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2012/09/13(木) NO.733号 

「規制の虜」継続、「人災」必至の人事は許されない

 11日(火)の閣議において、今月19日に国会の人事同意なき5人の委員により構成される原子力規制委員会が発足することが決まった。官房長官は「国会の同意が得られなかった」というが、姑息だ。

 7月26日に人事案を国会提示し、十分な時間的余裕があったにもかかわらず、政府・与党は採決時の民主党内の混乱を畏れ、自民党などからの採決要求を無視し、衆議院議院運営委員会への同意人事採決要請を行わず仕舞いで国会は閉幕となった。無責任だ。

 そして、その事務局としての原子力規制庁の長官と次長の人事も、昨日報道された。それによれば、原子力規制委員会の規制実務部隊を束ねるはずの初代原子力規制庁長官には池田克彦前警視総監が就任するようだ。また、ナンバー2の次長には内閣官房で原子力規制組織法案作りを担当した準備室長の環境省エリート、森本英香氏が就任する、という。

 その報道記事を見て、愕然とした。細野原発事故担当大臣も、人事発案者であろう霞ヶ関官僚機構も、そして野田総理など現政権も、皆揃って原発事故からの教訓は何も学んでいないことが明らかだからだ。おそらく海外諸国も、日本は何故このように自らが変わることができないことを示す形で世界に背を向けるのか」と仰天しているだろう。

 池田前警視総監にしても、森本氏にしても、それぞれの組織の能吏、超エリートであることは間違いないのだろうし、ご両人にとっても迷惑な話と思っているかもしれない。しかし、今回私が、原子力規制委員会法案を提起した理由の一つこそ、福島原発事故の原因の根底に、わが国には独立した、高度な専門知識を有する、強力かつ透明な原子力規制の司令塔とテクノクラート集団が不在であったことの反省だった。

 米国NRC(原子力規制委員会)において約4200人の専門職員を束ねる事務総局長 (Executive Director for Operations)のボーチャード氏は、29年間に亘り原子炉検査、原子力法令執行、原子炉規制、原子力保安・事故対応の現場を経験し、直前は、新型炉対応局長だった、その道のプロだ。

 また、総局長を支える3人の「副総局長 (Deputy Executive Director)」のうち2人を見ても、規制行政の実務のプロだ。一人はNRCで26年間、検査、確率論的安全評価、規制研究室副室長、新型炉対応などを担当。もう一人は、同じくNRCで30年間、放射性廃棄物、燃料サイクル、原子炉規制、廃炉、保障措置などの担当をしてきた。

 翻って日本では、池田長官は要人警備などの警察業務の専門家、森本次長は環境省の事務方だ。原子力と何の関係もないキャリアを積んできた。

 国会原発事故調の報告書では、「規制する立場とされる立場が『逆転関係』となることによる原子力安全についての監視・監督機能の崩壊が起きた」、「専門性の欠如等の理由から規制当局が事業者の虜(とりこ)となり、規制の先送りや事業者の自主対応を許すことで、事業者の利益を図り、同時に自らは直接的責任を回避してきた」とし、監督する側の専門性の欠如が致命的であることを指摘、今回の事故も「あきらかに『人災』である」とまで言い切っている。

 なぜ「人災」が必然的に再び起きること必至の人事を行なうのか、全く理解不能だ。福島の被災者に何と説明するつもりか。

 福島事故は二度と起こしてはならない。そのためにこそ、これまでとは全くレベルの違う、日常からの高度な規制が重要である。専門的知識を基に、原子炉の許認可やIAEA基準を満たす安全基準の設定、検査、高経年化対策などの規制業務を行ない、原子力規制にとって何よりも大切な国民からの「信用と信認(trust and confidence)」を改めて勝ち得なければならない。

 今一度細野大臣と、国会の同意を得ていない原子力規制委員長には、5人の委員の国会同意を秋の臨時国会でとるようにしてもらうとともに、事務方トップ人事も、国会同意後の委員会によって選び直してもらいたいと思う。人事の撤回と再考を強く要請したい。

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