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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2000/10/06(金) NO.78号 

複雑な思いの対北朝鮮50万トン米支援決定

 一昨日の外交部会に引き続き本日の総務会で、かねてから検討してきた政府のWFP(世界食料計画という国連の組織)を通じた北朝鮮向け50万トン米支援方針につき議論の末、外交部会で了承したとの報告を認め、自民党としてゴーサインを出すこととなりました。部会では拉致問題における進展の無さ、ミサイル開発に回す金がありながら食糧不足になるのはひでりなどの「天災」ではなく「人災」だとの指摘、WFPの19.5万トンをはるかに上回る50万トンの根拠への疑念、正式な国交正常化交渉の際のバーゲニングパワー低下懸念、コメが本当に困窮している人のもとに届くかどうかの日本独自のチェック要求、等々部会で示された様々な点につき、政府が今後最大限の努力をすることを同時に要請しましたが、総務会でもほぼ同様の意見が出されました。山中貞則先生から「塩崎よ。一体50万トンの要求はいつ、どこで、誰が、誰に対して行われたのか?」との本源的質問があり、正直言葉に詰まりました。いつも原点に返るべし、と反省。
 
 それにしても私個人として複雑な思いです。まず第一に、外交部会の当日、これまで余り外交部会に出席したことのないいわゆる「農林議員」の皆さんが大勢当日参加し、米支援賛成意見を次々述べていったこと。対北朝鮮外交と国内余剰米対策とは別物のはず。もっともきちんと反対したのは平沢代議士一人。政策審議会や総務会で異論を唱えられた先生方にも是非外交部会の当日に来て、きちんと慎重論を開陳して頂きたかったです!
 第二に、行政府の長たる外務大臣が外交部会に来られることを私は当日の朝刊で知り愕然。おまけに、通常であれば冒頭挨拶後退席されるのが常識なのに、なぜかその日は最後までおられる由。立法府に属する政党の正式会議である部会の運営は部会長の決めることのはずながら、外務省は一言も私に直接相談もせずに運営方法を決めてしまったのです。確かに外務省は自民党の事務方には前日の夕方、一方的に大臣出席の旨を伝えてきたようですが、私はこのような「筋」にかかわることには拘る方。今日、外務省官房長を呼び、「部会の運営は事前に部会長と相談するおいうルールを省内に徹底して欲しい」旨要望し、外務省も「お達し」を省内に流したようです。
 今回の部会では、支援策の内容も、また国交正常化交渉との関連での展望も釈然としないことばかりで、俄かに賛成しがたいゆえに少し時間をかけて議論をしたい、というのが私の本音でしたが、河野外務大臣が「今回の支援トン数もタイミングも私の責任で決断した。今後の国交正常化交渉も責任を持ってやらせていただきたい」とまでの並々ならぬ決意表明まで席上されたため、我々の知らない外交上の機密事項もあるかも知れず、これ以上無理やり手の内を暴露して頂くわけもいかない、との判断から了承せざるを得なかったというのが正直なところです。当日「私はこの支援策に反対なので、本日の外交部会は欠席します」とおっしゃったある大臣経験者の見識に学びたいと思います。
 第三に、なんと今回の支援策は、「トン数だけが決まり、金額は確定していない」ままに決めさせられてしまい、私は納税者たる国民に対し責任を感じています。外務省予算で負担する米の国際価格分は175億円で確定しているのですが、問題は評価損の出る国内米のうち国産米とミニマムアクセス米の割合。外交部会での食糧庁の説明では、「7年産米と8年産米の場合50万トンで約1000億円」との説明だったのでその通りかと思いきや、翌日のNHKの朝のニュースでは「国産米6割、MA米4割」との報道。外務省に確認したところなんと目下協議中とのことであり、食糧庁に確認すれば「おそらく100%国産米になろう」との説明。
 結果としてわかったことは、いずれにしても政府の方針では「50万トン」だけ決まっていて、コストがいくらかは正確に決まっていなかった、ということでした(国民からお預かりしている税金の重みをどう考えているのか?!)。しかし、このようなことを知らなかった自分を恥ずかしく思います。「外交は内政だ」との基本的理解こそ外交の原点。いかなる外交案件も、いつかの時点で税金の使用と条約批准の是非が国会で問われるわけであり、政府が与党たる自民党に案を提示するならば、当然金額が確定していなければならないでしょう。今回のことからも、これまでの日本の外交は国民不在(より端的に言えば、「納税者」不在)であったことがよくわかりました。これを機会に反省し、外交をより納税者に身近に、そしてわかり易いものにしなければなりません。
 
 いずれにしても対北朝鮮問題に関して河野外務大臣には是非責任ある交渉をして頂き、目論見通りいかない場合には責任をとっていただくしかない、と思っています。
 
 なお、昨日の政策審議会での先輩議員からのご提案にもありましたが、私自身ここで支援策をまとめた以上、届ける米がちゃんと困っている人に届いているかどうか自分の目で確認すべく北朝鮮に今回の支援米のモニタリングにいく決意をし、段取りをしてもらえるよう外務省に伝えました。
 そもそも欧米諸国はNGOを上手に活用し、NGOの職員を北朝鮮のWFP事務所などに常駐させ(日本からの常駐者はゼロ!)、しっかりとモニターしているほか、アメリカのNGOはリンゴの木を送り、手入れのために時々北朝鮮を訪れている由。こうした方法を私は再三再四外務省に提案していますが、「馬耳東風」。韓国は最近60万トンの食料支援を決めましたが、WFPを通すのはそのうちたったの10万トン。後はNGOなどを使って韓国の裁量で配布の仕方は決めるようです。そもそも日本のNGOの中にも北朝鮮に米支援をしたことのあるNGOがあることを外務省は知っているのでしょうか?返す返すも日本の外交の主体性は一体どこにあるのでしょうか?!頑張るぞ!!