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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2013/06/26(水) NO.763号 

がん患者の「希望の数」を増やせ

 早期発見が難しく、かつ進行が速いと言われるすい臓癌。日本では毎年推計2万人以上の人がすい臓がんと告知され、30分に1人がすい臓がんで亡くなっているとされている。諸外国ではすい臓がんは減少傾向にあるが、日本だけは増加傾向にある。

 しかし日本のがん医療の現状は、外国に比べ著しく遅れている。例えばアメリカではすい臓がんのための抗がん剤は10剤保険適用されているが、日本ではたったの3剤しか適用されていない。従って患者の方々には事実上抗がん剤治療において、3度しかチャンスはない。

 すい臓がん撲滅のために活動しておられるNPO法人パンキャンジャパンの眞島事務局長の要請も受け、昨日この問題の解消のための要望署名の、田村厚生労働大臣への提出に同席することとなった。集まった署名は31,382通。関係者の方々から集められたこの署名は、一通一通が患者の命がかかった「命の声」だ。

 署名の提出に同行された患者代表の落合さんは、今まさにすい臓がんと闘っておられる現役のすい臓がん患者だ。先日も同じすい臓がんの患者仲間から「私に使える薬はもうなくなった」と言われ、悲しそうな目で病院を去るのを見送ったばかりだという。

 また、同じく同行された、14歳の時にすい臓がんで母を亡くされた今野さんからは、7年前当時は保険適用されている抗がん剤はたったの1剤しかなく、医師から「もう使えるお薬はありません」と宣告された時の母と父の落胆し切った顔が、今なお子供心に残っている、との体験談が大臣に伝えられた。

 冒頭挙げたアメリカのすい臓がんの抗がん剤10剤のうち、日本ですい臓がん治療に使われている3剤を除く7剤は、実は日本では既に全て承認されており、他のがんには日常的に使われている。アメリカで実績が確立し、国内でも特定の部位のがんに使われているにもかかわらず、すい臓がんや他の部位への適用が何年も遅れているのは、明らかに行政の問題だ。薬がないのではなく、単に申請・承認といった行政のプロセスが遅れているだけなのだ。

 大臣面会に同席した担当官は、「患者団体から正式な要望が提出されれば審査はスタートする」と弁明したが、そのためには学会との調整や、煩雑な事務手続きが必要となる。一刻を争う深刻ながんと、一日一日命を刻みながら闘っておられる患者の方にそれをおしつけ、書類が出れば動く、などというのはあまりに酷だ。

 即座に私から大臣に対し、「大事なことは医療行政として、厚生労働省主導で問題解決に取り組む姿勢ではないか」、と強く申し入れた。

 田村厚労大臣からは、新薬加算制度の中で早期申請のためのインセンティブを企業に付与する方策や、厚労省主導で未承認薬・適応外薬問題検討会議に積極的に働きかけていくこと、さらには厚労省の担当課が患者会へ、受け身ではなく能動的に、どのような方法があるかをアドバイスする体制を整えること、などの対応方針の提案があった。

 はじめに書いたとおり、すい臓がんの進行は速く、がんと闘う彼らを支えるためにも、この問題の対策は一刻を争う。治療の選択肢はそのままがん患者が闘うための希望の数となる。私もこうした問題解決に向け、全力で頑張りたい。