人は(マニュフェストとして)取り上げやすいが、われわれ国会議員は十年、二十年の大計を話さなければならない事も多い。なかなかマニュフェストだけで判断するのは難しいのではないか。私は自分のマニュフェストをつくり、街宣や国政報告会など、あらゆる所で配った。見た人からは非常に分かりやすいとの反響があり、ありがたかった。今後気をつけなければならないと思っているのは、民主という看板だけで、三万〜四万票を獲得できるということ。社民、共産の歴史的使命が終わり、自民に対し反対や不満のある人たちを束ねる受け皿ができてきたのかな、と感じている。
小野
有権者が変わってきたことを率直に実感した。十〜二十年前の選挙は、いわばお祭り。勢いと集団でやろうというような雰囲気があった。今回は、有権者が熱狂して投票するというよりも、一人一人がそれぞれ静かに判断して、投票したという印象が非常に強かった。そこにはマニュフェストの論議もある。有権者がどの政党、どの候補に投票するかの判断材料が提供された選挙とも整理できる。ただ自分の選挙戦を振り返れば、そうした個々の政策論ではなかったような気がする。有権者は年金や経済問題などへの関心が非常に強かったが、それよりも総体として日本や地域が今後、どう動いていったらよいのかという指針を候補者に求めていたと思う。有権者と政治家が力を合わせて新しい時代を作ろうとの訴えがよく響いていたという印象だ。次の政治活動にステップアップする土壌を作る上で有意義な選挙だった。
山本
広い選挙区をかけずり回った選挙だった。愛媛の中でも四区は高速道路がなく、各種インフラ整備が一番遅れている。小泉改革に関しても、改革の果実の部分で地元はどうなるのか、という不安を有権者は持っている。小泉改革の中で象徴的に報道されたのが道路公団問題。高速道路がもうできなくなるのではないかという不安もあおられた。それに対し民主は、高速道路無料化なるマニュフェストを出し、報道機関も党の一枚看板のように扱った。各党は分厚いマニュフェストをつくったが、報道機関がどれを目玉にするかによって、有権者の受け取り方は随分違う。民主が、自民に対する不満の受け皿という構造は四区も同じだった。選挙戦では自民と民主の違いを訴えた。小泉改革は大いに結構だが、有権者には造るべきものは造ってもらい、手助けをしてもらいたいという意味が残っている。私の役割は、そうした地方の声を小泉改革の中でどう反映させるのかだとあらためて感じた。

〜新体制の評価と今後の政局〜

内閣続投には心配も 村上氏
改革推進し参院選へ 小野氏

―全国の選挙結果を踏まえて、新体制への評価と今後の政局について。
村上
新体制で小泉内閣が続投するということになるが、少し心配している。"日本丸"がどんどん滝づぼに向かっている中、もっと病巣に直接メスが当たるようにしていかないと、うおのめやおできをいくら手術しても、本当の国の手術にはならないのではないかと思う。私は、「財政と経済と教育の立て直し」が国を再建する手術であり、それを早くしないと次の世代が生き残れないという危機感がある。政策の優先順位をどういうふうにしていくかが、今後の新体制の大きな課題だ。
来年の参院選が終われば、衆参とも三年間は国政選挙がない。そうしたシチュエーションは選挙の歴史で初めてのことだ。参院選が終わるまで、執行部としても本音の議論ができないかと思うが、そこを含めて、かじ取りが問われてくるという気がする。
小野
今選挙は自民にとって厳しい結果という指摘があるが、私は決してそうは思わない。前回選挙時に比べれば四議席伸ばしている。単独過半数という目的に対しても、無所属候補者が自民の追加公認で加わるなど、全体的には自民にとって必ずしも悪い結果にはならないと思う。
選挙報道では民主の菅党首は笑顔、自民執行部は渋い顔がとらえられているが、違和感がある。民主党は今回、政権交代を公約として戦ったわけだが、この議席数でどう政権交代をするのが明らかにする必要があり、民主党の指導者の責任というものがあるだろう。
 今後の政局は、自民内部や連立三党で力を結集し、比較的求心力の強い形で移行するだろう。この時期にできる限りの改革を推進し、その実績をもって参院選に臨むという形なので、与党内で政局がらみの動きが出るとは思っていない。民主側も混乱が起きる事態はあまり考えにくい。少数野党の小さいレベルの政界再編が起こるかどうかということはあるが、当面は安定的に構造改革を推進できると考えている。
山本
(自民党の議席は)たぶん保守系無所属を含めて、限りなく単独過半数に近い数字となろう。今選挙結果「後退」とか「敗北」という印象はさらさらない。ただ、比例において民主に越されたことは大変ゆゆしきことで、党として考えていくべきことと思う。
社民や共産、保守新党を含めて少数政党が激減したという観点からいくと、「二大政党制」への流れが出てきたかとは思う。しかし、今の選挙制度の中で二党に収れんされていくには、もう一つ選挙制度を工夫しなくてはいけないのではないかという印象を持っている。
民主党内には、極端な右と驚嘆な左の考え方をする人がいる。果たして実際に国会で論戦が始まったときに、いつまで一緒にいるのが、ひょっとすると野党サイドの方から火ダネが出てくるのかなという気もする。
選挙戦では、小泉構造改革続投を主張してきたが、各論に入ったときには若干の議論の余地がある。それは政局に至るような話ではないが、今後、活発な意見が党内で交わされていくのだろうと思っている。
塩崎
(比例での有権者の行動は)政策的にはアンチテーゼを明確に示した上で民主党に入れたのではないだろう。むしろ、自民の改革のスピードが遅いとか、自分たちの不安を俺は払しょくするほどには大胆ではないという不満があって、その受け皿として民主が比例で自民を超えたという形になっている。自民としては、その不満の受け皿機能を十分に果たしえなかったという反省はしなくてはならない。そうなると、小泉改革路線は進むのか、逆にスピードダウンするのかが問題になる。両方あると思うが、私は進めるしかないと思う。むしろ個別の案件では無視し得ない批判がいくつかある。政策的にも、例えば自民党が十分に考えを出していない年金やイラクの問題でも、国民的議論の中で煮詰まってない中で、民主党からも意見が出てきたのだと思う。今、小泉構造改革がしようとしている中身も、もう一度十分に吟味して、次にどうするか考え直す必要がある。比例で追い越されたという"メッセージ"をかみしめ、次の選挙へのステップにすることが大切だ。

〜今後の政治課題〜

長期的展開に回答を 小野氏
財政を体系的に解決 村上氏

―今衆議院議員は構造改革路線や郵政事業、道路公団の民営化、年金制度の改革、憲法への取り組みなど今後の日本を形作る骨組がクローズアップされた選挙だったが、今後の政治課題は。
小野
選挙の争点に対する私の受け取りは違う。確かに、郵政や道路公団の民営化問題を小泉首相は争点化してきたが、有権者の印象は違っていた。高齢者は年金問題に強い関心があり、経済の活性化問題にも有権者の関心があったが、あまり個別政策に対する意見はなかったように思う。むしろ、先の展望が出来ない中で自分たちがどうなるのだろうという漠たる思いに「何らかの回答を示してほしい」との声が有権者から寄せられた。小泉構造改革そのものについて、長期的な展望を首相が提示しているとは思えない。ただ、戦後60年近くたっていろいろな問題が混然一体となっている中、一つ一つの政策に回答を与えようとしてもきりがない。根本的な長期的なビジョンに対する回答を与えない限り、混迷から脱することはできない。小泉改革は混乱した社会の礎を築き直しすことをやっている。その礎に建つ、次の日本の建物をどのようにするのかを自民党が真剣に取り組み、国民に示すことが最大の課題だ。
山本
緊急にやるべきことは、国と地方の役割の見直し。三位一体改革の枠組み作りが進んでいる中、本県でも市町村合併が急速に進んでいる「合併で町がどうなるのか」との声が有権者から寄せられた。本当に地方の時代が合併を通じて来るのかなと感じる。権限を市町村に譲り、行政をスリム化する話はあるが、財源の部分は議論が残っている。このままでは、地方は混乱だけが残ってしまうという懸念を持っている。毎日、子が親を殺す、親が子を殺すなど考えられないような事件が報道されている。この問題に本格的に手を入れていかないと、この国の将来は形だけができて、心の部分が全く無くなる。背骨が通った国民にならない。政治家すべてが子供の将来に何ができるのかということを考えていく必要がある。自民党が教育基本法の改正案を出そうとしているが、一歩一歩積み重ね、国を誇りに思う、家庭・家族を大事にする国民性を取り戻す努力をするべきだ。
塩崎
政治課題は3つある。1つ目は、活力ある日本の復活。変化する時代についていくだけの司令塔が、この国にあるのかが最大の課題だ。本当の意味での政治主導の政策決定体制をどう確立していくかが大切で、役所任せではいけない。年金問題も、元気な日本を復活させる上で、社会保障がちゃんとしていないと安心できない。我慢について国民は用意がないわけではない。ただ、納得できない我慢は拒否されるのは明らかだ。どういう問題を日本が抱え、我慢するのかを説明し、ドラスチックな年金改革案を出さないと、うまくいかない。2つ目は世界から信頼される国づくり。そのためには、イラク問題を含めて、誰かにやらされる「反応外交」ではなく、日本の国益にとって何が重要かを日本が考え、司令塔が政権として責任をもって決め、大事な税金を使っていくべきだ。3つ目は人づくり。日本から優秀な人材が流出しているが、人の評価がきちんとしていないことに最大の問題がある。教育だけでは解決しない根深い問題。公務員制度改革、年功序列問題などを変えていかないと、人は育たない。
村上
体育系に問題を集約する必要がある。「失われた10年」の原因は、経済のボーダーレスやバブル経済の崩壊、財政問題など。財政全体の歳入、歳出の体系をどうするのかを考えないと、個別にやっていては無理。行政の仕事を削減ながら歳入をどう確保するかについて、ある程度全体のスキーム(枠組み)を考えていく時期にきている。人間の教育は初等教育。初等教育では、読み書き、そろばんなど基礎学力を大切にするべきだ。また、公の精神があり、志のあるリーダーを社会や国家が意図的に作っていかなければならない。また、国家観も大事。戦争に負けた国は、欧米に追いつけ追い越せだったが、今後、今まで通り経済大国を突っ走りたいのか。そろそろ方向を考える時期だ。今までのように人口が増えていけば経済大国で突っ走れるが、人口が減り経済が縮小するわけだから、今の経済国家を維持できるのかどうか。私は問題だと思う。

〜特に取り組みたい政策〜
愛媛の代表として今後特に取り組みたい政策は。


県内外で水問題協調 塩崎氏
高速道を一本松まで 山本氏
山本
道路公団はおそらく民営化されるだろう。高速道路を、これまでのように道路公団でやってもらうわけにはいかないということを覚悟しているが、ぜひとも一本松町までは完成させたい。知恵を出せばできるというのが、実感としてある。大洲道路のように国交直轄の高規格道路をうまく組み込んでいくなど、知恵を出して工夫すれば、高速道路機能を持った道路ができるという強い信念を持っている。私が政治生命をかけると言っている政策であり、実現していきたい。環境問題については、早急に取り組むべきことに廃棄物行政がある。廃棄物の焼却炉を壊すのに、今は市町村が負担を担っており、補助がまったく出ない。ダイオキシン対策のために、壊すに壊せない焼却炉を抱えている所がたくさんある。現在、補助率の改定を進めており、十一月の予算でやっていきたいと思う。
塩崎
松山でいえば水の問題が深刻だが、これは一地域の問題ではなく、ばあいによっては県外を含めて協力を願い、協調していかなければならない問題。国会議員と、県や市町村の議会、行政が一体となって、スクラムを組みなおさないと難しいと思うが、これを地元の問題としてやっていかなくてはならない。(選挙で掲げていた)「作る改革」でいえば、この国の司令官、司令塔は誰かを明らかにしていかなくては、あらゆる問題に答が出ないと思う。「官」と「政」の関係については、民主党が脱官僚宣言というのを出しているが、対立すれば良い答が出るのではない。良い関係、新しいコンビネーションを作り直す必要がある。その中で政治がリーダーシップをとり、政策作りをスピーディーに大胆にやっていく。国家的な政策課題としては年金と医療といった社会保障で、世代間の助け合いの新しい仕組みをどう築き上げていくかが、私の最大の課題と思っている。
村上
経済対策でまずやるべきことは、デフレ対策だ。財務省、日本銀行、各省庁などのベクトルを集中させないといけないが、現状は、各省庁は庭先をはいただけでやったと言っている。最後に本当に腰の入ったデフレ対策をできるのは、首相だけ。もう一回官邸に行って、首相に今一度デフレ対策を要請したい。国と地方も財政、経済、教育が同じ課題。それを愛媛から変えていくしかない。愛媛が範を示して、モデルケースとして加戸知事を先頭にして、愛媛県がやるところを見せるしかない。合併後の問題もあるが、私の地域は、歴史と文化と伝統の地域。本県に来た支店長や支局長に聞くと、リタイア(退職)として住みたい地域日本一という。要するに台風の一撃もないし、地震もない。水を含めたインフラの整備を行い、リタイアして住みたい日本一の地域実現を目指して、一生懸命やりたいというのが、私の地元の課題だ。
小野
権力政治、金権政治など、国会議員が権力をふるって国民に強制力でついて来いと言っても、国民の側がついてこない時代になった。お金の力をもって求心力を働かせて努力しても、財政も危機的状況にあり社会を動かしずらくなった。では、何が政治家の武器になるのか。私は心であり、知恵だと思う。「権力やお金の政治」から、「心や知恵の政治」に以降している。大きな質的変化だが、日本全体で一気に改革をやろうと思っても非常に困難。自分たちの声が届き、知恵が生きる範囲は地方だ。地方で、日本の次の時代をシンボライズするモデル的な地域を作る取り組みが非常に大事だと思う。小泉首相は地方を切り捨てるのではない。この変化の時代の中で、知恵を多く出して新しい創意工夫をしている所が発展する地域になるわけで、そこに力を注ぎたいとしている。そこで「国会議員が権力的について来いという時代ではなく、むしろ国民が提案を出して国会議員が手伝う」と話すと、言いたい人がいっぱいおり、地域にポテンシャルが十分あると考える。これからは夢作り運動を展開しながら、それぞれの県民が持っている思い、夢を具体化していくことを百花繚乱(りょうらん)のごとく全地域で展開してみたい。

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