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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2001/04/07(土) NO.154号 

緊急経済対策:手厳しいワシントンの評価

 殆ど自民党内で平場の議論なしにまとめられた与党緊急経済対策を霞ヶ関のお役人との議論の結果、内閣レベルの成案にした内容が昨日経済対策閣僚会議で決定された。柳沢大臣による正論の主張で決定が二日遅れ、内容もお役人の最大限の抵抗と取り繕いの爪痕がそこここに見られるが、私としての評価は基本的に「これまでに比べれれば前進だが、一本筋の通った哲学の不在のまま、3年前の我々のトータルプランと金融国会での政策提言の焼き直しが中心。加えて株の買取など『筋悪商品』も」との印象。
 
 驚いたことに今朝の各紙の社説をみると、若干の注文を付けこそせよ概ね評価している。「銀行保有株式買取機構」についてですら、朝日、毎日、東京は公的資金を使うことに関しては批判的だったが、買い取りそのものに慎重な新聞は皆無だった。私は「そもそも株式投資は銀行経営者の資産運用の一部であり、あくまで彼らのリスク管理がしっかりしていれば問題は起きない筈なのであるから、株価低迷であってもどうするかは民間企業たる銀行の決めることで、政府や政治の出る幕ではない」と言ってきた。したがって、公的資金が関与するなど考えられない。
 こうした日本のマスコミでの見方に対し、案の定、ワシントンでの評価を聞けば「日本は遂に『共産主義宣言』をした様だ。今後は『日本はかつて一時期、資本主義だったこともある国』と呼ぼう」とか「これは冗談ではないか。本当なら気が狂っている。失望を通り越した」といったものが主流。「アメリカ政府に言われてやらざるを得なかった」などと言われることもあるが、全く的外れの事をしているとの見方も可能だ。
 「銀行の株式保有を制限する」という目的(これは考え方次第で正しくもあるが)を設定し、このミクロレベルでの目的達成のためなら、何をしても正当化されるという発想も安易かつ恐ろしい。
 
 さらに、不良資産の処理についても、確かに「破綻懸念先債権以下の債権」を「2年、3年」でオフバランス化するという期限設定したことは大変な進歩だが、それとて主要行で 12.7 兆円で、自己査定不良債権全体の1割強に過ぎず、業務純益の範囲内程度で処理可能。オフバランス化のペースも最早先送りすることなく「1年、2年」ぐらいでいくべきだし、何よりも実施すべき重要なことは、いつも私が言っているように、日本経済の最大の問題である「要注意先債権」の対象要注意企業の整理やワークアウト(企業の再生)。今次対策にはこの点がスッポリ抜け落ちている。ワシントンの反応でも「こうした最重要問題が触れられていないことは、日本政府のやる気の無さを象徴しており、本音で言えば、「大きな失望」などと言われている。
 この点での私の提案は、政府が100%出資している(国民が株主で弁護士さん達ではない!)整理回収機構に「企業再生本部」を新設し、銀行から機構が「要注意債権」を各行からまとめて買い取り、企業再建に長けた民間人を大量投入し企業再建を徹底的に行う、というもの。いくつかのテストケースを選び、早期にトライすべきだ。
 
 そもそも「不良債権問題」を「過去の負の遺産」であるとか、償却しても償却しても地価が下がるので不良債権が減らない、という考えは不充分で一面的。いかに多額の債務を背負っていても、十分な収益をあげていさえすれば返済は可能のはずだが、ここ10年ほど日本経済には収益率、生産性が低いままでいる企業が圧倒的に多いことが不良債権問題の解決に繋がっていない理由。