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政策提言

2004/03/04 

日英21世紀委員会第20回合同会議
日英21世紀委員会 2004年2月6-8日、於ブロケットホール

日英21世紀委員会
2004年2月6-8日、於ブロケットホール

日英21世紀委員会第20回会議は、ピーター・マンデルソン英国議会議員および塩崎恭久衆議院議員を共同議長に2月6日から8日にかけ、英国のブロケットホールで開催された。

会議に先立ち、委員会の日本側メンバーはロンドンの首相官邸にブレア首相を表敬訪問した。ブレア首相は委員会の目的と活動を高く評価し、支持を表明した。塩崎座長は特に、イラクに派遣された自衛隊に対する英軍の支援に感謝の意を表し、また2005年愛知万博に英国が参加を決定したことにも日本側の感謝の意を伝えた。メンバーは副首相および国際開発相とも会合をもった。

20周年を迎えた委員会

当委員会が日英2000年委員会として発足した1985年当時、日英関係はまだおおむね政府間関係および民間レベルでの互いの国に特別なつながり、または関心をもつ少数の人々の交流活動に限られていた。互いの国に対する認識においては、日本の工業力の急成長、英国の経済・社会問題、そして冷戦構造といったものが支配的であった。 しかし、そのような状況が変化を遂げようとしている時期でもあった。そのころから、両国関係はほぼ全面的に建設的な方向に発展し始めたのであった。両国間の貿易・投資問題をめぐるそれまでのとげとげしい議論に代わって、様々な重要課題に関する継続的かつ広範な対話が行われるようになった。1985年以前には日英間で国際問題に関する対話が行われることは少なかったが、現在では安全保障政策から地球温暖化にいたるまで多様な多国間問題が継続的に討議されるようになった。両国の共通の関心と価値観は、広範囲にわたる地球的課題についての協力を促進するようにもなっててきた。それとともに、相互認識も大きく変容した。日本の対英投資がもたらす相互利益が広く認識され、評価されるようにもなった。これに加え、日本文化を紹介する各種フェスティバルが成功裡に実施されたこともあって、英国人の対日理解はあらゆるレベルで劇的に向上した。

日英21世紀委員会は、様々な分野における交流の拡大に貴重な役割を果たしてきた。委員会の提言のいくつかは具体的な成果をあげているが、教育交流やNGO間の交流促進における進展はその一例である。また、委員会は愛知万博への英国の参加決定に極めて重要な役割を果たした。21世紀に入り日英21世紀委員会とという新たな名のもとに一層活発な活動を展開している当委員会は、新しいアイディアと提案を生み出す非常に重要な場所になっている。創設20周年という節目を迎えた今回の会議はガバナンスを主テーマに取り上げた。会議を通して、出席者たちはほぼすべての分野における相互利益の大きさと、新しいネットワークを構築することの重要性につき認識を深めた。

将来への指針

過去10年間に、日本が経済的成熟に伴う諸問題への対応に苦慮してきたのに対し、英国は政治、社会、経済の長期的安定を享受してきた。英国は戦後期の経済・社会問題を克服して安定と発展の時代に入っていた。英国は予期しない、もしくは望ましくない出来事に対するある種の強靭性を身につけてきた。製造業中心の経済からサービス経済への移行は苦痛を伴うものではあったが、その一方で、この移行は協力の膨大な可能性をもつ、よりバランスのとれた、円滑な日英関係構築に向けての基礎を創出した。そのような観点からも、委員会は、過去1年における日本経済の著しい改善に歓迎の意を表明した。

地域統合への動きは、日英両国の相互認識を変化させてきた。英国は欧州の軸としての影響力を強めてきている。実際、日本は対英関係を欧州全体との関係における基本的要素と考える傾向がある。その一方で、日本はアジアにおける地域協力のための様々な選択肢を追求している。英国はこの傾向に無関心でいるはずはなく、日本の相対的な経済力を忘れるはずもない。また、あまりに中国の将来に過大な期待をかけることはリスクを伴うとの認識も持つものである。 日英両国が多くの分野で直面している国内問題の共通性が強調された。ただ、多くの場合、それらの問題の規模は両国間で差異がある。関係者間の対話を強化することによって非常に多くのものが得られるはずであるが、テーマとして以下の分野が考えられる。

  • 高齢化社会と人口動態の不均衡は、公的年金と社会福祉制度の財政に重大な問題を引き起こすだろう。両国首相府間の意見交換を続ける必要がある。
  • 住宅、地域、インフラ開発
  • シビル・ソサエティ:すでに貴重な交流活動が行われているが、経験を分かち合うために一層の努力を払うべきできる。

科学技術は、協力の機会を秘めたもう一つの非常に重要な分野である。多数の日本企業が、英国における研究施設に多額の投資を行っている。これまでのところ、この分野における日英企業間の協力は主としてエレクトロニクス、バイオテクノロジー、化学品に焦点を合わせてきた。最近では、環境問題、ナノテクノロジー、ゲノム研究に関する協力に関心が向けられている。これらの分野における大学間の協力を大幅に増やすことが可能である。

委員会は、英国の教育機関において日本研究科の設置数が最近減少傾向にあることに強い失望を表明した。英国側議長が外務英連邦相、貿易産業相、教育相に対し、日本研究科の現在の需給状況を調査し、減少に歯止めをかけるための適切な措置を講じることを書面で要請することで意見が一致した。これに関して、持続可能な選択的アプローチの必要性を訴える意見が多く出された。

これまでの会議と同様、委員会では対外政策について日英両国政府間でより緊密な協力を進めることの必要性が強調された。引き続き、中国に関する日英間の対話を強化する必要性が強調された。

企業の社会的責任

日英両国の大企業は、変化する社会政治的・経済的環境に対応していくという共通の課題に直面している。これまで、日英の大企業はそれぞれの国の経済成長と社会発展の原動力として重要な役割を果たしてきた。しかし、その過程で、それらの活動の負のインパクトが、環境劣化や命に関わる健康被害など重大な社会問題を引き起こしたとして、世論の厳しい批判を受けることになった。その結果、企業が、社会における自己の役割を再定義し、目標を見直し、経営優先課題の設定におけるファクターとしてのコーポレート・ガバナンスを再点検する必要性を強く認識するようになっている。経済相互依存の深まりを背景に、日英企業間の協力の機会が増大していることから、、両国の企業が情報の交換を行い、コーポレート・ガバナンスを改善する方策を共同で検討することが望まれる。

会議に出席した経済界のリーダーたちは、各国政府、国際機関、その他の利益団体が、経営管理の時間を奪い、経営者の企業経営への集中を阻害するような規制や行動規準を次々につくり出す傾向が強まっていることに強い懸念を表明した。企業行動と企業統治に対するNGOの批判が、時として行き過ぎるきらいがあることも指摘された。しかしながら、企業経営者は直接的企業目標を追求しつつ、株主、従業員、地元住民、消費者などすべての利害集団の利益に真剣に配慮することが必要であることも認識している。多国籍企業は文化的慣習も社会的価値観もまちまちな、多くの異なる環境のもとで活動しなくてはならないため、一層の努力が求められる。

政治ガバナンス

両国とも、中央政治機構と政治指導者への国民の関わり合いが著しく低下するという、政治ガバナンスにおける共通の課題に直面している。近年の両国における投票率の急速な低下はこの傾向を反映している。すなわち、深刻な「デモクラティック・デフィシット(民主主義の負債)」といわれる状況が現出している。しかしながら、日本では代議制民主政治に対する信頼は依然として堅固であり、英国では政党が引き続き政治プロセスに不可欠の役割を果たし続けている。両国における現在の政治システムに対する国民の不満の主要な原因は、現在の政治システムが政治家と利益団体により支配され、多様化を深める公共の利益に効果的に対応できないということにある。レフェレンダム(国民投票)の拡大をめぐる議論の高まりに見られるように、国民の政治プロセスへの直接参加を増やすことを求める世論が広がっている。

会議出席者は、政治家と政党が選挙民とのコミュニケーションを抜本的に改善する必要があることを繰り返し強調した。これと関連し、政治プロセスの透明性を高めることが強く期待された。メディアと非営利団体、そして高度通信技術は、このプロセスにおいて重要な役割を果たしうる。

日本の政治家は、選挙民の切実なニーズにより柔軟に対応する姿勢を示し始めている。昨秋の選挙では事前に政策マニフェストが作成された。しかし、多くの場合、政治家の人気は公約の実行にかかっており、選挙民はそれを容赦なく判定する。

グローバル・ガバナンス

米国が軍事力と経済力において他を圧していることは、議論の余地のない事実である。世界の他の諸国は、何らかの形での米国の関与がない限り、主要な問題を解決することができないことは多くが認めるところである。

しかし、米国の軍事力と経済力がいかに強大でも、イラク戦争は米国が単独ではこの種の問題を解決できないことを証明した。経済的コスト自体が米国にとってさえあまりに膨大であるだけでなく、このような問題の処理には、より広範な国際社会の関与が政治的にも不可欠である。したがって、英国と日本は、それぞれの緊密な対米関係を活用して、いかなる状況においても国際的コンセンサスの形成に向けて影響力を行使することに最大限の努力を払うべきである。

長期的な平和を模索する際に、国連および特に国連安全保障理事会の役割を無視することはできない。どんな弱点を持つにせよ、国連はあらゆる国際行動の実施に合法性を与える。その意味で、国連とその多くの機関を改革することはきわめて望ましい。とりわけ、安全保障理事会に新しい常任理事国を加えることは重要であり、英国はその候補として日本を強く支持している。

会議出席者は、大量破壊兵器の拡散および国際テロリズムの防止に決然と取り組む必要性について一致して強く支持した。テロの拡散を助長する諸問題についても緊急に対処する必要があることも指摘された。また、出席者は、日英両国は、当面は情報分野の協力などを通して、緊密に協力していくべきという認識で一致した。さらに、われわれが危機を解決するための先制攻撃の正当性について細心の注意を払うことが必要であったということについても共通の認識を持った。

イラクに到着した自衛隊の復興支援活動の遂行を英軍が支援するという決定は、高く評価された。この自衛隊派遣は戦後日本の歴史における画期的な出来事である。日本はいまや国際安全保障討議に従来よりはるかに活発に参加するようになっており、イラクにおけるような活動への日本のより大きな関与は国際社会から大いに歓迎されている。国際紛争処理と平和維持活動に関連して、日英間の協力を強化しうるより大きな可能性が存在する。

地域安全保障機構を創設しようという気運が高まっている。EUが統一的アプローチを形成するにはまだ時間を要するだろうが、現在のイランとの交渉に見られるような特別の努力は、EUが将来安全保障の面においても重要な役割を担う可能性があることを示している。東アジアでは、日本が安全保障協力の枠組みをつくるための努力を進めている。かかる努力において、中国とロシアの関与が重要であり、この両国を参加が不可欠である。

持続可能な環境のための展望

地球環境の悪化は、日英両国の重大な関心事である。会議出席者は、現行レベルの経済活動が環境に与えている危険性に対処し、持続可能性に関する国際論議において有意義かつ建設的なパートナーシップを築くために、両国間の協力を早急に強化する必要があることを強調した。

日英両国は、米国に対し、一国主義の道をとらず、国際社会の主流の環境討議に復帰するよう説得することに共通の利益を有している。われわれは、環境に関する米国内の世論が決して一枚岩ではないことを認識すべきである。実際に、米国の各州と民間企業は環境保全に向けて多大な努力を払っている。また、日英両国は、ロシアに京都議定書(気候変動枠組み条約の議定書)を批准するよう共同で圧力をかけるべきである。議定書の温室効果ガスにメタンを追加させるための努力を払うことも考えられる。

会議出席者は、汚染物資の排出を防止するための技術の開発について一層の協力を行いうる多くの機会が存在することを指摘した。これらの技術は発展途上国のニーズに合わせて調整し、これらの国と共有すべきである。先進国は、環境保全対策の重要性に関する実質的な討議に途上国を参加させるべきである。特に、その急成長する経済が将来世界の排出量のかなり大きな部分を生み出すと予想される中国とインドの参加を促すことが重要である。日英両国は、核問題に関する対話を拡大し続けるべきである。会議出席者は、この分野における新技術の開発と導入なしには、世界の排出目標を達成することはできないと強調した。長期的視点に立てば、核融合技術は「トンネルの端の明かり」になるかもしれない。

両国政府は、世論に影響を与える、もしくは世論の啓蒙を図る上での自らの能力を過小評価すべきではない。訴える力をもつ多くのメッセージのうちの一つは、ビジネスは環境の敵ではないということである。この分野ではNGOも極めて重要な役割を担っているが、NGOは過激で、正確さを欠いた特定の産業批判を差し控えることが望まれる。環境保全技術への企業投資は莫大な規模にのぼっており、多くの場合その導入はめざましい成果をあげている。