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日本経済新聞夕刊-2008年4月17日掲載記事

こころの玉手箱C「掛け軸〜茶の心、知るほどに奥深く」

 1986年。日銀を辞めて松山に戻ってから茶道裏千家の活動に参加した。裏千家と松山の関係は深い。先代家元は戦時中。特攻隊で松山にいた。その家元の内弟子「業躰さん」の一人が松山におり、そのご縁もあって私は青年部の会員に加えていただいた。
 
 お茶席は招かれる場合も主催する際も心配りを大切にする。俗世を離れ、立場の違いを離れ、亭主が心を込めて調えたお席で一服のお茶を楽しむ。それ以外の一切は不要。時計は外し、貴金属や香水も慎むのが作法だ。
 
 お茶会の主催は、もてなしの心が試される。時間をかけて趣向、道具を準備していく過程はしんどいが楽しい。茶席にはストーリーが重要で、時季に応じた取り合わせを考えたり、自然をあしらったり、自分の時々の心情を織り込んで空間を演出していく。

 三年前の夏に催した茶席では、床の間に坐忘斎家元が書かれた「緑水繞青山」の軸を掛けた。「一条の緑水青山を繞る」という禅語の一節で、澄み切った水が青山を繞って流れる日本の美しい風光に自分も社会を潤す清流になりたい、という思いを重ね合わせた。

 趣向の一つとしてお茶を点てるのも運ぶのも男ばかりのお茶席を催し、大いに受けた。絽の着物に袴姿がそろって面白かったようだ。女性の着物に比べて袴は座った時に幅を取るので、お互い裾を踏んで引っくり返らないよう裾捌きに気をつかった。

 お茶席は準備や片付けを担当する裏方の「水屋」で働く多くの人たちの支えがあって初めて成り立つ。お茶席の様子をうかがいながら茶わんを温め、菓子を用意し、お茶を点てていく、その緊張感あふれる捌きが静謐で調和のとれた茶席を支えている。

 茶道具の保存方法も自然の摂理に基づいた理由があり、伝統の知恵が詰まっていて知るほどに奥が深い。お茶を通じて歌や古典、陶芸や塗り物、生け花や着物の様々な文化にも出合った。日本の美の豊かさに驚かされる。一青年部会員として始めた私だが、いつの間にか、茶名「宗久」をいただくまで月日が流れた。

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