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週刊東洋経済「視点」-2001/12/08 号

迅速な政策転換実現へ首相直轄の「政策室」設置を

英国のブレア首相は97年の首相就任直後、電光石火の早業で大きな政策変更宣言をいくつか行なった。大蔵省の金融政策決定権を中央銀行のイングランド銀行に戻すとともに、中央銀行の銀行監督権限を新たな金融監督当局に移したのもそのひとつだ。不思議に、政策決定後、与党や議会あるいは官僚機構と大きくもめたとは聞いていない。

このような大きな政策転換が就任後直ちに首相主導で行なわれるのを見て、金融監督行政の大蔵省からの分離や日銀法改正に一年もかかる日本との政策決定における時間感覚の差を痛感したものだ。ましてや利害が錯綜する複雑な構造問題が山積する日本では、なおのこと英国流の首相中心の強い内閣を確立しなければ明日はない、との思いを今募らせている。政府・与党の二元指導体制を首相を中心とする内閣に一元化すべきなのだ。もちろん、国会の健全なチェック機能と国民の声を反映する党のダイナミズムを強化するのは当然だが、何といっても首相を中心とした「政治主導」の確立が急務だ。

もちろん、国益についての深慮遠謀なしに、首相や内閣の単なる思いつきや強引さのみに基づく政策を振りまわすなら、困るのは国民だ。英国の成功は、70年代央に導入された政治的任用による特別顧問( Special Advisers )、とりわけ首相府の政策室(Policy Unit)の設置によるところ大だ。サッチャ-首相の民営化路線や、ブレア革命と称せられる強力な改革政策もこのポリシ-・ユニットから出てきた。

サッチャ-政権初期に3名程度だったポリシ-・ユニットも、80年代前半から6、7名になり、ブレア首相は一気に11名に増員、今日では14名の強力部隊になっている。各省大臣の補佐役を含めると政府全体で81名にものぼる特別顧問の中で、政策立案の要はこのチ-ムだ。首相府内の公式組織で、構成員は他の特別顧問同様フルタイムの公務員だ。ここが日本の首相を囲む著名人主体の懇談会、研究会などと大きく異なる。経済財政諮問会議でも民間メンバ-は非常勤だし、公務員でもない。また、ポリシ-ユニット構成員の前職は学者から党職員まで幅広いが、官僚の任命は極めてまれだ。高学歴者で占められ、サッチャ-は実業家重視だったが、ブレアになりマスコミやシンクタンク出身者などが増え、若返りも進み、政権発足当初は30歳代以下が7人もいた。

役割は首相の意を体して政策を練り、関係閣僚と協議し、各省庁に内容を詰めさせ、実行することだ。わが国も政策決定は政府・与党二元体制から首相中心の内閣へと、一元化の方向へ進むべきだが、首相が官僚の代弁者では意味がない。首相が、官僚の政策提言は尊重しながらも、自らの情報と能力をもって最終的な独自の総合判断を下せる体制整備が不可欠なのだ。そして日本同様強い官僚制度を持つ英国の教訓から、そうした体制を制度化することが決定的に重要だ。わが国でも「日本版ポリシ-・ユニット」ともいうべき政策室を首相の下に設置し、更には政治任用による大臣補佐官制度をも早急に導入すべきだ。