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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2002/05/31(金) NO.283号 

国債格付け引き下げの意味するところ

 遂に、というよりは予定通り、ムーディーズが日本国債を2段階格下げしA2とした。財務省の某氏に電話してみると「不当です。しかし市場は全く動揺していません。おり込み済みだったのでしょう」との反応。
 私からは「それは少し違うんじゃない?もう市場は麻痺して反応しなくなっているだけ。それに格下げが不当かどうかが問題なのではなく、かつてはトリプルAを付けてくれていた民間格付け機関が、なぜ急速に評価を落としてきているのか、その根本原因を冷静に分析し、それを解決する姿勢に転ずる事が大事なので、そのような動きを感じられないから下げられ続けられるのではないのか」とコメント。さらに「かつてはデートしてくれていた女性が急に冷たくなった時に、その女性に対し非難したり怒ってみても意味ないんじゃない?なぜ嫌われるようになったのかの根本原因を付きとめ、改善努力した方が良いんじゃない?」とも付け加えておいた。
 改めてここまでの軌跡を見ると、何とムーディーズの格付けにおいてでも、たった3年半前の98年11月までは日本国債もトリプルAだったのだ。丁度「金融国会」の直後にダブルAに初めて転落している。森政権下の2000年9月にもう一回、小泉政権下の昨年12月にもう一回下げられ、そして今回だ。「国家債務状況の持続的悪化」と言っても、これは日本経済全体の評価と考えるべきで、最終的な「尻」としての国債の評価にしか過ぎない。
 現状のままでは、間接金融への依存度が高い日本において、「経済の心臓」とも言うべき銀行セクターに「不良債権問題との訣別」という根本治療がいつまで経っても成されないまま、経済の75%をも占める非製造業を中心にした不良債権先企業の本格再生も、更には製造業をも含めた企業の収益性、生産性がコーポレート・ガバナンスを含め、抜本改善されるような政策も、企業内部の変化も乏しいのだ。
 98年の金融国会で、石原代議士や枝野代議士らと共に主張した「不良債権問題の実態を正直に認め、その処理を通じて銀行の再編・淘汰に踏み切り、企業・産業の再編・整理も同時に図り、多少の期間、辛くとも抜本対策を通じてもう一回出直すべき」との解決策の主張はいまだに有効だ。それこそが、まず行なわなければならない「構造改革」のはずだ。
 今大騒ぎしている「有事立法」「個人情報保護法」「健康保険法」「郵政関連法」のいずれも、日本の待った無しの構造改革には直接関係がない。スキャンダル対応とこうした問題にエネルギーを費やさずに、基本に立ち返って日本の根本問題の解決にまず専念すべきだ。改革の優先順位を間違ってはいけない。