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エコノミスト-臨時増刊 11月1日号

三つの柱で日本の会計制度を改革する

 自民党の金融問題調査会の中に「企業会計に関する小委員会」がこの8月に設置された。委員長の塩崎恭久・参議院議員にインタビューした。


先進国は民間中心の常設組織で

―小委員会設置のきっかけは。
塩崎
 第一のきっかけは、相次いだ金融機関の破綻です。例えば、長銀だってあれだけ債務超過ではないと言っていたのに、蓋を開いてみたら、3兆8000億円にもなっていた。ところが、監査法人は決算について監査証明を出している。
 決算は公認会計士協会の実務指針に基づいてやっている。私は97、98年に大蔵省の政務次官をやった。不良債権の引き当てが問題になった。実務指針は企業会計審議会の意見書に基づいて作っているわけだから、大蔵省も責任を負わなくてはならない。ところが、免許権者なのに最後は実務指針に逃げる。大蔵省は「局あって省なし」というけど実務指針は旧証券局が作り、銀行の決算を見ているのは、旧銀行局だから全くちぐはぐのことを言って、人のせいにするようなところがあった。変な話です。
 また、数年前、外資系金融機関の若手のデリバティブ専門家から「"とばし"など日本企業の決算操作の手伝いは日常業務」と聞きショックを受けた。「日本の会計基準なら母国ではできない会計操作で商売ができる」ということだ。日本の会計制度がいかに信用できないものか分かった。
 会計制度は単に、「会計」の問題ではない。「会計」の信頼を取り戻さないと、ジャパン・プレミアムなどによって資金調達コストが高くなり、その分、商品とかサービスに乗っかって国民が払うことになる。そうならば政治が方向性を示すことが必要だ。それを金融問題調査会長の越智通雄先生に申し上げたところ「委員長をやって問題を整理し、臨時国会のころまでにある程度の方向性を出せ」となった。
―これからどういう作業をするのか。
塩崎
 三つの柱を立てている。
 第一はルールを作る主体の拡充・強化。今は、会計基準の設定主体は企業会計審議会ですが、常駐している人なんていない。大蔵の役人が、パラパラといるだけ。これじゃいくらなんでもひどい。先進国の動きを見ると、民間人を中心とした常勤のスタッフを抱えた常設の組織でやっている。最先端の話は民間の人じゃないと分からない。最たる例はFASB(財務会計基準審議会)です。米国SEC(証券取引委員会)から権限を委譲されてやっている。英国もドイツもそうです。
 第二はルールの執行と監督主体の問題。今は、企業の有価証券報告書を本省でなく、財務局が見ている。形式的で十分にチェックできていない。本当はその時点で"とばし"などが分かってしかるべきなんです。もう一つは資本市場で不正取引などを監視している証券取引等監視委員会。ここも実は貧弱で大臣に対して建議勧告を行う、場合によっては告発する、という程度の感じだ。米国では、SECが有価証券報告書のチェックもし、資本市場もチェックしている。
 また、省庁再編で企業会計に関することは大蔵省から金融庁にいく。そうすると、金融庁に金融の監督当局と企業会計の設定などにかかわる権限が一緒になる。それが本当にいいのかなという問題もある。
 会計基準というのは、何も金融機関だけの話ではない。業種横断的に関係がある。金融行政を担当しているところがやるというのは、変な話かもしれない。米国ではSECは議会だけにぶら下がっており、行政府とは関係ない。その辺についても議論の余地があると思う。
目的も使命も書いていない法律
塩崎
 第三は、公認会計士、監査法人の責任、役割の明確化。公認会計士法という法律は昭和23年にできたものです。その時から比べれば、時代はまったく変わっている。そろそろ全面的に見直すべきじゃないかという思いがする。普通、法律には弁護士法のように最初に「使命、目的」がくるんだけど、公認会計士法にはそれすらもない。
 目的、使命も何も書いてない法律に則ってやっていくというのは、いっぱしの大人としてなかなかつらいものがあると思う。自信を持ち、堂々と胸を張って会計監査をやっていただきたい。誰のための会計監査なのかというのも、こういう中で議論になると思う。今までは、長年あの人にお世話になっているからということで、中身もろくろく見ずに監査していたという話すら時々聞かれる。ホントかウソか知りませんけどね。
―これまでどういう活動を。
塩崎
 今は、関係する団体などから意見を聞いている。先日は経団連から聞きました。経団連が特に問題としているのは、いわゆるレジェンドクローズ、警告文書です。この3月期決算からビッグファイブ(世界五大会計事務所)の要請で監査報告書を英語に訳す場合、「日本基準に基づいて作られたもので、国際的に通用するものとは異なる」と一筆入れないといけないことになった。SEC基準でやっている会社は別ですが。日本以外では、韓国やインドネシアなど経済危機に見舞われたアジアの数ヵ国だけに、同様の措置が求められている。非常に不本意ということで、経団連も会計基準の改革に乗り気になっている。
―これからの方針は。
塩崎
 会計制度といのは、生きている経済の物差しですから、常に見直していく必要がある。しかし、今はそんな体制になっていない。例えば年金会計のことだってひどいんですよ。来年度からやらなきゃいけないのに、実務指針がなかなかできない。こんなばかな話はない。それはなぜかといえば、全然、機動的に動かせる体制じゃないからですよ。いずれにしろ、先に述べた三本柱は全部必要です。そうしないと、日本は世界から信頼を回復できません。

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