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政策提言

2003/02/27 

公認会計士法の改正に関する提言
コーポレートガバナンス・会計監査・資本市場の強化
自由民主党 金融調査会・企業会計に関する小委員会

平成15年2月27日
自由民主党 金融調査会・企業会計に関する小委員会

当委員会は、法務部会商法小委員会とともに、昨年8月にとりまとめた「企業会計制度等の改革に関する検討項目」に基づき、わが国における投資家保護と資本市場の健全な発展を目指し、コーポレートガバナンスの強化、証券市場の監督体制等の整備、公認会計士と監査法人の独立性・透明性の向上と責任の強化、ディスクロージャーの強化を図るべく、集中的な検討に取り組んできた。

この間、政府において今通常国会に公認会計士法の改正法案を提出する方向での検討が行われてきたことも踏まえ、当委員会としては引き続き検討を重ね、昨年12月に「公認会計士法の改正における諸課題について(中間論点整理)」をとりまとめ、さらに討議を行ってきた。

その結果、わが国における投資家保護の強化を通じて資本市場の機能を高め、「日本型資本主義」の質の向上を図っていくことが喫緊の課題であるとの認識のもと、公認会計士と監査の独立性、透明性の向上と責任の強化などについて早急に具体化を図ることが不可欠であり、今通常国会への公認会計士法改正案の提出にあたって、下記の点が十分、適切に反映されることが必要であるとの結論に達したので、ここに政府に対して要請する。

同時に、法制度面も含めた関連する制度の具体化が必要不可欠であるとの結論に達した(別紙参照)。

当委員会は、法務部会商法小委員会とともに、今後の新たな論点も含めて引き続き検討を深め、関連する制度の整備に一層努めていく方針であり、政府においても早急に結論を得るよう要請する。

  • 公認会計士法改正案の策定にあたっては、公認会計士の監査証明業務と非監査証明業務を定めた法第2条の規定を現行どおりとすることを前提とする。

  • 監査の目的、公認会計士の使命、職責、独立性等の明確化にあたっては、投資家保護や債権者の保護を明確に位置づけることはもとより、公会計等を含めた高い公益性が求められていることを踏まえた上で、公認会計士が単なる監査の専門家に限定されることのないように位置づける。

  • 独立性の強化にあたっては、証券取引法の対象監査のみならず、商法監査特例法(株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律)の対象監査にも適用されることを前提とし、その上で、商法監査特例法の対象監査については、実情を踏まえた形で適用の実効性が挙がるように位置づける。

  • 関与社員の交替制については、地方における企業活動等に支障が生じることのないように配慮するとともに、実質的に個人の公認会計士を監査業務から排除することにつながりかねないことを避ける観点から、個人の公認会計士の共同監査に対しては、客観的な要件に基づき、かつ、適切な代替措置を講じることにより、適用除外とする。
    また、関与社員の交替制の期間については、「5年間」とするべきであるとの意見と、品質の低下を招くのではないかなどの実務上の影響を懸念する観点から「7年間」とするべきであるとの意見があったことを踏まえ、まず、「7年間」とするとともに、公認会計士の質的、量的な今後の充実を図っていくことを併せて考慮し、7年後には「5年間」とするよう見直す。

  • 監査の適正性の担保のための「品質管理レビュー制度」に対する「公認会計士審査会」による公的監視の導入にあたっては、その職権が、公認会計士試験の実施や公認会計士に対する懲戒処分の調査といった公認会計士の「身分」に係る職権との利益相反に陥らぬよう、組織としての独立性を確保するように改組し、「公認会計士・監査審査会」(仮称)に名称を改めるとともに、委員の常勤化を導入する。

  • 事前の公的規制を事後的監視へと見直すとの観点、ルールの中での自主性を尊重しつつ、違反者に対しては罰則で対処するとの観点から、法律違反をした公認会計士や監査法人について、他の法律も含め、行政罰、刑事罰などの罰則の強化を図る。

  • 日本公認会計士協会の組織としてのガバナンスとアカウンタビリティ(説明責任)の一層の向上を求め、その責任ある自主規制を尊重しつつ、日本公認会計士協会、監査法人等に対する公的規制については合目的的に最小限のものとする。
    この観点から、監査法人の設立等の許可制を届出制とし、監査法人の業務報告を簡素化し、内閣総理大臣が日本公認会計士協会の役員の解任を命ずることができるとの規定を廃止する。

  • 立入り検査等の調査権の発動については、監査法人の設立等の許可制を届出制にすることも踏まえ、なおかつ、「品質管理レビュー制度」に対する公的監視の導入に伴い、その実効性を確保する観点から、事後的監視の手段として、極力明確な基準及び手続に基づく限定的なものとする。

  • 日本公認会計士協会において職業倫理を含めた研修の一層の充実を図るとともに、公認会計士は日本公認会計士協会が行う資質の向上を図るための実効ある研修を受けることを法律上位置づける。

  • 政府において、規制緩和の観点も踏まえ、公認会計士と税理士についての試験制度における免除のあり方等について引き続き検討する。

  • 政府において、引き続き次の課題を検討し、結果をとりまとめ次第、公表する。
    ・有価証券報告書における監査報酬の開示の義務づけを含めた監査に関する
     情報に係るディスクロージャーの制度化
    ・監査法人のコーポレートガバナンスの強化
    ・監査法人の運営、財務に係るディスクロージャーの制度化
    ・監査法人制度における有限責任組合(リミテッド・パートナーシップ)制度
     の導入
    ・監査法人の交替制の導入と導入に至るまでの間の適切な代替措置
    ・公認会計士の登録の更新制度の導入

(1)コーポレートガバナンスの強化

  • 経営者の責任の明確化と強化
    ・財務諸表の正確性に関する経営者による宣言の制度化
    ・虚偽記載に対する罰則の強化

  • コーポレートガバナンス情報の開示の充実
    ・MD&A等の情報開示の制度的充実

  • 内部監査の充実
    ・監査役・監査委員会取締役の独立性の強化(外部からの登用)
    ・監査役・監査委員会取締役の専門性の向上(財務専門家の必置)
    ・社外取締役、社外監査役の要件の厳格化
    ・取締役、監査役の欠格事由の厳格化
    ・会計監査人の報酬規制の商法での位置づけ(株主総会の個別報告事項化)
    ・会計監査人に対する株主代表訴訟制度の創設

  • 内部告発者の保護のための関連法制度の整備

  • 組織機関の実効性の向上
    ・公開会社・閉鎖会社、大規模企業・中小企業における組織機関のあり方の
     見直し

(2)証券資本市場の機能の強化・監督体制の整備

  • 投資教育の強化
    ・初等・中等教育課程における会社・投資に係る教育の充実
    ・専門・大学教育課程における実践教育の充実

  • 証券アナリストの独立性・公正性の担保

  • 体制と機能の強化
    ・ルール設定、ルール遵守を一体的かつ総合的に担う機能面における対応
     (例えば「日本版SEC」の創設)の整備
    ・資本市場からの運営・管理資金の調達の制度化

(3)会計基準・ディスクロージャー等の制度インフラの充実

  • 「収斂」(convergence)への対応
    ・国際会計基準の選択適用の導入

  • 会計基準の設定の円滑化
    ・企業会計基準委員会の活動基盤の充実
     (財務会計基準機構への上場企業の入会の義務づけ)
    ・経済界・産業界の実情の的確な把握

  • コーポレートガバナンス情報の開示の充実(前掲)
    ・MD&A等の情報開示の制度的充実

  • 明確な開示と関連指針等の整備
    ・オフバランス取引、ストックオプション処理 等