トップ > マスコミファイル

マスコミファイル MassMedia File 塩崎やすひさに関する取材、記事をご覧いただけます

  • 全タイトル一覧
  • バックナンバー

現代ビジネス-2012年7月27日掲載記事

「自民党的政治」からの脱皮なくして政権奪還はあり得ない! 自民党は国民に見限られた原因を直視して変わらなければならない(現代ビジネス)

 永田町ではいよいよ解散・総選挙が近いのではないか、というムードが強まっている。私は現在、自民党では報道局長という役職で、毎週役員会でメディア各社の世論調査の結果などを報告する役回りを担っている。ここ数週間の各社の世論調査の数字を見ていて、非常に危機感を覚えているのだが、残念ながら自民党内には楽観ムードが漂っているように感じられる。

 私の言う危機感とはこういうことだ。

 テレビ、新聞、通信社11社の世論調査の平均値をみてみよう。昨年9月の野田佳彦内閣発足以降、民主党の支持率はほぼ一貫して下げている。26.0%だったものが、消費税増税法案が衆議院を通過した6月末には14.5%に下がっているのだ。

 本来なら、民主党の支持率がこれだけ低下すれば、野党第一党である自民党の支持率がその分上がってもおかしくない。ところが、この間、自民党の支持率も下落傾向なのである。同じ平均データでは、昨年9月に26.1%だった自民党の支持率は、6月末には16.9%になっている。

 民主党の支持率低下の理由は容易に想像できるだろう。国会論戦を通じてマニフェスト(政権公約)の破綻が鮮明になるなど、民主党の酷さを国民が認識した結果であることは間違いない。だが、自民党がその「受け皿」に全くなっていないということを、数字は如実に物語っているのだ。

 さらに細かくみると、2月から6月の消費税増税法案通過までは自民党の支持率がわずかながら上昇傾向にあった。民主党も4月から6月までは支持率をやや戻している。消費税増税は辛い政策だが、いずれやらなければならないと思っている国民が多いのだろう。「決められない政治」から一歩踏み出したことを評価したのかもしれない。

 ところが、消費増税法案通過(6月26日)後から7月中旬にかけての数字を見ると、両党の支持率は急落。ことに民主党よりも自民党の支持率低下が目立っているのだ。それも、民主党よりも自民党の方が下げ幅が大きい、というケースの方が多いのだ。

 谷垣禎一総裁も記者会見で「自民党と民主党が裏で談合して増税などを決めているように見られているのではないか」という趣旨の発言をしているが、まさに自民党への不信感が支持率の低下の深さにも幅にも表れているように思えてならない。

「古い自民党政治」とは明確に決別する

 これまで自民党は、国会審議の過程で、「民主党がいかに酷いか」という点を追及する内容の質問を中心に民主党内閣を攻撃してきた。だが、民主党よりも自民党の方が下げ幅が大きい、という直近の世論調査結果に表れているように、国民の目から見れば、民主党の酷さは分かっているが、それでもまだ民主党は新しく、若い政党として将来の可能性を感じさせる分、旧世代政治家が復権し、55年以来のいかにも古臭い政治が再び台頭してきている事を感じさせる自民党よりは、まだマシだ、と見ているように感じる。

 自民党が民主党批判の受け皿になるには、相手のマイナスを強調しているだけでは到底無理だろう。新しい自民党が何をやるのか、今日本にとって何が必要と考え、どのように実現しようとしているかを、国民に明確に示さなければならない。消費税増税を唱え、民主党の社会保障制度改革案の中身の無さを訴えるだけでは、国民に「自民党も民主党も一緒ですね」と見られてしまう。

 ただ、その前にまず真っ先に自民党が行うべきは、なぜ3年前の総選挙で、国民から見捨てられ、政権交代となったのか、もう一度原点に立ち帰ってよく考え、その根本原因をなくし、新たな政党に生まれ変わる事だ。国民の多くは、かつて「もう見たくもない」と思われた「古い自民党政治」とは明確に決別し、全く新しい政党にフルモデルチェンジした事をまず示してほしい、と思っているはずだ。それに応えるためには、党改革による「自民党的政治」からの脱皮が必須だ。

 そして、続いて国民に示すべきは、これまた「自民党的政治」の延長線上にあった、古めかしい国家統治スタイル、すなわち国家の意志決定メカニズムの転換だ。それは同時に、自民党と霞が関官僚機構との距離感と関係性であり、天下りを含め、霞が関とどのような新しい関係を結んで国家運営をするのか、そのための具体的な公務員制度改革や行政改革の提案を通じて、この点を明確にしなければ、その他分野での具体的政策提言をいくらしても、国民は自民党に全く見向きもしないだろう。

 この入り口での国民によるテストにパスして、初めて自民党は再び政権を任せられる政党としての認知を受けることとなるのだ。そして、そうした「新生自民党」が再度政権を担うならば、「一体私たちの暮らしをどうしてくれるんだ」という国民の次の問いかけに、自民党は明確に答えなければならない。

国民経済の担い手ごとの「お財布」を潤す

 自民党は、これまでとかく国民各層の「草の根」の声を聞く事を怠り、「友好団体」だけから意見を聞くことを「国民の声を聞くこと」と勘違いしてきた。要は、大企業や業界団体、役所など「供給サイド」から偏って意見を聞き、消費者、NPO、患者など、サイレントマジョリティーの声にはあまり耳を傾けずに政策を決めがちだった。どぶ板選挙の際に「肌感覚」で吸収する声が数少ない「需要サイド」の声だったかも知れないが、その声が全体益に合致した政策として確実に実現される仕組みは持ち合わせていなかった。

 例えば医療政策については、厚労省、医師会、歯科医師会といった「供給サイド」の意見を中心に聞き、患者団体のような「需要サイド」を党本部に招いたことは少なかった。自民党は本当の国民の声、地域の声を吸い上げ、政策に仕立て上げる力がまだまだ足りない。「供給サイド」の意見ばかり尊重して「草の根」を軽視してきた結果、政権から脱落し、さらに今そうした「供給サイド」の団体の多くは、野党である自民党と距離を置きつつある。

 私は、自民党が訴えるべき事は、そうした「草の根」、すなわち「需要サイド」も含めた、国民経済全体の向上、もっと端的に言えば、「皆さんの暮らしをより豊かにします。少なくとも、絶えず前方に希望の明かりが見えるようにします」の一点に尽きると思う。即ち国民経済の担い手ごとの「お財布」を潤す、ということだ。そのためには、あらゆる歳出改革、行政改革を通じた税金のムダ撲滅を図りながら、経済を成長させ、強くする。当然、経済が縮小していくデフレからは何としても脱却しなければならない。結果、消費税等の増税の上げ幅も最小限まで小さくできる。

 民主党の「党是」とも言えるバラマキ政策では、実は国民全体の暮らしは良くならない。そもそもバラマキながらの増税では、国民負担増は際限がないし、バラマキを得る人と得ない人の不公平が生じ、努力しない人が努力する人よりも有利になる逆転現象が生まれるだけだ。正直者が馬鹿を見てしまう。国による手当や支援は必要だが、それらは「自助、共助、公助」の原則に沿いながら必要最小限にとどめ、努力している人が報われ、より努力できるようになるような施策を講じ、分配するパイを大きくする政策へと日本は舵を切らねばならない。

着実に出来ることから断行する自民党

 政府は「日本再生戦略」を発表したが、それを取りまとめた国家戦略会議に法的な権限はなく、実行力に乏しい。内容も、政権交代以降何度も打ち出してきた「新成長戦略」の焼き直しでしかない。小泉純一郎内閣や安倍晋三内閣では、法律に基づいて設置され、強力な権限を持っていた経済財政諮問会議が機能した。国家戦略会議は似て非なるもので、再生戦略も絵に描いた餅に終わること必至だ。

 今こそ、国民の暮らしをより豊かなものにするために、絵に描いた餅ではない、具体的な改革、政策の提示が必要だ。政権交代に向け、個別具体的政策の実現方法も明示していくべきだ。そのために、私は三つ提案したい。

 まず一つ目は、「民主党バラマキ政策撲滅PT」を立ち上げ、自民党政権時代の歳出より10兆円以上も増えてしまった民主党政権下の歳出構造を徹底検証し、生活保護費や高校無償化予算など、バラマキ政策に切り込むべきだ。

 二つ目は、自民党総裁直属の「自民党・成長戦略実行本部」を立ち上げ、国レベルの成長戦略の提言を踏み込んでどんどん行うこと。各都道府県、市町村の党支部組織にも実行本部の支部的組織を置き、地方議会での与党の立場があればなおさら、それを踏まえた政策提言、実行を「成長戦略都道府県・市町村実行本部」において担っていく。

 三つ目は、議員定数削減のための独自議員立法を提出するとともに、「自民党・行革断行本部」を設け、党本部は国レベル、県連等は都道府県・市町村レベルでの行革断行体制を作り、「全国一斉行革」を推進し、公益法人への税金のムダ遣い、天下りなど、中央、地方を問わずムダ削減を断行する。

 「着実に出来ることから断行する自民党」を国民に見せることで、絵に描いた餅だけ大きく、何も実行できない民主党との差別化が果たせる。私も党内で同僚議員に呼びかけ、行動する同志を募っていきたい。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33079

バックナンバー

Governance Q 対談記事
Governance Q-2023年5月9日掲載記事
Governance Q 対談記事
Governance Q-2023年4月20日掲載記事
世界のサカモト、僕の坂本 前衆院議員塩崎恭久さん 坂本龍一さん追悼
愛媛新聞ONLINE-2023年4月14日掲載記事
開始延期を支持した「大臣談話」公表の真意―塩崎恭久元厚労相に聞く
日本最大級の医療専門サイト m3.comインタビュー記事
FRIDAYインタビュー記事
FRIDAY-2023年3月22日掲載記事