2006/03/10 日印シンポジウム
日印シンポジウム
「21世紀におけるアジア・太平洋地域の課題と展望」
塩崎恭久 挨拶
ご列席の皆様、
本日は、この「21世紀におけるアジア・太平洋地域の課題と展望」と題するシンポジウムにご参加いただき、有り難うございます。
本日のシンポジウムは、グローバル・パワーとしての台頭著しいインドと日本との間の協力関係を如何に発展強化させていくべきか議論することを目的としています。
インドは、その目覚ましい経済発展と活発な外交により、世界の注目を集めています。我が国は、そうしたインドの台頭と国際的な諸課題への積極的な関与を、アジアや国際社会の平和と安定及び繁栄の観点からも歓迎しています。これは、日印両国が、民主主義や市場経済等の基本的価値観を共有し、アジアの発展、東アジア共同体の形成等幅広い利益を共有するからです。
さて、アジアの経済発展のモデルは、かつての高度成長期の日本を範とする雁行型の発展から、グローバル経済の中で、各国の水平的な分業体制に基づく内需型の発展に変化してきています。今我々が目にしているインドの目覚しい経済発展は、長い目で見たときに、アジア経済の秩序、ひいては政治や社会の秩序に如何なる影響を与えていくのか、極めて興味深いところです。少し考えただけでも、以下のような点を思いつきます。
第一に、いわゆるorganized companyと呼ばれる大企業やIT分野の急成長に代表される昨今のインドの経済発展モデルは、今後、富の均等な蓄積を実現し、インドの民主主義をも健全に発達させるものとして根付き、他のアジア各国のモデルとなっていくでしょうか。
第二に、インドの経済発展を中長期的にサステナブルなものとするための条件は何でしょうか。例えば、他のアジアへの影響の大きいエネルギー分野の協力関係、金融市場の成熟度合い、環境への影響などはどうでしょうか。そのために日本とインド両国で、また他のアジアの国々を巻き込んで、今、行えることは何でしょうか。
第三に、インドの発展が、アジアの安全保障上のピクチャーを中長期的にどう変えていくのでしょうか。単に軍事面やテロとの戦いに止まらず、幅広い分野にわたる地域協力の枠組みについて、他のアジアの国々からインドに期待されている役割は何でしょうか。
我が国は、こうした問題意識をも背景として、昨年4月の小泉総理訪印で、インドとのグローバル・パートナーシップに戦略的観点を付与することで合意し、8分野の行動計画に合意しました。また、本年1月の麻生外務大臣の訪印では、外相間の戦略的対話の開始に合意するとともに、経済分野では、経済連携協定の可能性を真剣に検討していくことで一致しています。
まず、日印間の今後の最大の課題は、経済面での関係強化です。今後、日本の製造技術とインドのソフトウェアの組み合わせ、日本の資本や技術のインドのインフラやエネルギー効率向上への活用、大学・研究所の交流など知的交流の活性化など、日印間の相互補完性をも生かした協力の余地は大きいと考えます。さらに、公害など経済発展につきものの負の面への予防・対応についても、我が国はその経験・技術を大きく貢献することができる筈です。
また、政治・安全保障面では、日印両国は、自由と民主主義という共通の価値観を軸に、軍縮・不拡散分野という必ずしもすべての面で意見の一致を見ていない分野についても対話を深めるとともに、地域の安定や東アジア共同体の形成や海上安全保障等、例えばミャンマーやネパールの民主化のために両国は何をできるかをともに考えていくことが重要です。
アジア地域の繁栄と平和を将来に亘って確保するためには、日本とインドのみならず、米国や中国といった主要国間の一層の協力を必要とする課題があります。多様性に富むアジアにあっても、繁栄と平和の基礎となる民主主義等の普遍的価値の促進と共有は必要であり、このための連携は極めて有益です。また、地域の急速な経済成長を支えているエネルギー供給を如何に協調的な形で確保していくかは喫緊の課題の一つと言えます。或いは、地域の活発な貿易・投資は、安全な海上交通路に依存しています。海上の安全を確保し、更に、テロリストや大量破壊兵器の拡散を防止する努力も主要国が協力すべき課題と言えます。
米国は、インドとの関係強化が急速に進展しており、今月初めのブッシュ大統領の訪印でも、経済、エネルギー・環境、安全保障等の幅広い分野での協力に合意しました。米印両国は日本の戦略的パートナーであり、我が国としても、一部注意深い検討を要する分野はありますが、両国の幅広い分野での関係強化を歓迎しています。中印両国は、経済発展のために平和的環境を追求することに共通の利益を見出し、信頼醸成等に取り組んでいます。これにより、両国間の政治的緊張は緩和され、さらに、経済関係も拡大しています。これは、地域の平和と繁栄にとっても有益なことであると考えます。
本日のシンポジウムでは、日印協力の今後の方向性につき議論することは勿論ですが、こうした点も踏まえ、議論の射程を米国、更には中国にまで拡大し、アジア・太平洋地域の平和と安定、繁栄のために、地域の主要4ケ国が如何に連携していくべきかという視点からも建設的な意見交換が行われることを期待します。
最後に、お忙しい中、今回のシンポジウムへの出席を快くお引き受け頂いた各国からの参加者の方々、及び本日この会場にお集まりいただいた皆様に改めてお礼を申し上げて、私の挨拶とさせて頂きます。
本日は、この「21世紀におけるアジア・太平洋地域の課題と展望」と題するシンポジウムにご参加いただき、有り難うございます。
本日のシンポジウムは、グローバル・パワーとしての台頭著しいインドと日本との間の協力関係を如何に発展強化させていくべきか議論することを目的としています。
インドは、その目覚ましい経済発展と活発な外交により、世界の注目を集めています。我が国は、そうしたインドの台頭と国際的な諸課題への積極的な関与を、アジアや国際社会の平和と安定及び繁栄の観点からも歓迎しています。これは、日印両国が、民主主義や市場経済等の基本的価値観を共有し、アジアの発展、東アジア共同体の形成等幅広い利益を共有するからです。
さて、アジアの経済発展のモデルは、かつての高度成長期の日本を範とする雁行型の発展から、グローバル経済の中で、各国の水平的な分業体制に基づく内需型の発展に変化してきています。今我々が目にしているインドの目覚しい経済発展は、長い目で見たときに、アジア経済の秩序、ひいては政治や社会の秩序に如何なる影響を与えていくのか、極めて興味深いところです。少し考えただけでも、以下のような点を思いつきます。
第一に、いわゆるorganized companyと呼ばれる大企業やIT分野の急成長に代表される昨今のインドの経済発展モデルは、今後、富の均等な蓄積を実現し、インドの民主主義をも健全に発達させるものとして根付き、他のアジア各国のモデルとなっていくでしょうか。
第二に、インドの経済発展を中長期的にサステナブルなものとするための条件は何でしょうか。例えば、他のアジアへの影響の大きいエネルギー分野の協力関係、金融市場の成熟度合い、環境への影響などはどうでしょうか。そのために日本とインド両国で、また他のアジアの国々を巻き込んで、今、行えることは何でしょうか。
第三に、インドの発展が、アジアの安全保障上のピクチャーを中長期的にどう変えていくのでしょうか。単に軍事面やテロとの戦いに止まらず、幅広い分野にわたる地域協力の枠組みについて、他のアジアの国々からインドに期待されている役割は何でしょうか。
我が国は、こうした問題意識をも背景として、昨年4月の小泉総理訪印で、インドとのグローバル・パートナーシップに戦略的観点を付与することで合意し、8分野の行動計画に合意しました。また、本年1月の麻生外務大臣の訪印では、外相間の戦略的対話の開始に合意するとともに、経済分野では、経済連携協定の可能性を真剣に検討していくことで一致しています。
まず、日印間の今後の最大の課題は、経済面での関係強化です。今後、日本の製造技術とインドのソフトウェアの組み合わせ、日本の資本や技術のインドのインフラやエネルギー効率向上への活用、大学・研究所の交流など知的交流の活性化など、日印間の相互補完性をも生かした協力の余地は大きいと考えます。さらに、公害など経済発展につきものの負の面への予防・対応についても、我が国はその経験・技術を大きく貢献することができる筈です。
また、政治・安全保障面では、日印両国は、自由と民主主義という共通の価値観を軸に、軍縮・不拡散分野という必ずしもすべての面で意見の一致を見ていない分野についても対話を深めるとともに、地域の安定や東アジア共同体の形成や海上安全保障等、例えばミャンマーやネパールの民主化のために両国は何をできるかをともに考えていくことが重要です。
アジア地域の繁栄と平和を将来に亘って確保するためには、日本とインドのみならず、米国や中国といった主要国間の一層の協力を必要とする課題があります。多様性に富むアジアにあっても、繁栄と平和の基礎となる民主主義等の普遍的価値の促進と共有は必要であり、このための連携は極めて有益です。また、地域の急速な経済成長を支えているエネルギー供給を如何に協調的な形で確保していくかは喫緊の課題の一つと言えます。或いは、地域の活発な貿易・投資は、安全な海上交通路に依存しています。海上の安全を確保し、更に、テロリストや大量破壊兵器の拡散を防止する努力も主要国が協力すべき課題と言えます。
米国は、インドとの関係強化が急速に進展しており、今月初めのブッシュ大統領の訪印でも、経済、エネルギー・環境、安全保障等の幅広い分野での協力に合意しました。米印両国は日本の戦略的パートナーであり、我が国としても、一部注意深い検討を要する分野はありますが、両国の幅広い分野での関係強化を歓迎しています。中印両国は、経済発展のために平和的環境を追求することに共通の利益を見出し、信頼醸成等に取り組んでいます。これにより、両国間の政治的緊張は緩和され、さらに、経済関係も拡大しています。これは、地域の平和と繁栄にとっても有益なことであると考えます。
本日のシンポジウムでは、日印協力の今後の方向性につき議論することは勿論ですが、こうした点も踏まえ、議論の射程を米国、更には中国にまで拡大し、アジア・太平洋地域の平和と安定、繁栄のために、地域の主要4ケ国が如何に連携していくべきかという視点からも建設的な意見交換が行われることを期待します。
最後に、お忙しい中、今回のシンポジウムへの出席を快くお引き受け頂いた各国からの参加者の方々、及び本日この会場にお集まりいただいた皆様に改めてお礼を申し上げて、私の挨拶とさせて頂きます。
(了)
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