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朝日新聞-2007年11月7日掲載記事

欧米基準押しつけ防ぐ-塩崎さん、温暖化対策は出遅れたの?-

 地球温暖化対策の国際的な枠組みで、温室効果ガスの排出量について先進国全体で90年比5%削減を求めた京都議定書の約束期間が、来年から始まる。12月には「ポスト京都」を占う国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)がある。排出権取引の国際ルールを主導する欧州連合(EU)は、京都議定書を離脱した米国と急接近。来夏の北海道洞爺湖サミット議長国の日本の出遅れ感は否めない。安倍前政権下で温暖化対策のまとめ役を務めた塩崎恭久・元官房長官に聞いた。

――温暖化対策を進めるため、日本政府はどんな姿勢をとるべきか。
 「環境税導入の是非をめぐっても、推進派の環境省と慎重派の経済産業省が不毛な対立を続けるばかりだ。日本が洞爺湖サミットを取り仕切るためには、議論より答えを出すことが大事。そのためには、官邸主導の姿勢が欠かせない」

――安倍前政権下で官邸主導で発足した「4大臣会合」の役割は。
 「官房長官を中心に、経産、環境、外相を加えた布陣を敷くことで、それぞれの役所を追い込み、省益を超えた戦略づくりをスピードアップするねらいがあった。日本の長期戦略『美しい星50』を公表し、独ハイリゲンダム・サミットでの合意づくりに貢献できたのも官邸主導の政治の結果だ」

――福田政権の対応をどう見るか。
 「10月下旬のCOP13の準備会合の前に4大臣会合を招集しなかったのは残念だった。官邸の司令塔機能を強める必要がある。対外交渉と国内を調整する機能を併せ持つ対策室を設置するのも一案だ」

――EUは米国とカナダ11州と排出権取引市場の共通化へ動き出した。
 「世界の動きは速い。何らかの形で国際的な排出権取引市場の仕組みづくりに参加すべきだ。日本では経団連などが排出権取引に後ろ向きだが、EUと米国が組むことを想定し、素早く動ける態勢を整えた方がいい。米国が欧州と国際会計基準の共通化で手を結んだ先例から学ぶべきだ。基準の押しつけは日本にとって高くつき、国民の負担が大きくなる」

――日本は「世界の排出量を現状より2050年までに半減」との削減目標を提案したが、自国の目標も出すべきか。
 「EUは20年までの削減目標を提案している。日本も洞爺湖サミットまでに中長期の独自の数値目標を出すのが望ましい。その前提として温暖化対策推進の国民運動を広げたい。産業界だけでなく、オフィスなど業務部門や家庭部門の排出を抑える努力も不十分だ」

――日本は途上国支援のため、新しい「資金メカニズム」をつくると提案しているが。
 「途上国の経済発展を阻害せずに低炭素社会の実現を目指したい。洞爺湖サミットに向け政府のやる気を示すには、『資金メカニズム』にあてる別建ての予算を組むぐらいの覚悟が求められる」
(聞き手・稲田信司)

キーワード:「美しい星50」
 安倍前首相が今年5月に提案した地球温暖化に対する戦略。国際的には「クールアース50」として知られる。「世界全体の温室効果ガスの排出量を現状と比べ2050年までに半減」を世界共通の長期目標として提示。13年以降の「ポスト京都」の枠組みづくりに向け@主要排出国がすべて参加し京都議定書を超え、世界全体での排出削減につなげるA各国の事情に配慮した柔軟かつ多様性のある枠組みとするB省エネなどの技術をいかし、環境保全と経済発展とを両立するとの「3原則」を打ち出した。福田政権もこの戦略を引き継いでいる。