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日本経済新聞-2001年3月20日

「公正な市場へ」専門家に聞く -今こそ日本版SECを-

生産性向上こそ課題

―― 日本経済再生のカギは株式市場の発展にあるとの見方があります。
 「結局、個々の企業が利益を生み出す以外に道はない。不良債権問題だけに焦点が当たっているが、企業がいくら債務を抱えても返せるだけの収益さえ上げていれば問題にはならない。企業の収益性、生産性を上げることこそ課題だ」
「株式市場を通じて、企業経営者に生産性を上げるようプレッシャーをかける仕組みを早急に作る必要がある。そのためには、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の再構築と並んで、怠慢な経営者を排除するような投資家の意志を反映する透明な市場を作る必要がある。当然、株式持ち合いはなくなるべきで、市場を一元的に育成・監督する機関が必要だ」

―― 委員長を務める自民党企業会計小委員会で、米国の証券取引委員会(SEC)のような強力な市場監督機能の創設などを議論していますね。
 「今こそ日本版SECを立ち上げるべきだと思う。省庁再編で金融担当相の下に企画立案と監査監督という二つの機能がくっついた。かつて検査監督のトップとして不適当とみられる発言で金融担当相が辞任を余儀なくされた。検査監督に閣僚が直接かかわる国は、先進国には見当たらない。現状では強力な企画・監視・執行体制を一元的に持っているとはいえず、全く不十分だ」

市場監督機関が必要

―― なぜ会計小委で市場の監督体制まで議論するのか、という場違いとの批判もあるようです。
 「いくら国際的に通用する透明な会計基準を作っても、それが守られているかどうかをチェックする監督当局がなければ機能しない。小委の提言を土台に、民間で会計基準設定機関を創設することが決まった。市場を公正に機能させるためのインフラとして会計基準が重要だという認識がようやく広がってきた。もうひとつの重要なインフラが監督機関だ」
「かつて大蔵省は1998年3月期末に急きょ、銀行の株式評価法として従来の低価法から原価法への変更を認めた。銀行監督と会計基準の設定・運用が同じ大蔵省に存在したことが、会計基準の恣意(しい)的な運用に結び付いた。会計の健全性の論理が負けたわけだ。これは金融庁になっても変わっていない」

―― 具体的な組織のあり方で提案はありますか。
 「まず内閣府に国家行政組織法三条に基づく証券取引委員会を新設する。いわゆる(公正取引委員会のような)三条委員会で、高い独立性を持たせるわけだ。そのうえで、現在の証券取引等監視委員会の機能と、金融庁にある総務企画局市場課や企業財務担当参事官室、企画課の一部、監督局証券課、検査局の一部の機能を集約すべきだ。もちろん、金融担当相の管轄外にする」

政治に力なく残念

―― 監督当局の立脚点が大きく変わるということですね。
 「これまで証券取引法は証券業界のルールを決める業法の色彩が濃かった。今後は事業会社や一般投資家に対して行政が注意喚起して警告する一般法としての側面が大きくなる。そうした新たな証取法に基づいて市場監視やルールづくりを機動的に行うには独立した一元的な組織が良い」

―― 改革に向けた具体的な動きが出てきません。
 「最良の株価対策は透明で公正な市場を作ること。そのためのインフラ整備を真剣に行うべきだが、官民ともに乗り気でないようだ。本来は強力な指導力で改革していくべきなのだが、今の日本の政治にこうした力がないのは残念だ」