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日本経済新聞-2001年6月23日付29面[時論]

証券会社の違法行為防止 監視当局に準司法権限を

準大手の国際証券が、検査の際に事実を意図的に隠す検査忌避や特別な利益を提供することを約束して取引勧誘する利益供与など証券取引法に違反する行為をしていたとして、金融庁から行政処分を受けた。しかしこれは氷山の一角で、金融庁や証券取引等監視委員会の手が及んでいない違反行為がほかにも多いのではないか。個人投資家の多くもそう感じているはずだ。

検査の際に事実を隠したり検査を忌避したりするのは論外だが、それは一方では証券市場を監督する金融庁や監視委の権限や権威の問題でもある。監督当局としての実力が問われるからだ。当局が見逃すリスクが日常的にあると考えると、監督のあり方を含めた日本の証券市場の構造改革は待ったなしの状況だ。
現在のように銀行貸し出しの機能が落ちてくると、資本市場を通じた直接金融への期待が高まる。その担い手である証券会社や証取法の厳格な執行体制に対する信頼がなければ、税制面などからいくら支援しても投資家を市場に引きつけることはできない。

改革すべき点は多いが、第一に証券市場の育成から監視、摘発に至る機能を一元化することが挙げられる。現状では「市場全体の責任者は私だ」といえる人は一人もいない。監視機能ひとつ取っても現在は金融庁と監視委があり、証券市場に対してトータルに責任を持つ体制になっていない。国際証券の問題でも、監視委は勧告するだけで、実際の処分は金融庁が実施した。今のような二元的な体制では、検査監督の機動性と責任の所在に疑問が残る。

機動的かつ総合的に対応するためには、証券市場の担当部局を一元化した組織に集約化することだ。例えば、インターネットの普及に伴い、個人によるネット証券取引も急増している。これまでの業者行政中心の発想で対応するのは難しい。

具体的には、米証券取引委員会(SEC)をモデルとする。「証券取引委員会(仮称、日本版SEC)」の創設構想だ。すなわち証券市場の担当部局を銀行監督などとは切り離して統合・強化する。銀行の監督では金融システム全体のリスクをどう管理するかに力点を置くが、証券市場が健全に機能するには明確なルールに基づく厳正な摘発と処分が重要となる。検査官が銀行と証券の両方について高度な専門知識を維持することも難しくなってきている。

第二に、米国のSECに比べて、我が国の証券市場の担当部局に与えられた権限が小さいことも問題だ。インサイダー取引など不正行為の立証が難しいことを考えると、証券市場をトータルに監視するには訴追権限、差し止め権限、民事制裁を科する権限、審決権限など、いわゆる準司法的権限を日本版SECに与えることを検討すべきだ。このように司法的な機能を強化することで、国民にとって証券市場の透明性や信頼性を高めることができる。

第三に、今回の事件では検査忌避や虚偽表示など証券会社の内部監査体制の不備も明らかになった。我が国における監査のあり方は、会計士の責任強化と併せてコーポレートガバナンス(企業統治)改革にかかわる重要な課題である。監査役や会計士が従来のような経営者の「イエスマン」ではなく、株主利益のために体を張って仕事をする制度整備も急務だ。