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現代ビジネス-2012年7月10日掲載記事

ボールは国会に投げ返された。国会事故調の報告書に全力で向き合い、その提言を如何に実行に移していくか、これからがスタートだ!(現代ビジネス)

 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会、いわゆる「国会事故調」は7月5日、衆参両院議長に報告書を提出した。国会の下に民間人による調査委員会を設置するという憲政史上前例のない取り組みだったが、「おおむね6ヵ月」という限られた時間の中で、これだけの報告書をまとめ上げたことに敬意を表したい。

 だが、この報告書で原発事故問題が幕引きされたわけではない。むしろ今後、報告書を受け取った国会が、その結論と提言に如何に向かい合っていくのか。むしろ、これからが本番だと言える。

 7月5日木曜日の午後1時、衆参両院議長、議院運営委員長ら両院幹部が居並ぶ中、国会事故調の黒川清委員長が報告書を両議長に提出した。東日本大震災直後から国会事故調の設置に情熱を注いできた私もその場に同席した。

 全く前例がないが故の暗中模索の立法作業から、委員の人選、委員の対面での意思確認、就任要請などのため、福島や沖縄など、各地を訪ねて回った事など、この1年あまりの日々を思い出しながら、感慨深くその手交式を見守った。

 報告書は「福島原子力発電所事故は終わっていない」という書き出しから始まる。「想定できたはずの事故がなぜ起こったのか」という根本問題を突き詰めた報告書の結論は、前例の踏襲や組織の利益保持が重要な使命となり、それが国民の命を守ることよりも優先されたことによる「人災であるのは明らか」だというものだ。

 当然のことながら、私たちは二度と同じ過ちを繰り返してはならない。そのためには何を変えることが必要なのか。委員会から国会にボールが投げ返された、ということである。国会として次にどういうアクションを起こすべきなのか、以下、考えてみたい。

「弱い国会」の「足腰」を鍛え直せ

 私が、昨年の5月から半年以上にわたって、国会事故調の設置を求めて動き回った結果、与野党が一致して成立に漕ぎ着けた根拠法「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法」の第1条の目的規定には、事故原因究明など、過去の原因調査、経緯解明部分に引き続いて、こう記されている。

「原子力に関する基本的な政策及び当該政策に関する事項を所掌する行政組織の在り方の見直しを含む原子力発電所の事故の防止及び原子力発電所の事故に伴い発生する被害の軽減のため講ずべき施策又は措置について提言を行い、もって国会による原子力に関する立法及び行政の監視に関する機能の充実強化に資するため、国会に、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会を置く」

 つまり、この事故調の最大の使命は原因究明と同時に、「何をどう正すべきか」の提言を行うことにあった。「事故の原因究明」というと、往々にして「犯人探し」に傾斜するきらいがある。もちろん関係者の責任を明らかにすることも重要だが、それだけが今回の眼目ではなかった。「二度と福島原発のような悲劇を起こさないために、国会が今後何をすべきか」ということを、明確に指摘・提案してもらうことにあったのだ。

 今回、報告書で事故調は7つの提言を行っている。概略すれば、以下の通りだ。

(1) 規制当局を監視するため、国会に常設委員会等を設置すること
(2) 政府の危機管理体制に関係する制度について抜本的に見直すこと
(3) 政府は住民の健康と安全を守り、生活基盤を回復するため必要な対策を実施すること
(4) 国会は事業者が規制当局に不当な圧力をかけることのないよう監視すること
(5) 新たな原子力規制組織は、独立性、透明性、専門能力と責任感、一元化、自立性を満たすこと
(6) 原子力法規制を抜本的に見直すこと
(7) 国会に、原子力のみならず様々な政策課題毎の、民間委員による独立調査委員会を設けること

 この7つである。

 このうち、5と6について私は、昨年来、公取委のような独立行政委員会方式の原子力規制組織を設置する「原子力規制委員会設置法案」の取りまとめに奔走してきた。政府案への対案として国会に提出、政府・与党は、組織のあり方に関しては私達の案をほぼ全面的に「丸飲み」、その他事項を含め与野党の修正協議を経て6月20日に成立した。国会事故調報告書の提案内容と概ね合致した組織ができる法律になっていると思う。

 一点、推進官庁から規制組織に出向した官僚を出身官庁に戻さない「ノーリターン・ルール」に関して、組織の発足当初より例外なく適用することを提言では求めている。細野豪志・環境相はさっそく後ろ向きな事を言っているが、安全を優先させるために、厳格適用すべきだという点は、真摯に受け止めるべきだろう。

 2、3についても私達は日本版FEMA(連邦緊急事態管理庁)の創設など、事故調の提言と同様の政策を政府が取るよう法律の付則において定めている。当然、国会の責任として、厳しく政府を監視、追求し、政府に行動を促していかなければならない事は言うまでもない。主に内閣委員会や環境委員会で担当する事項になると思われる。

 残る1、4、7の改革提言が、国会に直接投げられた宿題だ。まさに、「行政の一権支配」を許してきた「弱い国会」の「足腰」を鍛え直せ、ということではないか。提言を含む報告書を受け取ったまま店晒しにしたり、お蔵入りにさせたりすることは断じて許されない。「事故は終わっていない」のであり、今後、同じ過ちを繰り返さないために、改革に取り組むことを国民は強く求めている。

受け皿となる組織を至急作る必要がある

 報告書を受理した両院議長は、自らの諮問機関である議院運営委員会や、別途設ける諮問会議などに諮ることで、これらの提言に具体的にどのように取り組んでいくかを明らかにする責務がある。私は現在議院運営委員会のメンバーでもあるので、提言をどう実行していくのか議論を提起し、繰り返し、しつこく、国会としての行動を求めていく。

 国会はこれまで、民間からの提言について十分に対応してこなかった過去がある。国会に寄せられる請願は会期末に一括して事務的に処理され、議員は十分に審議する余裕もない。議院内閣制の日本では、与党の決定のみが尊重され、現在のような衆参の「ねじれ」状態がない限り、野党の意見はほとんど取り入れられない。まして民間人が集って作成した請願書など、国会で受け入れる余地は全くなかったのである。

 だが、今回の国会事故調の報告書の意味合いはまったく異なる。国会が法律によって民間人専門家に調査をお願いをしたもので、報告書や集められた資料はすべて国会、すなわち国民の財産となる。国会外の民間人からの請願とは全く訳が違う。

 報告書の提出をもって委員会はすでに解散し、役割は終わったが、報告書における事故原因の解明の結論と提言を受けて、国会がどのような具体的な行動に移すかの法的な定めは特にない。まさに両院が知恵を出し、政治決断によってその受け皿となる組織を至急作る必要があるだろう。

 7月5日の事故調の記者会見で、委員の蜂須賀礼子さんが語った言葉が、私の胸に突き刺さった。

「今も私は避難生活をしています。まだ生活を取り戻していません。報告書の提言を、国会議員がいかに実行してくれるのか、私自身が訴えていきたい。今日が私のスタートです」

国会は報告書に全力で向き合うべき

 当初、福島の実態をつぶさには知らなかった黒川委員長以下の委員を、被災者・被災地の代表として、「国民のための調査・検証」に導いたのは、他ならぬ彼女だった。今回の事故では、政府の事故調や東電の事故調なども調査を行った。

 被災地の行政代表は政府事故調におられたが、一般被災者の代表が委員として入っていたのは国会事故調だけだった。地元で花屋を営んでおられた蜂須賀さんは当初、自分は専門家ではない、と就任に戸惑いを見せていた。また人選を進めた国会議員の中にも、被災者を入れることを訝る人もいた。

 しかし、委員会での発言や追及ぶりを傍聴していて、彼女の強い覚悟と決意が伝わってきたものだ。また、国会事故調の報告書が読み易くなっているのは、蜂須賀さんが被災地の方々が読めるよう、難しい専門用語はできるだけ避けるように要望されたからだ、と聞いている。

 私も初雪の会津若松まで出向いて就任をお願いした甲斐があった。その蜂須賀氏が「これからがスタートだ」と言っているのである。まさしくこれこそが、被災者と被災地の代表の声であり、国民の声であろう。

 事故調が報告書を出したから、それでもうおしまい、としたならば、国会は責任を半ばで放棄したことになるだろう。国民の声、被災地の声にしっかりと応えるためにも、国会はこの報告書に全力で向き合うべきだろう。私も国会を構成する議員のひとりとして、強くそれを主張していく覚悟である。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32981

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