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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2020/04/16(木) NO.824号 

コロナ対策は、供給者目線でなく、国民目線で

 私の親しい友人が経営する道後温泉のホテルも、今日から5月末まで、大型連休中に一時的に営業する以外、完全休館に入った。このところ、稼働率は10%程度だ、と困難な状況は聞いていたが、想像以上の厳しさだ。そして、休館期間中に利用するのが、雇用維持のため、休業する従業員の賃金の補てんを行う「雇用調整助成金制度」だ。

 既に、助成率の引き上げ、別枠特例期間の設定や、申請書類の大幅簡素化など利便性向上、支給までの期間短縮等の特例措置を決めているが、支給額は中小企業の場合は休業補償額(賃金の6割以上)の最大9割支給と特例水準ながら、支給期間は6月一杯までで、その先は全く不透明、そして何よりも支給上限額は、一日8,330円、仮に22日分として、ひと月183,260円だ。諸外国の同様の政策と比べると、政策当局や特別会計の立場や都合、すなわち広い意味での供給者目線が色濃い。

 例えば、英国では、賃金の80%を補償、上限は約33万円、支給期間は一応5月一杯ながら、必要に応じて延長する方針を宣言済み。ドイツは、子どもがいれば賃金の67%を補償、上限は約35万円、支給期間は年内一杯。フランスは賃金の70%を補償、上限は約67万円、支給期間は年内一杯。

 欧州では、何よりもこうした政策を求める、すなわち、需要する側の国民目線を大切にして制度の組み立てをしている事を感じる。新型コロナウィルス、という未知の、そして治療薬もワクチンもなく、「底なし沼」を感じざるを得ない暗い雰囲気だからこそ、踏み込んだ給付政策をドーンとかなり先まで見えるように打ち、まずは国民に安心してもらう、という国民目線を大事にしながら政策を決めているように見える。

 英国では、ロックダウンの下でも医療や社会のインフラを支える16業種で働く "key workers"(List of "key workers") の子ども達に限っては、ロックダウン中でも学校に行くことが許されているのだ。ということは、休校、と言いながら、実はそうした子ども達のための教育は、新型コロナ危機であっても静かに続いている、ということだ。学校を閉めるかどうか、ではなく、感染拡大阻止の必要性に応じた、その目的のために戦う職業の子弟のためにはより良い教育を提供するのだ。社会全体の連帯意識、助け合いの心、を強く感じる。

 今、英国では、NHS( National Health Services ) と "key workers" 16業種への「感謝の虹」を壁などに描く運動が広がっている、という(ロンドン在住の私の孫たちも庭の壁に「感謝の虹」を描く)。強い連帯意識だ。

 一方、日本では一旦休校となれば、授業等は一切行われず、英国同様に厳しい環境の下で医療や社会インフラを担う業種にあっても、子ども達は家庭に止まらざるを得ず、その親御さんたちは、医療現場などで必死に働きながら、家に残す子ども達の事を常に心配せざるを得ない。そうした業種への感謝、配慮が社会としてないのではないか。

 となれば、日本の新型コロナウィルス対策全体には、政策立案者の目線、かつ業種単位の発想、すなわち供給者目線が優先され、政策目的達成のために医療や個々の社会インフラの重要業種で働く人々、そのご家族、すなわち需要者・国民目線が抜け落ちている事がしばしばあるのではないか。

 昨日の午後、愛媛県の経済界の幹部から電話を頂いた。愛媛県内67,000 社のうち約20,000社が雇用保険に入っておらず、従って愛媛の企業で働く全従業員、総数63万人のうち無保険企業で働く10万人強の人々が雇用調整助成金の対象にならないという。緊急経済対策では、週労働時間が20時間未満の従業員も税財源によって雇用調整の対象とすることとしたが、それはあくまでも、企業自身が雇用保険に入っていることが前提。昨日お申し越しの件は、まさに企業が雇用保険に入っていないケースの方々も救済すべし、ということだ。

 ここで需要者・国民目線で対処しよう、という意志があるならば、明らかに雇用調整助成金と同じ扱いを、無保険企業で働く罪なき方々に関し、税財源を使ってでも何らかの形で雇用維持を図る、ということであろう。ここは、どのようにすればできるだけ多くの方々の雇用を守れるか、しっかり汗をかかねばならない。