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週刊東洋経済-1999年7月31日

資産流動化対策は役所には任せられない

週刊東洋経済 1999年7月31日号掲載

国内投資家回帰を促す資産流動化こそ、経済活性化の最大のカギである

週刊東洋経済
景気の大底脱出を感じさせる指標が相次ぐ割に、先行きに展望が開けない。理由は簡単だ。ゼロ金利、公共事業、為替介入など景気の支持基盤が政府の「何でもあり」の対策に頼り切っており、政府依存症からの脱却の道筋が見えないからだ。

「独創的技術や製品開発力、ひいては産業競争力の衰退」という中長期的課題については、遅ればせながら手が打たれ始めたところだが、直面する根本問題の一つである不動産市場の整備についてはまだ十分な対策がとられていない。私の選挙区の事務所からも、ついに二つ先の大通りが見通せるようになった。立ち腐れの土地を抱える銀行は、中小企業が新たな事業を興したくても、動かない土地を担保に新規融資をしない。固定資産税を賄うだけの100円パーキングから公共セクターも関与し途中で頓挫した大型開発案件などは、ゼロ金利で辛うじて現状維持されているだけであり、金利が上がれば耐えられなくなる。

下げ止まらない地価への無力感とともに「買いたたく」外資への攘夷論のムードも漂い始めた。だが、外資は、世界分散投資の中で日本の土地を転売するだけの「土地の卸売屋」だ。外資が買っても日本の土地をカリフォルニア沖に浮かべることはできない。日本の土地の利用価値は、我々日本人が決めるしかないのだ。結局、流動化を促進し資産の利用価値を高める以外、解決の方途はない。

今秋の臨時国会で流動化議員立法を

昨年の通常国会で、不良債権流動化の枠組みとして「金融再生トータルプラン」を打ち出し、流動化促進のためのSPC法(特定目的会社による資産流動化法)を成立させた。しかし、その後の動きは、外資すら同法を利用せず、リスクマネーは相変わらず途絶えたままだ。流動化は徐々にしか進まず、市場関係者からは「SPC法は不良債権のゴミ箱法」とヤユされているのが現状だ。

その点で、資産流動化の環境整備はまさに焦眉の急である。6月11日の政府の雇用・産業競争力向上対策では、我々の主張どおり「資産流動化の促進」が入り、大蔵省との間では「早急に結論を得るべく検討を行う」との表現で折り合った。金融審議会でも「集団投資スキーム」等を検討しており、先般、中間報告が出され、一般のコメントを求めるなど一部の法整備は行う方向だ。

しかし、(1)今のペースでは「来年の通常国会で法改正、来年秋の施行」となり、現下の緊急を要する事態に間に合わない、(2)大蔵、法務省など複数の役所にまたがる法改正が必要だが、昨年の教訓から、過去の論理からの一段ジャンプを要する各省間合意は、政治の強い指導力がなければ成立せず、結果として「こぢんまり」した改正でお茶を濁す可能性が大きい、という点が懸念材料だ。この際、議員立法で包括的な資産流動化関連法案の「今秋の臨時国会成立、来年初施行」を目指すべきだ。

こうした問題意識に立ち、自民党では去る4月に、SPC法に限らず資産流動化や不動産等の制度インフラ全般の改善に必要な具体策について、アンケートを各方面にお願いした。各層の資産流動化への熱い思いの中から浮かび上がってきた問題点と解決策は以下のとおりだ。

第一に、銀行や生保など傷を負った間接金融の他に、1300兆円の家計貯蓄をバブル時とは異なった形で「正しく」不動産市場に呼び込む国内の投資チャネルが欠けている。資産流動化の代表選手であるSPCの機能度が低い点が問題だ。
その理由は、制度導入時に民法、商法や税法等を根本的に見直す議論を避けたことにある。商法は法人格の濫用につながるペーパーカンパニー乱立防止のため、現物出資の際に検査を行う等の多くの規制を設けているが、一方で、求められる「使いやすくコストの安いSPC」とは、実は日本の商法が否定しようとするペーパーカンパニーそのものだ。商法原則の例外としてSPCを位置付けない限り「使いやすいSPC」はできない。

しかし昨年、政府は商法原則の変更には二〜三年の議論を要し不良債権処理に間に合わないと考えた。そこで資産流動化計画という詳細な行政審査を導入し、SPC認可後の増減資や借り入れ、資産入れ替え等も法律上認めない等、行政が縛る形でSPC法を起案した。

ところが、市場関係者の不満は、ここに集中する。行政が審査した状態で数十年間資産を固定化し、投資家保護は行政のお墨付きだけのSPCでは、生きた金融取引で使い物にならない。銀行機能がマヒしている今、行政が資産の中身まで審査するのは、銀行と一緒に行政もカネの流れを止めているのに等しい。だから、SPC法の自由化は急務なのだ。

また、これまで信託法の議論も避けてきた。資産流動化でSPCを利用する理由は、法人格を取得し投資家の責任を限定することにあるが、信託でも同じ機能が果たせる。信託業を自由化し、誰でも商事信託を行うことができればSPC法は不要だったかもしれない。しかし業際問題に手を付ける時間がなく、その選択肢を考慮しなかった。税制面でも、ペーパーカンパニーとしてのSPCの法的位置付けに整理がつかず、譲渡益課税等で信託とSPCで扱いが異なるまま現在に至っている。

民法、商法や税法を正面から突破せよ

当時、政府は限られた時間の中で最善を尽くしたわけで、議論の不徹底自体を責めるつもりはない。内容を精査せず十分機能しない法律を通してしまった政治家が責任を負わなければならない。重要な点は、直接金融の投資チャネルを作るうえで、民法、商法や税法の原則を正面から議論して突破すべきということだ。

その際、留意すべきは、国が投資家を保護する法律や行政規制は、あくまで「私的自治」の枠組みによる民間の市場規律が確保できない場合に限り適用すべき点だ。例えば、米国の証券取引委員会は、1992年に資産流動化取引は民間格付け等の市場規律で支えられているとの理由で、同取引を1940年投資会社法の規制から除外した。SPC法の自由化に際しても、原則として行政や法律による種々の行為規制を撤廃し、会社型投資信託と同様に、投資家に対する経営陣の受託者責任や投資家への議決権付与等を行うことで「使いやすいSPC」を実現すべきだ。

第二に、投資家の自己責任が前提となればなるほど、投資採算の前提となる民法、借地借家法、破産法、税法等のルールを明確化する必要がある。特に我が国では、証券化等の際に不可欠な将来の賃料など投資収益予測の正確な情報を与える制度が不動産市場では未整備で、キャピタルゲイン狙いの「ころがし」以外の投資ができにくい点を改めるべきだ。具体的には借地借家法(定期借家権創設、正当事由の商業契約不適用、賃料減額請求)、民法(抗弁権切断)、破産法(否認要件、賃料対抗力)、信託法(倒産隔離)、税法(真正売買基準、個人借入金利子通算、事前確認制度<ノーアクションレター>導入)の見直し等が挙げられる。

第三に、不動産業界や証券界など縦割りの業界が互いに牽制し、消費者に投資対象商品が提供されない点も問題だ。現在の資産流動化の制度は、縦割りの業法に基づいているが、生きた経済の資産は役所と無関係に存在し、その流動化は業種の垣根を無意味化させる。例えば、不動産特定事業商品の有価証券指定、同事業者の拡大、同事業者のSPC商品引受販売解禁、投信への不動産組み込み、商事信託自由化等を行うことで、相互参入を認めていくべきだ。今や個々の業界に属するプロたちも、既存業界による縛りを窮屈に感じ始めている。資産流動化のような未知の新分野こそ、異業態間の相互参入と競争が活性化のカギである。

第四に、不動産の魅力を高める都市・建築規制の緩和については、地方公共団体の動きが鈍いとの声が多いが、現場の権限、財源不足問題を放置して地公体を責めるのは酷だ。モデル事業によって、権限や財源見直しとセットで重点地区を設け、抜本的な都市、建築規制緩和計画の策定と達成度チェックを行うべきだ。

また、整理回収機構と共同債権買取機構は「日本最大の不良債権と担保不動産の宝庫」である。特に前者は、地公体と連携し、担保不動産の価値を高めつつ市場へ円滑に供されるよう全力を尽くすべきだ。米国RTC(整理信託公社)が行ったエクイティ・パートナーシップ(不動産ファンドの持分売却形式による再開発)手法や、これに対するモラルハザードを惹起しない範囲内での公的信用補完制度の拡充が必要だ。