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やすひさの独り言 Yasuhisa's Soliloquy 今一番伝えたい考えや想いをお伝えいたします

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2002/02/28(木) NO.266号 

NGOへの理解を深める事の大切さ

 3月4日に、参議院予算委員会に参考人としてピースウィンズジャパン(PWJ)の大西氏が招致される事になった。イラク北部のクルド人難民キャンプを既に発ち、東京へ向かっている。
 またぞろ週刊誌などに、大西氏へのいわれなき中傷と誤解に満ちた記事が出ている。NGOへの理解を深める事の大切さを改めて感じる(来週中には自民党NGO小委員会を開催するつもりだ。マスコミオープンにしたい)。
 本日発売のある週刊誌に掲載されている、「NGOへの疑問」と題する記事を読んで、唖然とした。たしか筆者はかつて私も直にお会いし、尊敬もしていたのだが、この文章を読んでマスコミ人、文筆家としての見識を疑った。
 一番驚いたのは、マスコミ人の基本である「自分の足で出向き、自分の目で確かめ、自分の耳で聞く」という取材の基本を守っていない事だ。
 こともあろうに、彼はPWJの大西氏の活動振りを週刊誌のゆがんだ報道からのみ判断し、筆者が「感動し、目頭をぬらした」というNGO「国境なき医師団」の活動はテレビ報道からだけ(!)で判断している。私が12月に行ったアフガン北部のマザリシャリフから車で5時間余りのところにある、電気も水道もまともなトイレもなく、土の家か地面に穴を掘り、毛布をテント代わりにした居住空間程度しかないサリプル難民キャンプで働くPWJの日本人職員、そして同じキャンプで一緒に診療活動を行っている「国境なき医師団」の面々の活動を、現場に行って直接見るべきだ。
 また、PWJの不正経理問題についても、自らは調査せず、おそらく新聞・週刊誌情報だけから判断しているのではないか。外務省経済協力局の責任ある立場の人すら「国が単年度主義を取っているがために、うっかり年度を越えた事業の全体の補助金申請をしてしまい、後日PWJ内部の監査で気付いて自発的に修正申告したもので、むしろ『美談』と言っても良いくらいだ」と言っているケースでありながら、筆者自ら何らの調査もせずにマスコミ報道を鵜呑みにして「不正経理が発覚(!)」などと決めつけ、またこの事が故に外務省によるアフガン支援会議へのNGO2団体出席拒否は「当然」だ、などと的外れな事を言っている。外務省が出席拒否の理由としてあげたのは、この「不正経理」ではなく、1月18日(金)付け朝日新聞掲載の大西氏のインタビュー記事なのだ。これについて外務省は18日当日には何らの反応もしておらず、鈴木氏がモスクワから帰国した翌19日夕方から突如「このインタビュー記事により、外務省と大西氏との間の信頼関係が崩れた」と言い出したのだ。
 挙句の果てに筆者は、鈴木宗男氏がNGOの出席に注文を付けたのは「『蛇の道は蛇』で、鈴木氏は類似の事例を沢山知っていて、『お前ら前科者(NGOの事らしい!)は今動くな』というシグナルを発していたのかもしれない」と決めつけ、鈴木氏を大西氏の「親分」とまで定義し、まさに「目が点になる」ような滅茶苦茶を書いている。昨年東ティモールにも、アフガニスタンにも大西氏と一緒に行き、彼の人物と今回の一連の経緯をよく知っている私にとって、まさに唖然とするしかない。
 より本源的な問題は、彼が「小さな政府」推進の為にNGOは行政を補完すべき存在、と単純に位置付け、場合によっては失業対策として役立つかごとき考えを示している事だ。良くある誤解だ。しかし、筆者ともあろう識者が、日本の「公益」は明治以来民法によって官僚機構である「お上」が定義してきた事を知らないはずはない。「非政府とか非営利という呼称だけで聖域になるはずもない」というが、では筆者にとって「公益」とは何で、誰が定義するのだろうか?民法第34条をどう考えているのだろうか?なぜ今、官製公益法人の多くが問題になっているのか、良く考えて欲しい。日本や世界におけるシビル・ソサエティの在り方を真剣に考え直さねばいけない時期でもあるのだ。
 私が共同議長をした先週末の「日英21世紀委員会」(オックスフォードにて)の議論においてもNGOとの連携の必要性は日英双方から繰り返し指摘された。世界がそこまで来ているのに対し、日本の理解の現状はさびしい限りだ。同委員会での議論から出てきた提言の一部を披露しよう。

・アフガニスタンやアフリカなどの問題を含め、国際安全保障や開発分野における日英間のNGO協力を一層促進すべきだ。これらの分野において日本のNGOは最近積極的に参加して来ている一方、英国のNGOは長い伝統を持って引き続き貢献しており、今後は両者が実りある協力的活動を発展させてくれる事に期待したい。
・日英協調して支援する「新アフリカ開発計画」において、日本のODA並びにNGOの積極参加が、2国間の建設的なパートナーシップを築くであろう。