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政策提言

2005/03/03

会社法制の現代化に関する小委員会取りまとめ

平成17年3月3日
自由民主党政務調査会 法務部会商法に関する小委員会

 会社は、我々の社会に新たな富を創出し、日本経済を支える中核的存在であると同時に、その活動が社会全体と密接不可分な関係を有する社会的存在である。したがって、会社には、新たな富を創出するために企業経営の競争力・効率性を確保することと、わが国の社会的存在として我々の社会が尊重する価値である公正性を維持することとが求められている。つまり、会社の経営は、株主をはじめとするステークホルダーの真の利益と企業価値の維持向上とを目的とするものでなければならず、これに反する経営者等関係者の行為については厳しくその責任を問うべきである。会社法制は、このように現代社会において重要な地位を占める会社を規律する法制度であり、一般投資家を含む株主の利益が損なわれることのないよう、関係者全てにとって公平・公正な制度であることが基本である。また、会社法制の改正は、わが国経済の活性化のため重要な意義を有するにとどまらず、会社と関係を有するあらゆる存在に影響を及ぼすものである。
 当小委員会では、会社法制の改正の方向性につき、これまで種々の検討を加えてきており、すでに昨年6月16日には、「会社法制の現代化に関する中間取りまとめ」を行って、政府に対し、会社法制の現代化にあたり実現すべき事項を要請してきたところである。当小委員会は、会社法の法案化作業を進めることを了承するにあたり、政府に対し、「中間取りまとめ」における要請事項の実現を引き続き要請するところであるが、更に、以下の論点につき、十分に配慮・検討の上、実現に向けた最大限の努力をすることを強く要請する。


1.コーポレート・ガバナンスの強化
 企業のコーポレート・ガバナンスについては、企業の健全性・透明性確保の必要性に鑑み、中間取りまとめにおいて掲げられた事項に加え、以下の事項につき引き続き検討を進め、速やかに結論を得ること。

  • 監査役・監査委員会取締役について、会計に関する専門的な知識を有する者の選任を義務づけるとともに、これらの者の選任決議において、当該候補者が会計に関する専門的な知見を有する者である旨及びその内容等を開示することを義務づけること。
  • 社外取締役・社外監査役の要件について、経営者からの「独立性」に関する要件を加えること。

2.会計帳簿の記載・記録条件の明確化
 会計帳簿の記載・記録条件については、企業の債権者保護の必要性と当該債権者保護に資する企業の財務内容の適切な開示の重要性に鑑み、財務内容の適切な開示の前提となる会計帳簿の記載・記録条件(適時性・正確性)について、法文上明確化を図ること。

3.組織再編行為に係る規制の見直し
 組織再編行為に係る規制の見直しのうち合併等対価の柔軟化による三角合併については、人材、資源、資本が流動化し、経済活動がグローバル化した現在の経済社会にあって、企業の組織再編の手法の拡充による競争力確保、ひいてはわが国の経済の活性化、並びに国際的信認の維持向上などの観点から必要であるとの意見が示された。一方で、企業がわが国産業に重要な地位を占め、その在り方はわが国の国益と密接に関係することもあわせ鑑み、以下の意見も示された。当小委員会は、政府に対して、これらの意見に留意した上、会社及び市場を取り巻く証券制度、個別業法等の改正の状況並びに外為法の在り方についても、多面的な検討を加え、かつ、法制以外の面においても、資本市場における企業活動の在り方についての企業経営者、株主等一般投資家の認識と理解を涵養・醸成し、国民や経済界が安心して利用することのできる新たな組織再編制度の構築に向け、さらに必要な措置を講ずることを要請する。

  • 合併等対価の柔軟化をはじめとする組織再編行為に係る規制の見直しに際しては、株式の持ち合いを背景として企業買収が生じにくいとされてきたこれまでのわが国の社会風土に与える影響にも十分配慮すべきである。
  • 規制の見直しを行う際には、わが国と諸外国との企業文化や法制度の差異にも配慮すべきである。
  • 会社法制が、関係者全てにとって公平・公正な制度であるべきことを踏まえつつ、わが国企業の価値が不当に損なわれる場合などの弊害を適切に取り除くため、敵対的な買収の合理的な防止手段を整備すべきである。
  • 企業防衛策については、真の株主利益の保護や雇用の確保等の正当な目的に利用されるものでなければならず、これらの目的を離れて、過度な防衛策が講じられることのないようにしなければならない。
  • 放送事業をはじめとするわが国における公共性の高い事業につき、その健全性・公共性を確保するために、電波法や放送法などの個別法により、外国企業等による間接支配規制等を整備すべきである。
  • 株式の取得につき、公正な市場ルールを確保するために、証券取引法による市場内での株式の時間外取引に対する規律を整備すべきである。その際、一般投資家、機関投資家など全ての投資家を公平に取り扱うよう留意すべきである。
  • 企業の組織再編行為に係る規制の見直しが税制に与える影響についても慎重に検討すべきである。

4.商号の登記の規制の見直し
 商号の登記に関する現行の商法19条・商業登記法27条による規制を廃止するにあたっては、すでに商号を登記している既存の企業の保護に欠けることとならないよう、見直し後の運用状況を踏まえつつ、必要に応じ、簡易な救済制度の創設の要否等も含め、検討を行うこと。