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日本経済新聞「日経オピニオン」 1999年3月29日

企業の不良資産処理急げ
債務の株式化で再生を

日本経済新聞 [日経オピニオン] 平成11年3月29日付

日本経済新聞
公共投資の拡大、銀行への公的資本注入、そして日銀のゼロ金利誘導などの政策効果で、景気の先行きに期待感が出てきた。個々の企業をみてもソニーや東芝などわが国のリーディング企業で抜本的な事業再構築が始まった。トップグループの変革と同時に、第2分類債権の対象企業でも、銀行国有化や資本注入を契機として債権放棄などの過剰債務解消の動きが進み出した。
だが、このやり方で90兆円近い「銀行の不良債権」の裏側にある「企業の不良債務」を解消できるのだろうか。7兆円強の資本注入が、7兆円強の債権放棄で終わりはしないだろうか。そもそも、国有化や資本注入は、傷口に最初に貼るばんそうこうだ。接着力が弱まれば、傷口は再び開く。資本注入・ゼロ金利のもとで、我々は経済再生に向けて、抜本的解決を迫られている。

金融再生委員会は「不良債権処理は償却・引当てにより今期で終了」と発表したが、本当にそうだろうか。確かに昨年よりも資本注入額は増えた。だが不良債権の一括売却や流通市場の整備などを通じ、不良債権をバランスシートから切り離すという抜本的処理は部分的にとどまり、担保不動産の価値をよみがえさせる再開発はほとんど進んでいない。金融再生委も銀行も、国有化と資本注入のばんそうこうだけで金融システムの健全化はできないと分っているはずだ。
金融システムの健全化は、日本経済の健全化と同義語だ。バブル時の担保不動産や製造業の過剰設備を含め、収益を生まない企業資産を処理して初めて日本経済は健全になる。このサプライ(供給)サイド改革が決め手だ。我々政治家は「痛みを恐れず手術を行えば必ず元気になる」と国民に説明する義務がある。事実、手術が進みそうな日本企業に対しては海外投資家も熱い視線を向けている。日本経済の潜在力は世界で依然トップクラスだ。だから企業に「真のあく抜き」を行うための仕掛けを準備すれば、経済全体も必ず動き始める。昨年来、担保不動産の市場への放出と、政府の信用補完を活用した都市再開発の同時実現を主張しているのもこのためだ。

供給サイド改革の糸口となる過剰債務の解消も、銀行の債権放棄では産業の潜在力を十分に生かしきれない。有力な道具の一つは、英国で70年代以降企業再建支援のため実施された「ロンドン・アプローチ」や米国のメーシーズ百貨店倒産時に用いられた「債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)」だ。
債務を株式と交換するこの手法は、債務者の債務負担軽減と債権者の回収率上昇という相反する要請を、企業の将来価値を示す株式を用いて両立させる。構造改革で企業がよみがえれば、債権者も株価上昇の果実を得る。だからサプライサイド改革の早道だ。
これを実行するためには昨年廃案となった不動産関連権利等調整委員会の復活や再建型倒産法の見直し、商法・税制改正、ニューマネー供給促進策など解決すべき論点は多い。しかし公的資本注入などで得られた時間の中で素早くサプライサイド政策を実施しないと、日本経済は再生の機会を失う。今こそ、過去の行きがかりや、縄張り意識を捨て、各界の力をサプライサイド改革に結集する時である。