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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2003/08/18(月) NO.327号 

元気なイラク・PUKのタラバーニ議長

 5月にイラクを訪問した際、バグダッドで会談したクルド愛国同盟(PUK)のタラバーニ議長一行5名を迎え、昼食会を催した。先方は、議長御夫妻、昨年12月にも我々の招きで隠密裏に来日したその御子息、産業担当大臣など。こちらは、議長と面識のある遠山参議院議員、外務省の局長、課長、アジア経済研究所の中東研究第一人者、ピースウィンズ・ジャパンの大西統括責任者に私の5人。

 議長は13日に来日以来、精力的に日程をこなしてこられたが、元気だ。彼は、25人で構成される統治評議会メンバーのうち、大統領を持ち回りで担う9人のうちの1人で、イラク政界の有力者。既に福田官房長官、川口外務大臣などと会談を行ってきた。

 議長は、新たなイラクは「民主的」、「連邦制」、「議会制」、「独立」、「多様な価値を認める」体制になることは、国内のあらゆるレベルで既に合意済み、と強調。改めてクルドの単独独立はなく、連邦制の下で、既に選挙に基づく議会制民主主義を実行しているクルドこそ模範を提供しないといけない、と自負の程を示した。また、イラク全土の治安悪化をマスコミは強調するが、実際はスンニー派勢力下の一部を除き、事態は好転している、との楽観的見方を繰り返していた。

 とりわけクルド自治区は治安も万全で、日本の自衛隊も、人道支援ならば、まずはクルド地区に入り、その後中央部、南部に展開したらよい、と言っていた。また、既にロシア、フランス、イタリアなどがクルド地区内に領事館を置くことを検討している由。キルクークが油田として有名だが、クルド地区は、いまだ探索されていない油田がいたるところにあるので、是非日本企業が来て探査を実施してもらいたい、と強調。また、中国の企業は、既に一年ほど前から携帯電話の現地での販売に熱心だという。欧州各国企業も進出しつつあるようだ。クルド人の間でのイメージの良い日本の企業は、もっともっと積極的に進出した上、イラクの他地域にも活動を広めればよい、とセールスマンよろしく熱烈勧誘をしていた。気になることは、同議長が日本に来る前に中国を訪問し、中国政府からも熱い歓迎を受けていることだ。おそらく、ビジネスチャンスと政治的影響力の確保を狙った中国側の招待だったのだろう。日本がまた中国に遅れをとっているのではないか。

 報道によれば、中国がオーストラリアとの間で自由貿易協定の交渉開始を決めたようだ。日本はどうも政府も民間企業も、かつての「ハングリーさ」と「戦略的判断のできる司令塔」が消滅してしまっていないか。