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日経産業新聞-2000年2月29日

企業会計制度の決定 だれが(自民企業会計小委 塩崎恭久・小委員長に聞く)

独立した民間機関を 時宜に応じ基準変更へ

 企業会計基準づくりの問題に政治が初めて本格的に取り組んでいる。自民党金融問題調査会の「企業会計に関する小委員会」は1999年末、独立した基準設定機関を作るための中間報告案をまとめた。背景には、国際会計基準委員会(IASC)による国際基準づくりの動きがある。独立機関の設置と公認会計士法の改正を目指す塩崎恭久・小委員長(参院議員)に課題を聞いた。
(聞き手は池上輝彦)

IASC、基準設定へ

――なぜ政治が企業会計の問題に取り組む必要性が出てきたのか。

 「公認会計士の集まりに過ぎなかったIASCが、世界の会計基準を設定する機関として組織替えしていることが大きい。この国際会計基準(IAS)を設定する機関の指名委員会のメンバーに日本からは一人も選ばれなかった。さらに5月の理事会メンバー14人の人選でも日本人が選ばれる可能性は絶望的に低い。英米独仏に加え、中国、オーストラリアも人を送り込んでいる。理由は日本の会計とその公的機関が全く信用されていないことに尽きる。世界に信認される機関を早急に作る必要がある」

――IASCのメンバーにならないとどうなる。

 「参加諸国のメンバーが作成した会計基準に日本は黙って従うだけになる。G7(先進7カ国蔵相会議)のメンバーで経済規模も大きい日本が、企業経営を左右する国際会計基準の議論に口を出せないのは深刻な問題だ」 下請けではダメ

――どんな設定機関の設立を目指すか。

 「透明性が高く、独立した組織で、能力があって恒久的な機関だ。メンバーは公認会計士、企業関係者、会計・法学者、それに証券アナリスト。こうしたプロが専任のスタッフを抱えて会計基準の実務指針まで作成できる全く新しい組織を目指す。米国の設定機関であるFASB(財務会計基準審議会)のように、専門家が独立した組織で環境の変化に応じて絶えず会計基準を見直し、改正・作成し続けることが欠かせない。」

――現在の設定機関である企業会計審議会を見直す選択肢は。

 「それはない。企業会計審を見直す程度では世界から信認を得られないという問題意識が我々のそもそものスタートラインだからだ。2000年3月期から導入された新連結会計基準の作成など、企業会計審の働きには大変なものがある。しかし、何年かに1回の大改正では、経営環境の変化にとても追い付けない。大蔵省が主張する企業会計審の見直しや財団法人の活用では済まされない。法律で権限を与えられた民間法人が会計基準をタイムリーに作成できる仕組みが求められる」

 「日本の会計士団体である日本公認会計士協会もあるが、今までは監督省庁がが描いたシナリオ通りの下請けのような仕事をさせられてきた。最近は独自のガイドラインを作るなど変わってきたし、同協会の中地宏会長は『会計士の独り立ち』を会員に唱えるなど体質改善に必死に取り組んでいる。ただ問題は倫理や精神論ではない。古い公認会計士法によって会計士の独立性が妨げられている。 法改正は不可避

――目標に向けた具体的なスケジュールは。

 「検討するにつれて、やはり日本の会計士法の改正をやらないと、単に設定機関を設立するだけでは意味がないことが分かってきた。会計士法は1948年の施行以来、一度も改正されていない。公認会計士が責任感とプライドを持って独立した質の高い仕事をやるためには、今の会計士法はやりにくい法律だ。様々なレベルで監督省庁の認可が必要であり、会計士の独立性が保証されていない」

 「秋の臨時国会までには改正法案を間に合わせたい。しかし、法改正にはまだ時間がかかるうえに事態は急を要する。IASCの理事会メンバーの人選がある5月までに、日本は変わったということを何らかの形で世界に示さなければならない。米FASBのような設定機関をつくると世界に宣言する必要がある」

企業会計に関する小委員会がまとめた会計基準設定機関の条件

【会計基準設定機関の使命】
  • つねに国内外の経済実態を迅速、正確に反映した基準の設定
  • 特定の利害関係社によってゆがめられない会計基準の設定
  • 国際的整合性を持った基準の設定
【設定機関の条件】
  • 常設の機関
  • 常勤の設定委員や専門スタッフを持つ
  • 政治や特定省庁、特定業界から政策・予算・人事などで独立性を持つ
  • 透明性が高い(設定委員の選出や会計基準の設定議事の公開など)
  • 国際性を持つ
  • 会計・監査基準に多様な価値観を反映
  • 能動的な基準設定をするためのダイナミズムを持つ