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毎日新聞-2008年7月19日掲載記事

近聞遠見「塩崎恭久の『おかしいぞ』」(岩見隆夫)

 13日朝、NHKテレビの政治番組<日曜討論>で、大田弘子経済財政担当相と浜矩子同志社大教授の女性2人が向かい合い、丁々発止の経済論戦を繰り広げていたときだ。大田が、
 「秋には税制の抜本改革を・・・・・」
 と言いかけると、浜がぴしゃり、
 「税の話は倦き(秋)た。秋まで待っておれないですよ。」
 と切り返した。巧みなシャレ、迫力もあった。
 税制改革だけではない。ほとんどの懸案が先送りか未消化だ。福田康夫首相は早々に夏休みに入り、議員の海外旅行はピーク、政界は時間が止まったかのようである。
 危機感がないわけではない。自民党の中堅議員の一人は、
 「夏休みも旅行も返上して、やるべきことをやらないと大変なことになる。選挙区に
帰ると、いまでも支持者が『死ねというのか』とえらいけんまくだよ。あれ(後期高齢者医療制度問題)は収まったと党の執行部はみているらしいがウソです」と言うが、大勢はゆるんでいる。司令塔もなく、タガがはずれたみたいだ。
 穏健派とみられている塩崎恭久元官房長官は、10日付のメルマガ<独り言>で、思いあまったのか、次のように警鐘を鳴らした。<再強化が必要な政権のガバナンス(統治能力)>という題がついている。
 <これまでの自民党は、どんな問題でも侃々諤々の議論のすえに何とか結論にたどりつく、という政策決定における民主的プロセスを大事にしてきた。
 しかし、このところ、国民がもっとも重要だと思っている社保庁改革、年金記録問題、後期高齢者医療制度に関してまでも、党内の議論がほとんどなされない。
 いわゆる「ヒラバの議論」がないまま政府の正式な決定が行われたりする。このままでは国民の心は政府・与党から離れたままになってしまう>
 ヒラバは平場、一般の人たちの場、という意味。つまり、一般議員同士の議論が欠落し、党によるチェック機能が怪しい、と塩崎は警告しているのだ。そうだとすれば、事態は深刻である。
 前日の9日、塩崎と茂木敏充元国務相、世耕弘成元首相補佐官ら有志議員が舛添要一厚生労働相を訪ね、先の社会保険庁、年金、高齢者医療について緊急提言し、具体的な対応を求めた。舛添は
 「必ずやりたい」
 と答えたが、党内はあまり動いていない。
 塩崎ら17人の衆参議員は、<国民の安心を実現し、政治への信頼を取り戻す会>(通称、リゲインの会)をつくったばかりだが、この名称も異常といえば異常。安心、信頼が失われている現状を告白しているに等しいからだ。
 なにかおかしい。塩崎、茂木、世耕らは若い安倍晋三前首相を勇んで担ぎ、政権の要職に就いた面々だ。夢なかばに挫折した悔しさがある。現政権が微温的に映る。しかし、それだけではない。
 「いまの自民党は戦意喪失したみたいだ」
 と塩崎は言った。待ったなしで、1年以内に衆院選は確実にくる。こんな状態で自民党はどうするのだろう。
 03年に「日本復活」(プレジデント社)という本を塩崎は出した。
 <日本は死んだ。政治家を10年続けて、私はそうおもうようになった。・・・・・責任を負うのは政治である。だが、日本社会の中で何よりも政治が迷走している。>
 とそのなかで書いている。5年を経て、迷走の度合いはさらに深まった。
 早く、誰かが風穴をあけなければならない。(敬称略)

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