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NIKKEI NET 特別コラム「ザ・フロントランナー今週の視点」第3回-2001/08/27 号

的確な優先順位付けこそ改革成功の鍵

先日、米国の雑誌「フォーチュン」の北京支局長が小泉改革についてインタビューに来た。わざわざ北京から日本のことを聞きに来た理由を聞くと、何と同誌は東京支局を昨年閉じ、新たに北京支局を開設、今後、日本のことは北京支局が担当するという。資本主義の象徴的な存在ともいえる、この雑誌の支局がもはや日本ではなく中国に置かれるとは、いささかショックだった。 かつてゴルバチョフ元ソ連大統領が指摘した通り、日本こそ社会主義経済で、共産主義であったはずの中国が今やアジアを代表する資本主義国だ、とでも言わんばかりの行動である。「小泉構造改革」の核心はこうした日本の社会主義的な体質からの脱皮にある。

●不良債権処理、産業再生が第一歩、デフレ効果に財政は少なくとも「中立」に

小泉構造改革の大胆な試みは既に始まっている。しかし、経済政策運営に関して懸念材料がないわけではない。構造改革の長期ビジョンに基づく的確な優先順位付けと工程管理がなされているのか、という点だ。構造改革の「一丁目一番地」は何といっても不良債権処理とそれを通じた企業・産業の再生である。
当然、これにはデフレ効果が伴う。その効果を減殺するために財政支出、すなわち、いわゆる「景気対策」はやはり必要だ。つまり財政構造のうち、公共事業等の支出や税制などの抜本見直しは当然だが、不良債権処理にメドがつくまで2年程度は景気に対して「支援型」か、少なくとも「中立」でなければ、政権としてマクロ経済のバランスを維持できまい。目下のところ、2002年度の一般歳出純減など、むしろ「緊縮型」の様相を呈してきている。根深い不良債権の処理の本格スタートを待たずに、政府自らが財政をデフレ的に運営する余裕はないはずだ。

●国有財産売却、民営化などで、政府が身を切る覚悟示せ

もちろん財政を「景気支援型」にしてもその財政状況を悪化させてはならない。不良債権処理と財政再建という連立方程式への私の答えは、国有資産の売却や証券化、民営化でデフレ対策財源を作り、プライマリー・バランス(利払い費を除いた歳出と、国債発行収入を除いた歳入との収支)は悪化させないことだ。「30兆円の国債発行上限」もこれで守れる。いわば1997年の金融危機時の「梶山提案」と同様、国有資産処分見合いの「構造改革達成特別勘定」を創設し、構造改革の第一ステージを乗り切るべきなのだ。
政府保有NTT・JT株式を全額売却すれば約5兆円、行政財産のうち土地・建物で約30兆円あり、その1割を売却しても3兆円はできる。立派な一等地に公務員官舎や非効率な政府施設が結構ある。私の地元でも、市街地のど真ん中に政府施設とともにテニスコートがあったり、幽霊屋敷と化した独身寮があったりする。羽田空港の民営化でも1兆円弱にはなろうし、東京大学なども民営化で高く売れるはずだ。もちろん特殊法人の民営化によっても財源手当ては可能だ。民間に「痛み」をお願いするなら、国も身を切る覚悟を行動で示すべきだ。

●今、「インフレ目標」は筋違い、まず政府が具体的な行動を

こうした政府の責任として、まず、やるべきことをやらずに、「もはや金融の一層の緩和しかない」では通らないし、ましてや、この局面で効果があるのかどうかも疑わしい「インフレ・ターゲティング」(インフレ目標、金融政策の目標に一定の物価上昇率の達成を盛り込むこと)を中央銀行に迫るのはいささか筋違いではないか。不良債権処理を突破口に、政府が責任ある経済構造改革を具体的に断行し始めた時にこそ、中央銀行にも一段の金融緩和による協力要請をし、他の政策と合わせ、総力戦で改革を成功に導くべきではないだろうか。

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