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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2002/01/08(火) NO.247号 

混乱している資本注入論議

 このところ、銀行に対する公的資本注入論がようやく、しかしにわかに盛んになってきた。年末の小泉総理の自民党幹部に対するご発言、年頭記者会見での総理ご発言など、官邸の認識に沿ったとされる金融庁や経済人の発言が続いている。
 
 しかし、小泉総理の真意とは関係なく、各種発言や今日の新聞報道を見ていると、事の本質を必ずしも捉えていない、混乱した議論が展開されていると思う。 財界首脳は「取りつけ騒ぎに近いことが起きる予兆があったら、直ちに政府は・・・用意した15兆円を使う(資本注入する)必要がある」(読売)と主張され、政府内でも「(公的資本注入は)金融危機阻止が最大の狙い」(毎日)との意見が強まっているという。
 
 金融庁の森長官に至っては「首相官邸と金融庁は同じ認識で、・・・現状は金融危機ではないが、今後、(資本注入が)必要ないとは言えない」(日経)と指摘しながら、その一方で「(大手銀行は)10、11%の自己資本比率を確保しており、(資本注入は)全く想定していない」(同)と言い切っている。世界中がその大手銀行の現状と行方こそを最も心配しているにもかかわらず、である。
 
 何という混乱振りだろうか!99年3月末に行なわれた7兆4500億円の資本注入時と同じ過ちに向かってまっしぐらに進んでいる、とさえ見える。この中枢部の議論の混乱こそ、国家としては最も避けるべきことであり、98年の金融国会の最大の教訓ではなかったか。事の本質は、金融危機を惹起する最大の原因である不良債権処理をひとつひとつ確実に行うことが大事なのであって、金融危機や混乱に対症療法として、のべつまくなしに資本注入をすることではないはずだ。銀行の貸出資産の劣化状況を冷厳に査定し、その結果不足する資本額に応じて各主要銀行を再生するか、整理するかを決断することが求められているのだ。前回同様、全主要銀行を救済したり、金融市場の混乱を押さえ込むことだけが目的ではなく、不良債権の本格処理により銀行の金融仲介機能を再生することが肝心かなめのはずだ。多少の経営責任をとる程度のことがあってもその目的は達成されない。
 
 昨年末の押し迫った26日、小泉総理に直接お会いする機会を得たが、その際総理ご自身の決断をお願いした。もはや日本経済再生のためには、小泉総理の英断が不可欠となっているはずだ。