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やすひさの瓦版 Yasuhisa's Kawaraban やすひさの季刊誌をまとめています

2005/04/08

やすひさの瓦版(第63号)

業統治のかたちが問われる今後の会社経営

 私が委員長を務める自民党商法小委員会において、約一年半かけて議論を重ねて参りました「会社法案」が漸くまとまり、今国会で成立することになりました。会社法本体だけで約5cm、関連法案は30〜40cmの厚みのある、大きな法律改正です。通計27回開催した同小委員会には、当初は数名しか参加議員がいなかったものの、ライブドア事件以降、敵対的買収、とりわけ外資による企業買収を警戒する議員を中心に大入り満員となりました。結局、「合併対価の柔軟化」といわれる部分のみ法施行を一年先延ばしただけで、本質的には当初案通りで了承されました。
 企業買収・合併関連部分だけが注目されがちですが、実は今回の法改正は、社会経済が国内外とも大きく変化することに対応するため、有限会社制度を止めるなど会社に関する様々な制度を一つにまとめるとともに、資本金一円でも会社を起こすことができるなど、中小企業等誰でも使いやすい会社法制にすることにより経済活性化のベースを提供するものです。また企業文化や日本経済の質にも影響を与える、哲学転換を含んだ法改正なのです。経営者にはより大きな経営上の自由度を与える一方、会社経営の健全性確保も図られます。組織再編をし易くするとともに、企業防衛策も多く用意されています。
 今後の会社経営、とりわけ公開会社の場合、取締役会や監査役会がきちんと役割を果たすことにより、透明性の高い経営が行われるかどうか、買収可能性に対しどれだけ防衛的になるか、など、まさに経営者と株主が、どのような責任ある企業統治をするかが、市場の評価に晒されることになります。そのため、そうした評価が行われる場としての証券市場についても、市場監督機能の一体化・強化を含め、様々な体制整備をしっかり行い、投資家が良い企業を自ら選択し、支援できるようにすることが、一層重要になります。

社会保障制度の戦略的一体見直しを

 「年金の一元化問題を含む社会保障制度全般の一体的見直しを行い、平成19年3月を目途に結論を得て、随時実施」との自民・民主・公明3党合意から約一年、漸くこの4月1日、「年金制度をはじめとする社会保障制度改革に関する両院合同会議」を国会内に設けることを含め、社会保障全体の見直しを与野党がともに取り組む決議が行われ、やっと検討が始まります。
 一昨年の総選挙直後、自民党内で年金改革論議が始まる際、私は年金改革を与野党対決構図で行うべきではないのではないか、との問題提起をしましたが、聞き入れられませんでした。結果は与野党双方が中途半端な「抜本改革案」を掲げ、十分議論が深まらないまま、参院選での自民党大敗しました。
 昨秋IMFは「年金改革行き終電車(有権者に占める50歳以上人口比率が50%を超える時点)」が各国でいつ出るかを示し、早期の改革着手を促しましたが、実は日本では、既に2003年時点で終電車は出てしまったのです。結局、与野党いずれが年金改革を行っても、政権交代が繰り返されるだけで、国民は、政権交代の度に変わる年金制度の下で老後の人生設計を立てられないまま時間を費やすという犠牲を強いられかねません。
 年金、医療、福祉が基本的にその時その時の世代間の助け合いである「賦課方式」で組み立てられている限り、短期的な少子化対策を行っても、やはり中長期的根本解決は、少子化の流れを反転させ、出生率を回復させなければなりません。すなわち、「子育て支援」こそ、これからの日本の安定的発展実現のための最優先課題なのです。しかし、別表にみられるように、予算を重点配分すれば出生率が改善されるとは限りません。子供を産み、育てる喜びを実感でき、「子育て」が負担に思われない家庭、地域、職場、学校、など社会全体を作り直すことこそ重要で、そのための戦略的なトータルプランが待ったなしです。