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週刊ダイヤモンド-2007年6月9日号掲載記事

"ポスト京都"のグローバルガバナンスを問う

主要排出国の参加が絶対条件
今は戦略的寛容が必要だ

5月24日、安倍晋三首相が「世界全体の温暖化ガス排出量を現状に比して2050年に半減する」との構想を明らかにした。"ポスト京都"の枠組み構築を探るハイリゲンダム・サミットでのEU(欧州連合)、米国との駆け引きにおいて、効果的な一手となるか。4月の日中、日米首脳会談をはじめとする温暖化外交のシナリオライターといわれる、塩崎恭久内閣官房長官に聞いた。

――「2050年に世界で半減」宣言の狙いは。
 ポスト京都の枠組づくりを短期的、中期的に議論するうえで、まず何が必要かという発想から、長期的な目標を設定した。
同時に、(京都議定書に批准しなかった、もしくは削減義務を負わなかった)米国、中国、インドなど主要排出国がすべて参加する枠組みであること、各国の事情に配慮した柔軟かつ多様性のある枠組みとすること、環境保全と経済発展を両立すること、という三原則を世界に提案した。議論が迷路に入り込んでしまったとき、ここに立ち返ればいいと思っている。
この「美しい星50」戦略は、今年1月の施政方針演説で表明した「21世紀環境立国戦略」の核となり、6月末にまとめ上げる「骨太の方針」にも、組み込まれることになる。

――基準年を明確にしていないのはなぜか。1990年以降に排出量が一気に膨張した中国など、主要排出国を交渉のテーブルに着かせるための、戦略的あいまいさか。
 ポスト京都を議論するうえで最も大切なのは、実質的に、より効果のある枠組みにすることだ。京都議定書で削減義務を負った国の排出量は、世界全体の約30%でしかなかった。京都の反省を生かすためにも、できる限り多くの主要排出国や発展途上国に参加してもらわなくてはならない。意見の合わない国を最初から除外してはいけない。いわば戦略的おおらかさだ。

――EUは、京都議定書の約束期限が終了する12年末からブランクなく次の枠組み条約につなげることを最優先し、そのためには韓国、メキシコを除く、中国、インドなど途上国に対して削減義務を課さない、という妥協点を提示する、との見方がある。
 中国、インドは近いうちに、世界のトップレベルの排出国になるだろう。もはやこうした国の努力なしに、温暖化問題は解決できない。それはEUも十分に理解しているはずだ。
「美しい星50」では、排出の抑制と経済発展を両立させようという志の高い途上国への積極的支援も表明した。日本は一石を投じた、と考えている。

――ハイリゲンダム・サミットでの論点は。
 議長国ドイツが、どこまで米国の枠組みへの参加を説得できるか、だろう。始まってみなければわからないが、米国は具体的な数値目標を明確にする態度は取らず、EUも意味ある結論となるように、慎重にていねいに交渉を進めるはずだ。

――08年7月の洞爺湖サミットでは、議長国としてどのような成果を導き出したいか。
 現時点ではわからない。ただし、それぞれの国が、国内の問題を抱えており、それを抑えられもしない高いレベルを強要することで、高邁な長期目標が達成できなくなってしまっては、意味がない。勇ましくやればいいというわけではない。

――今年4月の日中・日米両首脳会談では、温暖化問題に時間が割かれ、米中首脳からこれまでにない踏み込んだコミットメントを獲得した。
 ブッシュ米大統領が、温暖化ガスの濃度を安定化させるという究極的な目的に言及したのは、このときの日米共同声明が初めてだ。また、日中が「13年以降の実効的な枠組みの構築に関する過程に積極的に参加する」とした共同声明を発表できたことも、大きな前進だった。こうした着実な成果を積み上げることによって、主要排出国の足並みが揃い始めると確信している。

――二つの首脳会談、「美しい星50」構想において、官邸のリーダシップが発揮された。
 なにより、環境立国に対する安倍首相の思い入れは強く、温暖化問題に取り組む姿勢は迫力に満ちていた。これを具体的政策に取りまとめようと、外務、環境、経済産業の三大臣と官房長官の四人で、何度も会合を持った。これまでのように、環境族と商工族とのあいだの利害調整に、いたずらに時間を費やすのではなく、答えを見つけ出して、前進しようという覚悟があった。

――京都議定書の6%の削減目標を達成すべく、鉄鋼や電力などの企業は自主行動計画に基づき、省エネ努力を積み上げ、排出権の購入も行っている。すでにエネルギー効率が高い日本が、さらに厳しい削減枠を課せられたことについて、産業界では不平等条約との不満もくすべる。
 京都議定書への批判はいろいろあるが、温暖化への問題意識を高め、枠組みを形成できたことの意義は大きい。だからこそ、次の枠組み議論にスムーズに向かうことができる。産業界の前向きな取り組みは今後ももちろん必要だが、家庭やオフィスビル等の排出量を減らすための国民運動を後押ししていく。

――環境税導入については、どう考えるか。
 経済的には一つの手段であるとは思うが、これによって実際に排出量を減らすことができるかどうかについては、十分検討が必要だ。かつては、自民党税制調査会でも議論したが、現在は行なっておらず、コンセンサスも固まりにくい。