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やすひさの瓦版 Yasuhisa's Kawaraban やすひさの季刊誌をまとめています

2006/03/15

やすひさの瓦版(第68号)

たくましく、温かい国づくりを目指して

 いわゆる「ライブドア事件」の本質は一体何だったのでしょうか?拝金主義、市場原理主義、M&Aによる経営拡大などへの批判から始まり、「勝ち組、負け組」を作り、格差を拡大してきた小泉構造改革の「影」の部分の現れとして批判する声も聞かれます。
総裁選を今年9月に控えた今、ここで過去5年近くの小泉構造改革の軌跡を総括し、今後の日本の進むべき方向性を考える良い機会かもしれません。

 「ライブドア事件」自体は、風説の流布、粉飾決算など、意外に古典的な犯罪なのでしょう。旧来タイプの経営者だけでなく、今をときめく若きベンチャー企業経営者も同様の問題を起こすのだという事が明らかになりました。私が以前からその実現に向けて努力してきたように、経済活動の信用を確かなものにするためには、コーポレートガバナンスから市場ルール違反に至るまで、市場全体に一元的責任を持つ独立かつ強力な「日本版SEC(証券取引委員会)」を創設し、投資家が安心して市場参加できる環境作りが不可欠であることがこのたびの事件で益々はっきりしたと言えます。

 同時に、今回の事件を「優勝劣敗を促進する小泉改革の影の現れ」と批判向きがあります。そうでしょうか。

 日本は戦後長らく銀行、建設業、さらには薬価で縛られる製薬産業に至るまで、政府関与のある多くの分野で「ズバ抜けた強者」を作らず、強者が弱者を「内部補助」により助け、「全体の平均点を上げる政策」をとり、今日の経済的繁栄を手にしました。しかし、あらゆる面でグローバル化、ボーダレス化が進み、国際競争が激化する今日、これまでのような「護送船団」方式の日本的なやり方だけでは、世界に伍していくことは困難になり、これがわが国の競争力の低下を招いてきたのです。この反省に立ち、日本はこれまで、もちろん小泉政権のずっと以前から規制緩和などを進め、日本経済活性化による国際競争力強化に努めてきました。小泉構造改革は、不良債権問題解決などを通じ、その流れに沿ったものです。

 国造りで大事なことは、まず、多様な社会を創る、多様で自由な競争が確保されること、そして「努力した人が勝ち、正当に評価される国」の実現であり、そのためにも一層大切なことは、「何回でもやり直し、再挑戦が可能な社会」の実現だと思います。失敗が許され、たくさんの可能性に挑戦できる社会にしていくことが、若い人に生きる希望と力を与え、真に豊かな社会を築く要諦ではないでしょうか。オリンピックでも全員が同時に金メダルを取る事はできませんが、何度でも挑戦でき、努力次第で誰にでもメダルを取るチャンスがある社会を築く事が大事です。そして、頑張って競争に勝てる人がしっかり育つことで、努力すら困難な、社会的に弱い立場の人達への社会全体の支え合いも初めて可能になるのです。

これからの日本を支えるリーダーとして、秋に誕生するであろう新総理には、多様で公正な競争が確保され、頑張る人はそれが正当に評価され、たまたまうまく行かずとも再挑戦ができる社会、そして弱い立場の人々をしっかり皆で支えることのできるたくましく、温かい日本社会の将来ビジョンを明確にすることが求められているのではないでしょうか。