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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2000/08/09(水) NO.63号 

何のための「独立性」か

 午後、金融問題調査会が開かれ、日銀の「ゼロ金利政策解除問題」が討議された。議論することは自由だし、多いにメッセージは伝えるべきだが、いささか感情論が多くてびっくり。そもそも(1)日銀は量を決めて金利を事後的に決めているにもかかわらず、国会議員は日銀が金利をまず決められる、と皆思っていること、(2)また、実は量を決めても金利は100%は思い通りに行かないかもしれないし、(3)たとえそうであっても、ベースマネーという日銀が比較的決め易い数値が大きくなっても、いわゆる実際の経済に供給されるマネーサプライは、不良債権を相変わらず大量に抱え込んだままの金融機関が貸し出しを増やさない中、いわゆる「ブタ積み」と呼ばれる金融セクターにとどまるお金もあるため、どうなるかわからないこと、等々議論が薄い。
 時間の関係で早めに会合を出ると、記者さんたちが一杯車まで付いてきて質問攻め。「日銀総裁が本当に正しいと思われるなら、首を賭けてやるべきだし、多分その覚悟だろう」との発言を残して次の会合へ行ったところ、1時間もしないうちからマスコミから電話の嵐。「マーケットが塩崎発言に反応しているが、真意は?」と言うのが大半。成田空港でソウル行きの飛行機に乗る寸前に携帯にかかってきたWSJの記者さんは「ここまで包囲網ができても日銀は決断するのか?」と言ってこられたのでこれには「我々が日銀法を改正したとき議論した『独立性』とはこういうときを想定して作ったもの。普段、何もない時の独立性などは当たり前で、今こそその『独立性』が問われている」と返答。
 相変わらず「日銀はオレの自由になるもの」とのマインドセットが政治にも大蔵省にもマスコミにもあるうえ、日銀の審議委員も審議委員で、先月は出身母体から説得を受けている、などという報道をされるようではいかにも寂しい。やはり本当の「独立性」が定着するまでには10年かかるのかな、と思う。そしてそのベースは、日銀に対する国民的信頼感に他ならない。