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プレジデント 2004年4月2日号掲載

この3年が勝負!「不遇層」を必ず底上げする

 格差論争が注目を浴びるなか、二月初めに急遽、首相官邸に設置された「成長力底上げ戦略構想チーム」。同月半ばには早くも基本構想を打ち出したが、その内容と戦略チーム設置の意味を、同チームトップ(主査)を務める塩崎恭久官房長官に聞いた。

――なぜ、いま、成長力底上げ戦略なのですか?

 小泉時代には三つの過剰という問題がありました。雇用、負債、設備です。それらは小泉改革で解消したのですが、少し形を変えて別の問題になってきています。雇用では、過剰は解消されたがフリーターに代表される非正規雇用がとても増えてしまった。これは格差の問題に関わってきます。負債では、民間部門は減ったが、国と地方の債務は引き続き残っています。設備では、景気の回復により過剰感はなくなったが、縮小均衡した面もある。収益は上がるようになりましたが、それは必ずしも設備投資に向いていません。
 安倍政権の経済政策の基本は、人口減少時代にあっても経済の安定的な成長を目指す「新成長戦略」ですが、その一方で、いわゆる格差問題、ワーキングプア呼ばれる問題が出てきています。新成長戦略をそういう人たち全部が含まれるものにするため、「成長力底上げ戦略」が必要なのです。

――「底上げ戦略」と野党の言う「格差是正」は、どう違うのですか。

 野党は富裕層と貧困層との格差を縮めるべきだと言っていますが、我々の戦略は全体の引き上げを狙うものです。
 単なる「結果平等型」の格差是正策では、格差是正が対症療法的な当座の目標になってしまいます。いったい、何を原資にするのかもわかりません。
 戦略チームの狙いは、機会の最大化です。意欲のある人や企業が、みずからの向上に取り組めるチャンスを拡大する仕組みをつくることで、格差の固定化を解消していくわけです。
 
――「成長力底上げ戦略」の具体的な中身はどんなものですか。

 我々は「三本の矢」と呼んでいます。一つがジョブ・カードに代表される人材能力戦略。フリーターなど非正規雇用で、職業能力を向上させたくても機会に恵まれない人への訓練支援です。二つめが就労支援戦略。現在は公的扶助を受けているが就労して経済的自立を目指したいという人への支援。「福祉から雇用へ」ということで、母子家庭、生活保護世帯、障害者などが含まれます。三つめが中小企業底上げ戦略。中小企業における生産性向上と最低賃金引き上げのための政策をセットで考えようというものです。
 働きたくても働く場がない、もっといい仕事をしたい、キャリアアップしたい・・・・・・。自分の足でジャンプしようとしている人たちをバックアップする、というのが基本的な発想です。

――数年前まで続いていた「就職氷河期」に、正社員として就職できず、フリーターになった人は少なくありません。底上げ戦略の目玉として打ち出された「ジョブ・カード制度」は若者たちの期待に応えられるでしょうか。

 就職氷河期の先頭グループはいまや「年長フリーター」と呼ばれる年齢ですね。非正規雇用の立場では、より高い職業能力を形成する訓練の機会もなく、正社員になろうと職歴を並べた自筆の履歴書を持っていっても、企業はなかなか評価してくれません。
 そこで、企業の協力を得ながら、そういう人たちの研修の場を設け、訓練実績を書き込んだ"証明書"を政府で発行しようというのが、ジョブ・カード制度です。半年から一年間程度、トライアル雇用のような形で仕事をしながら、研修できるようにします。ジョブ・カードがキャリアを積んだ証明となるので、次の職場で同じ職種の経験があるにもかかわらず、またゼロから仕事を覚えさせられる、といった事態はさけられるようになるはずです。
 日本の企業は社内研修、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)に「熱心で、それは国際的にも大きな強みでした。その社内研修の共有化、社会化ができないか、というわけです。結婚・出産で家庭に入っていた女性が、もう一度会社に勤めようというときに、半年間OJTを経験し、ジョブ・カードを持って再就職に挑戦・・・・・・といった活用法も想定しています。イギリスではNVQ(National Vocational Qualification)という名称で制度化されており、四〇〇万以上が取得しています。

――ジョブ・カードが実際に機能するためには、企業の協力や意識改革が不可欠です。

 そのとおりです。ジョブ・カードはできるかぎり信頼性の高いものにしなければなりませんから、企業の率先した協力を得られるように、国としてどういう支援ができるか、考えていく必要があると思います。二〇〇八年度からは予算措置や税制面の支援を実施できるはずです。企業には研修で来た人の中に優秀な人材を見つければ、どんどん採用してもらいたい。それは企業にとって大きなメリットになるはずです。また、研修を実施する際には、業界ごとに統一したガイドラインをつくっていただきたいとも考えています。
 一方、本人が書いた従来の履歴書とジョブ・カードは違うんだという認識を、企業に持ってもらうことが大切です。ですから、これは全国運動にしていかなければと考えています。このことはジョブ・カード制度の問題だけにかぎらず、成長力底上げ戦略全体を推進するためにも必要なことで、そのために政府・企業・労働者が一体になった成長力底上げ戦略推進円卓会議を全国につくります。

――円卓会議のメンバー選びに注目が集まっています。

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